『もやし』

やましん(テンパー)

  『もやし』

 ある小学校の担任の先生は、ぼくを『もやし』と常に呼びました


 かわいかったから?


 それとも、にくらしかったから?


 お外で遊ぶのが苦手で、いつも色白だったから?


「お前のおへそは、90度じゃなくてもっと曲がってる」


「いつも他の子と違う事ばかりやる」


 とおっしゃっていたから


 きっと、批判的に言われたんでしょうね


 劣等感ばかり、教えられた感じ、



  ***   ***   ***



 もやしは、特売されやすい


 もやしは、軽く扱われやすい


 もやしは、安い


 ほかの野菜の代替物


 細菌に汚染されやすい


 イメージ、あまりよくない



  ***   ***   ***



 でもね、もやしは江戸時代には薬草だったのだ


 貴重品でぜいたく品だったのだ


 光が当たらなくても育つのだ


 血糖値を押さえることもあるのだ


 上手に料理すれば、うまいのだ


 主人公には、なれないけども


 他の高級食材さんを、盛り立てるのだ


 もやしがいないと、高級野菜さんたちは目立たないよ


 リーゾナブルなステーキさんだって、おいしくなるのだ


 もやしにだって、生きる権利があるぞ


 ね、先生!



   ***   ***   ***



 まだ、戦前育ちの先生も、残っていたのです


 教科書は変わっても、なごりもあったのでしょう


 卒業の時には


 ぼくの延々と長い日記帳をみて


『根性あるところを見せてくれた!』


 と、褒めてもらいました



  ***   ***   ***



 出世は出来なかったけど


 同じように、みんな、ちゃんと年寄りにはなりました。




 


 



 


 




 




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 『もやし』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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