神様、俺の日常を返してください

夜十奏多

第1話プロローグ

日常...


それはその人にとって代わり映えのしないいつもの光景...


それはいつまでも続くようで、いつの間にか消えてしまう儚い物...




俺にとってのそんな日常が今日、というかついさっき変わってしまった...




早朝6時、目覚まし時計の音に起こされ、家族の分の朝食を作り食べ終わったら学校の支度をして、「行ってきます」と言い家を出る。それが、俺にとっての日常だった...




だが今日はいつもと違った。いつも眠りから起こしてくれるはずの目覚ましがならなかったのだ。まだ寝ぼけている目を擦り、時間を見ようとしたその時、、、いつもの場所に目覚まし時計がなかった。というかそもそもソコは自分の部屋ですらなかった。




「は、、?ここどこだよ、、、」


思わずそう声に出して呟いた。ソコは昨日まで自分が暮らしていた部屋ではなく、自分の状況すらも分からないほどに暗い、まるで自分が闇にでもなったかのようだった。




「やぁやぁ、やっと起きたね。相良伊織君♪」


いきなりだった。辺りを手探りで探そうかと思い、手を伸ばした瞬間背後から話しかけられたのだった。




「うわぁ、誰だお前どこから、てかここどこだよ!」


そんな俺の慌てぶりをみて満足したのかウンウン、と頷きながらさらに話し掛けてきた。




「そんな初歩的なことを聞くなんて、さては伊織君、本とか読まないだろう。ダメだよそんなんじゃ、もっと活字に触れないと♪書物というのは人類に与えられた宝そのものなんだから♪」




そう矢継ぎ早に言われ、俺が狼狽えていると、まだわからないのかとばかりにため息をついた。コイツの態度は腹立つが、1つどうしても聞きたいことがあった。




「あんたが誰かは知らないが、どうして俺の名前を知ってるんだ?」


そこが気になっていた。まだ名乗ってもいないのに俺を伊織君と呼んだのだ。しかもフルネームで。




「何で君の名前を知っているかだって?僕は何でも知っているよ。君のすべてを知っている。君の名前は相良伊織、16歳、現在△▲県立信楽高校に通っている高校一年生だ。出席番号は6番で、家族構成は母親と妹の三人暮らし。全部当たっているだろう?」


驚いた、スラスラと俺の情報を当てていくコイツに恐怖さえ抱いた。




「あんたは一体何者なんだ?」


「僕が何者かって?それを聞かれては答えないわけにはいかないが、なんと言えば良いんだろうね。僕はね、え~と、分かりやすく言うとなんになるのかな~」




ソイツは自分が何者かという質問になんと答えれば良いのかで頭を悩ませていた。まるで自分の尻尾を追いかける犬のようにグルグルと歩き続けていた。




「あ、そうだ、君たち人間に分かりやすく伝える方法を思い付いたよ♪」


ん、君たち人間?おかしな発言に眉を顰めた瞬間、辺りの空気が変わった。肌をピリピリと突き刺すような冷たい空気が辺りに漂った。




「僕は神だ。全知全能であり、人の生死さえをも弄ぶ神だ。」


さっきまでと違った重苦しい空気に思わず腰を抜かしてへたり込んでしまった。




「何てね?ごめんね~ソコまで驚かすつもりは無かったんだけどちょっとやり過ぎちゃった♪」


再び友達と話すかのように話始める。また急に変わった周りの空気に俺はもうついていけないでいた。




それからしばらくして、やっと頭が冷静になってきた頃にもう一度、神様に聞いてみた。


「ここはどこなんだ?出来れば事細かに聞きたいんだが」


「それもそうだね♪誰だって状況が分からないと始めようにも始められない。」




は?始める?何を?




「ここは僕が作った世界ガルフォード♪」


そう言って神様が指を鳴らすと、いきなり辺りの景色が一変した。突如射した光に思わず目を閉じると、そこには広大な樹海と海らしきものが広がっていた。




「ここでは、ありとあらゆる動植物、人種が存在している。例えば君のいた世界では空想の中だけでしか存在しなかった動物も多く存在している。」


そういわれて、辺りをジーーっと目を凝らしてみると本当にもといた世界にはいるはずのないドラゴンやら妖精やらが見てとれた。




「君にはこの世界に転生してもらいたい。」




ハイ?今なんておっしゃいましたか?この世界に?転生?マジで?




「さぁ、君の新生活の始まりだよ~♪」


そういいながら、神様は手を打つ。




ちょっ、ちょっとまっ、、、




「あぁそれと、言い忘れてたけど、一応アシストはつけとくよ。装備も用意してあるから安心して良いよ♪」




違う、言いたいことはそれじゃない、、、




「それじゃ、後は全て君次第だ。存分に楽しんでくれ♪」


その瞬間、辺りは白い光に包まれた。


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