第2話 転生
「……さん、和人さん! 起きてください」
誰かが横たわっている和人に声をかける。
そんな声と共に和人の意識がうっすらと冴えてくる。
「うぅ……どこだここは」
目を擦りながらここがどこなのかを確認しようと辺りを見回してみると、そこは白一色で覆われた世界に似つかわしくない大きな建物がポツンとあるだけであった。
そして、若い女性がキョロキョロしている和人のことを静かに見つめていた。
そんな彼女と目が合うと、
「こんにちは。私は人間がいう所の神です。名をフルティアといいます。よろしくお願いします。さて、あなたはすでに亡くなっていることにお気付きですか?」
腰まで伸びた銀髪を少し風になびかせ、和人に微笑みながら問いかけた。
和人は普段見ることのないようなスタイルが良く羽衣を羽織っている美人を見て放心状態であった。
「和人さん、あなたは下校中に車に
「ええと、私はこれからどうなるのでしょうか? 死んだということは、天国か地獄に連れて行かれるのでしょうか?」
猫谷萌香を眺めながら帰路についていた和人は後ろから車に撥ねられたことを思い出し、我に返り今後のことを尋ねた。
「いえ、あなたが住んでいた世界とは別の世界、異世界で転生してもらいます」
「て、転生ですか!? その世界って魔法とかあるのでしょうか? 私も使えるようになりますか?」
突然の話に驚いたが、オタクである和人はラノベでこのような展開をよく読んでいる。憧れていた展開が目の前で起こり、嬉しさのあまりやや興奮気味に尋ねる和人。
「ええ、地球出身の方は魔力がないので、私の加護を受けることによって使えるようになります。それに、身体能力も向上するので、次はそう簡単には死にませんよ」
フルティアが微笑みそう説明すると和人の身体がキラキラと星のように輝き始めた。
「うわっ! これが加護か。これで魔法が使えるようになるんですね! あ、魔王を倒せみたいな使命ってあるのでしょうか?」
突然和人の身体が輝いたことに驚くが、これから未知の体験をすることに喜ぶ和人。
「何百年も前に魔王は封印されているので、魔王に恐れる必要はありません。使命は……そうですね、楽しく生きることです!」
笑顔でそう答えると、今度は和人の身体が薄くなり消え始めている。
「あなたの第二の人生に幸あらんことを」
和人が「ありがとうございました」と言い残し、和人の身体は真っ白な世界に溶けていくように消えていった。
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