三分以内で読めるバー『K』での出来事を淡々と
I田㊙/あいだまるひ
バー『K』の話
そのバーは、どうやら繁華街ではないどこかの町にあるらしい。
マスターは、
柔道で国体に出て大学を卒業し、そして銀座や大阪のバーで修業。
家業は元々飲食店だったが、バーではなかったそうだ。
父親が店を息子に譲った後、彼は奥さんと共にそのお店を続けていたが、バーに改装した。
現在の店員は、マスターと奥さんとアルバイトの男の子が2人。
お店の柱には黒い猫のシールが貼ってある。
マスターも奥さんも大の猫好き。
それに、お酒と猫は切っても切れない間柄。
『いいウイスキーを作る醸造所には猫がいる』し、本場イギリスのパブには猫がいるお店があるし。
どうやらそれにちなんで、『いいカクテルを作るお店には猫がいる』ということなのだろう。
でも日本じゃ本物の猫をバーに出したらダメな場合が多いと言うことで、シール。
日本の招き猫もそうだが、猫ってやっぱりお客さんを招くのか、バー『K』は平日でもわりと繁盛している。
そりゃマスターの腕がいいというのが前提に必要だが。
カウンターの席はL字になっており、10席ほどと奥にボックス席が3つ。
棚にずらりとお酒が並んでいるのはちろんの事、そのお酒は通うとどれも少しずつ減っていっているのが分かる。
お酒がしっかりと回転している。
あと、初心者の『私』は知らなかったのだけれど、カウンターにあるお酒は触ってはいけないそうだ。
バーテンダーからボトルを差し出されて初めて見てもいいらしい。
だから、気になったらすこーしだけ好きな飲み方で飲んでみて、ボトルを見せてもらうのがスマートだろうか。
そのお酒が高いかどうかは…ちょっと運次第なところはあるけれど。
『バーってなんか入りにくい。ドレスコードとか』
そうです、そうなんです。
でもね、どうやら『K』のマスターはとりあえずツナギやらジャージやらじゃなければ誰でもウェルカムだそう。
ツナギやジャージって『いい大人』が、お店に行く
ちょっといい外食店に、ツナギやジャージでいったらおかしいでしょ? ということ。
『いい大人』が『いい雰囲気』で飲む、『いいお酒』。
結局それも、お店とお客さんを守るためのルール。
大人の
『いい大人』への第一歩ではないかなと、確かに思います。
『私』はそうして嗜んで(いるつもりで)、大人になったなあという自己満足に浸っています。
そこのマスターも奥さんも割とおしゃべりをしてくれます。
『K』はそういうお店です。
別の一流のお店ですと、おしゃべりはひそひそ声でも聞こえるんだとか。
どういうお店かは入るまでわからないので、入って合わないと思ったらもちろん一杯で出ていいそう。
結局星の数ほどバーはあって、自分に合うのがどれかは入ってみないと分からないですもんね。
『K』はそんなお店だから、割と周りの話が漏れ聞こえてきます。
ええ、『私』分かってはいるんです。
聞き耳を立てるのが『いい大人』がすることじゃないってことくらい。
だから、バー『K』での出来事やお話はフィクションです。
よろしくどうぞ。
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