10th

 先週、スクールで舞台をやる主演・選抜のオーディションがあった。緊張したけど思うようにやれたんじゃないか。心の中で一人呟く。だが、サユリはどうだろうか。

 今日はオーディションも終わり、普通のメニューだ。

 スクールの行き道一人そんなことを考えながら歩いていた。途中で一緒にスクールに通っているサユリと合流し一緒に歩いていた。

 それは、まるで久しぶりに会った感覚があった。

 サユリとは幼馴染で小さいころはよく一緒に遊んでいたのを覚えている。高校生になったのにも関わらず記憶に新しい。小学校から高校までずっと一緒に過ごしていた。よく、二人で笑っているのだが友達以上恋人未満そんな関係である。傍から見れば付き合っているのじゃないかというくらいだそうだ。

 「ねぇ、オーディションどうかな?緊張するー…あんまり上手くできなかったし、台詞は所々詰まるし…」サユリが伏し目がちに言った。その顔はいつものサユリの自信に満ちた表情ではなく不満の色に染まっていた。

 「大丈夫、合格してる。」何故か、確信じみた言葉になったが気にしなかった。確かに言えるとしたら、未来を知っているからか。

 「でも、ヒジキ君は先生に褒められてたし、周りから主演の確信があったし…」

 「たまたまだよ。それに、あんなけ頑張ったじゃん。ちゃんと評価してくれるよ。」

 確かに周りからの称賛はすごかった。そうだった。だが、それは役の抜擢とは違うのではないか。厳密にはそう言えなかった。やはり、サユリにとっては気にかかることらしい。

 そうしている内にスクールの前まで来ていた。過去と比較しながら考えていたせいか道が短く感じた。横を見てみるとサユリの首がまだ曲がっていた。

 「大丈夫。万が一落ちてもまた一緒に頑張ろう。」

 そう言ってサユリの背中を軽く叩いた。顔を上げたサユリの顔が少し明るく見えた。それは、とても自分の心を和ませた。

 「今度はみんなを見返すくらいに…」

 やはり、少し規模がでかくなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る