マジックハンド!
光輝くニワトリ
第1章 伝説の始まり
第1話 プロローグ
セミの声がうるさく響く、今日の気温は40度を記録していた。そんな猛暑の中を俺たちは歩いていた。
「あぢ〜」
俺の隣を歩いている健二が愚痴る。
「うるせーよ、こっちまで暑くなってくんだろ…」
「そりゃあいい、海斗も道連れだ!」
なんて奴だ、健二……
俺は健二を殴りたくなった。というか殴ろうとしたが避けられた。
「くっそ、なに避けてんだよ!」
「ッハ!当たんねぇよ、そんな拳」
どうでもいい馬鹿話をしていると学校に着いた。
〜〜〜〜〜
鐘が鳴る2分前に教室に到着した。
「おはよーっす」
既に来ていた翔太に挨拶をする。
「おはよ」
「なぁなぁ、昨日のテレビ見た!?」
「あぁ、白骨化した剣と盾を持った死体の話?」
「そうっ!まるでファンタジー世界の物みたいだったよな!」
「あ〜…でもどうせニセモンでしょ。」
「んだよ。そういうこと言うの良くないぜ…」
確かに現実的に考えて本物のファンタジー世界の物だと言うことはあり得ないと分かっている。が、それでも信じたいのだ。
オタクと言うわけではないがラノベは読む、それを読んでいるとやはり憧れてしまうのだ。
「お!ほら見ろよ、あの白骨死体、精巧に作られたニセモンだってよ。
なんでも芸術家の岩尾さんが「時代はファンタジー!夢が無いと人生やってられないよ!」って事で作ったらしいよ。」
荷物を置いて来た健二が言った。どうやら
「は〜、やっぱか…そんなこったろうと思ったよ!クソ!」
っていうか岩尾さんって誰だよ!作った理由が分かるような分からないような…意味不明だな。
「全く、ま〜だ厨二病拗らしてんのか海斗は。」
「はぁ!?何度も言ったんだろ俺は厨二病じゃない!常識ある厨二病だ!」
「いや、結局厨二病じゃん。マジ草ww」
翔太に笑われた…
全く、常識があるんだから厨二病とは言わないだろ!大体、別に外で変な格好した事ないし、ちょっと誰も見でないところで魔法を使ってみようとするくらいだし!
誰に言うでもなく心の中で愚痴っていると、ふとトイレに行きたくなった。
「健二〜翔太〜、トイレ行こうぜ」
「連れションかよ、時間に合わなくなるし俺はいい」
「そうかい、なら翔太行こうぜ」
「後1分後にね〜」
「いや!先生来るだろ!」
仕方がないので薄情な友達を置いて席を立った、そしてドアを開けようと取っ手を掴みドアを開けーー
開かない!?
「おい!誰だよ!ドアに鍵かけた奴!」
憤りながらガキを開けーー
は?開いてる……
壊れているのか鍵もかかって無いのにドアが開かない、仕方がないので別のドアから出て行くことにした、がそちらも開かない、どうしようもないので窓から出て行こうとした、が開かなかった。
流石にゾッとした。
「おい!誰だよ、悪戯した奴!何で窓もドアも開かねぇんだ!?」
多少キレ気味になりながらクラスメートに聞く。
「俺じゃねぇぞ」 「私も知らない」
だが、誰一人として知らなかった。
どうなっている!一体誰が!?
ドアをガタガタ揺らし無理矢理でも開けようとする…が一向に開く気配はない。
「嘘!?何これ!?」
唐突に女子の驚愕の声が聞こえたので、後ろを振り返る。そして目に入ってきた光景に唖然とした。
部屋に中心から広がっていく魔法陣、それはその上に居た生徒を吸い込む様に呑み込み、尚も拡大し続けている。
「スゲェ、ラノベみーー」 「イヤァァァ、誰か助けーー」
ありえない展開に興奮する奴、恐怖し叫び声をあげる奴、他にも様々な反応をする奴が居たが、魔法陣は平等にクラスメートを呑み込んでいった。
そして次々とクラスメートが呑み込まれていき、気付いた時にはもう教室には俺しか残っていなかった。
「俺は異世界に行きたいわけじゃない!」
意味も無く、魔法陣に向かって叫ぶ。
俺は別に異世界に行きたいわけではなく、魔法なんかを使ってドンパチやる戦いが好きなのだ。
魔法陣はついに俺の位置まで到達する、俺は飲み込まれまいとドアの淵を掴んだ。
速度が緩む、が恐ろしい程の力で魔法陣は俺を呑み込もうとしていて腕が引きちぎれそうな痛みが走った。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それでも俺は喉が裂けるほどに叫び、抵抗した。
数秒か、数十秒か、はたまた数分かしばらく経った頃、ある事に気付く、魔法陣が縮まってきているのだ。
希望を見つけた俺は必死に耐える、耐えて耐えて耐えて、耐え続けた。
魔法陣が俺の位置を通過するまで後少しとなった頃、唐突に俺の体の力は抜ける。
なんだこれ!?痛っえ!?
まるで空の袋に水が注ぎ込まれる様に俺の中に何かが入ってくる。抵抗も出来ずに入ってきた何かは痛みを伴って、目の前がチカチカと光った。上手く力が入らない。
もはや頭まで飲み込まれた、何も見えない空間で、腕の感覚だけはあった。
それも長くは続かない、腕から感覚が無くなっていき、感覚が残っているのが手だけとなる。痛みは尚も続き遂には全身が痛む様になった。
そこで俺の意識は暗転した。
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