第54話
「じゃあスマホの見た目とか分かりますか?誰か見かけてツイートしてるかもしれないので」
「はい。スマホは◯◯で、カバーは黒のレザーの、ロックバンドのロシェルのグッズのやつです」
「えーっと、これ?」
浩二は一人でこの能力を練習している間に、頭の中の検索結果をスマホに映し出す技術を得ていた。自分で調べた内容をスマホを遠隔操作と同じ容量で画面に映し出すのだ。
「あ、はいそれです!」
夏川が画面を見て頷く。よし、と浩二は声を出し、検索に集中した。スマホの見た目を画像検索、スマホ、落ちてた、などのキーワードと合わせて調べる。
普通に調べたのでは画面がいくつも必要だったが、頭の中では無限に映像を出せるのでマルチに調べることが出来た。画面をスクロールする手間も省ける。
と、気になる検索結果を見つけた。3RTしかいっていない小さなツイートだった。
『スマホ落ちてた。交番いく暇ないから◯◯って店の隣のガードレールの端っこに置いといた!拡散希望』
すぐさま画面に映し夏川に見せる。
「これじゃないですか?」
「うーん、これかもしれない!行ってみましょう!」
夏川と共にツイートされていた店の前に急ぐ。歩いて5分くらいで着いたそこのガードレールを探す。
「あった!」
「どうですか?」
夏川がスマホの画面を開き、確かめる。
「これだ!これが僕のです!良かった〜」
それまで曇っていた夏川の顔と声が一気に明るくなる。夏川はスマホについた埃を払い大事そうに抱えたあと、浩二に深々と頭を下げた。
「助かりました。本当にありがとうございました!何から何まで本当にあなたがいなかったらどうなっていたことか。一応芸能人としてもし中の個人情報が流出していたら僕だけの損害じゃ済まなかったので、本当にありがとうございます」
「いやいや、困った時はお互い様ですよ」
浩二は夏川の丁寧な感謝に恥ずかしくなって頭をかく。夏川は何度も深くお辞儀をして感謝の意を述べていた。
「何かお礼をさせてください」
「いやいや大丈夫ですよ!夏川健人さんの電話番号ゲット出来ただけで充分です!あ、勿論不用意に電話はしないですけどね」
「そうですか、じゃあせめてお名前聞いてもいいですか?」
「海野浩二って言います。よろしくお願いします」
「海野さん、本当に助かりました!また機会があったら何かお手伝いさせてください」
「はい、じゃあ俺はここらへんで失礼します」
「ありがとうございました!」
夏川は浩二が去っていくまでしばらく礼をしたままだった。とても礼儀正しいいい人だったなぁと思う。良いことをしてよかった。この能力は自分の為だけじゃなく人の為にも使えそうだ。浩二は今日の行いに満足して、良い気分で帰っていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます