第46話

浩二が異変を感じたのは次の日の朝だった。


朝いつものように目を覚ます。よくは覚えてないが夢を見た気がした。少し恐ろしい夢だ。何が怖かったのかもう分からなかったが、海が出てきた気もした。不思議な気持ちになる夢だった。浩二は首をひねりながら体を起こす。


そうだ、この夢のことをツイートしよう。変な夢を見た。なんか怖かった。でいいや。

そう思いながらスマホを開く。

スマホは昨日の夜には何事もなく治っていた。修理に出そうかとも考えたが、何もおかしいところがなかったので一時の異常だったんだろうと特に深く考えずにそのままにしておいた。アプリを立ち上げると一番上に見覚えのあるツイートがあった。


『変な夢を見た。なんか怖かった』


あれ?と浩二は首を傾げた。これは今ツイートしようとした内容だ。しかしもうツイートされている。これはどういうことだ?

俺はたしかに今ツイートしようとしたはずだ。それはこれからのことであり、既にツイートされている訳がない。しかし画面にはまさにツイートしようとした内容が表示されていた。

不思議な現象に狐につままれた気分になる。まだ寝ぼけているのか?浩二はうーんと唸りながら携帯をじっと見つめてにらめっこをするしかなかった。


明らかにおかしかったが、寝ぼけているだけかもしれないと思い、スマホを置いて朝食を作りに向かう。キッチンへ立ち、食パンを袋から取り出してレンジに入れた。ピッとボタンを操作し、1分間焼けるのを待つ。その間に朝の日課である動画を確認しようと思い立った。いつものリストの一番上にあるはずだ。

と思った瞬間、頭に見たことのない内容の動画が思い浮かんだ。いつも見ている人の動画であるのは間違いなかった。こんな動画見たことあったっけ?と思いながら、内容を思い出す。すると、まるで見ているかのように鮮明に脳裏に映像が浮かび上がり、動画が再生されるのを感じた。これは異常なことだ。

いつもの、思い出す、感じとは違った。一つ一つ、端から端まで鮮明に頭に浮かぶ。まさに再生されているのに違いなかった。違和感に驚き、あわててスマホを見る。

動画アプリを立ち上げると、今頭で見た映像がそのまま携帯に映し出されていた。


違和感は確信に変わる。もしかしてスマホを使わずに頭だけでネットが出来るんじゃないか。明らかに鮮明な映像が頭に流れ込んでくるのを感じで確信を得た。そして今日のトップニュースを調べて見ることにした。すると何もしていないのに頭の中に、政治家の不倫と不倫相手の名前が思い浮かんだ。これは昨日までは知らなかった情報だ。確かめるためスマホを使ってトップニュースを調べてみる。そこには思い浮かんだのと全く同じ文章が羅列されていた。

間違いない、頭の中だけでネットと繋がっている。これはすごい能力だ。

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