後の祭り
Re:over
後の祭り
背後から待ってという、慌てた声が聞こえた気がした。でも、ここで止まってしまえば、もう進めないと思った。夜空に咲く火の花を見上げ、足を落とす。
あれからいくらか経ち、お盆が訪れた。正直、現世に戻ってきたからといって、行くあてもなく、ただ1人街を彷徨った。失敗続きの人生に嫌気がさして自殺したのだから、本当ならば、こんなところに戻りたくなかった。
ふと、電車に乗ろうと思った。大学の時好きだった子がいつも乗っていた電車に。また会えるかなという淡い期待を胸に、電車に乗る。しかし、彼女は現れなかった。
そうだ、結局彼女がいたとしても、俺はどうすることもできない。俺が過ぎ行く人たちの目に映らないから、俺が物に触れられないから。
何も考えずに歩いていると、いつのまにか夜になっていた。あの、祭りで賑わう隣で身を投げた日と同じような雲のない空が広がっている。星が綺麗で花火はよく映える。そんな輝かしい夜空。
あの日と同じ風景が見えた時に、自分に未練があるのだと気がついた。無意識のうちに自殺した場所へ歩いていたから、そう思わずにはいられなかった。
目の前に雑木林が広がり、その少し奥にはお寺、そのまた奥にはちょっとした崖がある。そして、大学の時好きだった子がいつかと同じベンチに座っていた。どうしてこんな時間にこんなところにいるのか。そう思うことしかできなかった。
彼女は涙を流していた。ただ、彼女がいくら涙を流そうと、空が濡れることはなかった。隣に寄り添ってあげたくても、少しばかりの抵抗があった。この涙の原因がわからなかったからだ。
「斗真......」
俺の名を呼んだ。もしかして......。
彼女と俺は両想いだったらしく、彼女は俺に対する想いを呟く。
後悔。
後一歩踏み出す勇気があれば、俺はもっと生きていられ、幸せを知ることができたのかな。後の祭り、か。彼女の涙が俺の手をすり抜けて地面に滴る。俺が生きていれば、この涙も掬えたのかな。
彼女は疲れた表情で立ち上がった。そして、ゆっくりと歩き出す。俺は彼女の後をついていく。奥へ。奥へと歩き、あの場所へ辿り着き、彼女は足を止めた。
まさか......。
「お、おい! やめろ!」
叫び声は虚しく響き、彼女は俺の後を追った。俺は少しだけ嬉しくも感じた。
後の祭り Re:over @syunnya
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