1週間

@ym1961

第1話 月曜日

「起きなさ~い、いつまで寝てるの!!」

 我が家の1週間はお母さんのこの一声で始まる。すると階段を凄い勢いで

「遅刻、遅刻」

 と言いながら降りてくる今年高校受験の杏子お姉ちゃん、続けて

「待って~」

 と言いながら杏子お姉ちゃんと双子の妹凛子お姉ちゃんが降りて来た。

「だから二人とも早く起きなさいって言ったでしょう 」

 お母さんの小言を聞き流しながら、二人は「行ってきま~す」

 と台所に顔を出して言うとあっという間に玄関に向かってそのまま学校に向かった。

 お母さんは、やれやれといった表情を見せながら用意していた二人の食器を片付けた。

「おやおや、我が家のお姫様達は今日もシンデレラかい」

 そう言いながら少し寝ぼけまなこのお父さんが玄関を見ながら台所に入って来た。

 するとお母さんは間髪いれず

「そのシンデレラの父は大丈夫なんですか」

 と時計を指さした。その言葉にお父さんは目をこすりながら時計を見ると、杏子お姉ちゃん達と同じ様に慌てて玄関に向かった。但し玄関に向かう途中に台所にいるお母さんに愛情たっぷりの挨拶は忘れてなかったけど。

 お母さんは万遍の笑顔で見送ったけど、誰も居なくなった食卓にひとりポツンと座る姿は何処か寂しそうだった。

その時だった、居間にある電話がなった。慌てて居間に向かって電話のディスプレイ画面を見ると「ヒツウチ」だった。

(また、凛子スマホ忘れたのかしら)

そう、凛子お姉ちゃんは良くスマホを忘れて通学路途中にある電話BOXから電話をかけてくるんだ。

(でも、今日は杏子と一緒に出たはず...それともお父さん?)

実はお父さんも良くある、お母さんは、やれやれと思いながら受話器を取った。

だが、受話器を取って

「もしもし」

と言った瞬間無言で電話が切れた。お母さんは受話器を見ながら、

(間違えたなら一言謝ればいいのに)

と憮然な表情で受話器を置いた。

そして、その電話の事をお母さんは特に話さなかったので、その日の我が家の話題になる事もなく一夜が過ぎた。

まさかこの電話がこの後起こる出来事の序章になるとは知る由もなかった。



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