魔王少女は世界を救う
逢津 京
序
全てのものはいずれ朽ちゆく
偉大な国も
壮麗な塔も
崇高な法も
【
暗黒の王の転生と共に……
それは夢の中なのだと、思考するまでもなく判断した。
いつも通りに仕事を終えて帰宅し、家のドアを開ける。だがドアの先は自分の家ではなく、真っ暗な空間だった。
本能的に身を引きそうになったのも束の間、俺の身体はその暗闇に文字通り引き込まれた。
あり得ないはずだった。
こんな非日常の体験が出来ないことは、大人になって痛いほど思い知ったはずだった。それなのにその暗闇は俺を、三十路前の大した能力の無い俺を、異常な力で引っ張る。
こんなに強く手を引かれたのはどれくらい久しぶりなんだろう。
間の抜けたことを考えていた俺の全身は、暗闇に完全に同化した。
ーなg@*|^〆
気付くとそこは、四畳半程度の狭い洞窟のような場所だった。松明の火が煌々と空間を照らしている。
見えるのはそれだけだった。首を動かそうにも力が入らない。
おかしい……
俺は家のドアを開けた瞬間、誰かに拉致されたのだろうか?ボヤけていた視界が次第に鮮明になり、耳鳴りがようやく治る。
「gg("5¥?」
美しい金髪の少女が俺の顔を覗き込む。歳は十代半ば、コスプレだろうか?見慣れない服と髪型だ。
「md/#○・」
彼女はなにかを話している。その言葉は日本語でも英語でも中国語でもない。自分の知っているどの言語とも違うように思えた。
「すみません、何を話しているかわからないんですが」
相手は歳下の女の子とはいえ、至極丁寧に答えておく。彼女がその言葉を理解できたかはわからないが、俺の声を聴いた彼女は眼を輝かせ何か叫びながら視界から消えた。一体彼女はどこの国の人なのか。いや、それよりも気になることがある。
今出した自分の「声」が、明らかに三十路の男の声ではなかったことだ。
自分の身体に何が起こったのかまだ理解できない。だが、あの声は明らかに「少女」のものだった。
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