谷へ

「元気をお出しになって!」

「何を悲しむことがありましょう!王妃様には神々がついていらっしゃると言うのに!」


 投げかけられる優しい言葉にお礼を返して、輿の下を行く侍女を介して民から花を受け取る。次から次へと渡され、瞬く間に増えていく花に顔が埋もれてしまいそうだ。一番多いハスの中に、マーガレットやテトニアなど様々な色が混じっていて美しい。ヨーロッパ地域のものが多く流通していることが一目で分かる。


「まあ、なんて美しい花々でしょう」


 傍にいてくれるネチェルと侍女も興奮で頬を染めている。こういう幸せを垣間見せるような侍女の様子を見るのも久しぶりだ。宮殿から出て良かった。


 見せたいものがあるから外へ出ないかと彼に提案され、流産して初めて外に出てもう一時間ほどが経っていた。流産の件は国の端まで知れ渡っていることなのだから、元気な姿を民に見せた方が良いという宰相ナルメルの勧めもあり、慣れない輿に乗り込み、兵に厳重に囲まれて大げさなほどの大移動を行っている。馬に跨りぐんぐんと前へ進んでしまった彼どこにいるかは、もう随分前から分からない。


 周りは人、人、人。なかなか進まない上に、多くの人から目が回るくらいに声を掛けられる。こうして近くまで来て励ましてくれる人々の存在がどうしようもなく嬉しかった。安心させようと、私はもう大丈夫なのだと伝えるために笑わなければと思っていたのに、自然と顔が綻んでいく。

 優しい人たちに囲まれている。この民に相応しい王妃にならなければと何度も私に意識させた。


「僕ってば、こういうの苦手なんですよね。戦い専門なので」


 少し離れた所にいる隊長ナクトミンが、独り言のように口を尖らせつつ、カーメスが率いる兵と共にどうにか一定の距離を置いて人々を抑えてくれていた。


「こういうのも我ら将軍隊長の立派な務めですよ」


 カーメスが己の部下に、にっこりと癖毛を風になびかせながら諭す。


「王家に仕える者としてこのような仕事でも確実に熟してこそ、ここにいるという意義が出てくるのです。ほらほら、笑って。そんなつまらなそうな顔をしていては民が怖がってしまうでしょう。男性とは思えぬ綺麗な顔つきをしているのですから、笑ってなんぼですよ。これほど近くで我が国の民をこの目に焼き付けることができる!これもまた素晴らしい機会です!見てみなさい、なんと自国愛に溢れている民たちでしょうか!我々が守っている笑顔というものを間近で見ることが出来て私としては幸せでなりません!何よりの平和の証です!こうやって王妃様を元気づけようと我先にと走って……」

「あー、そこ。出ないでくれる?出たら首ちょん切るからね。衛兵たち、ちゃんとやってよ。僕に言わせるとかあり得ない。クズは嫌いだ」


 カーメスの言葉を遮って、ナクトミンが前の方に馬を走らせた。あのマシンガントークをあそこまで華麗にかわす人はいないと思う。彼でさえ、うんざりとした様子で終わるのを待つことが多いのに。


「おーひさま!」


 歓声の中から飛び出すような元気な声が耳に届き、視線を下へ動かすと、父親に支えられた小さな男の子がくしゃりと笑って一輪の黄色の花をこちらに手向けていた。


「これどうぞ!」


 直接受け取ることは出来ず、やっぱり侍女を経由してだけれど、幼い気持ちがありがたいほど伝わってきて胸が熱くなる。


「ありがとう」


 笑顔で頷くと、父と共に母親らしき人のもとへ帰っていくその子。無邪気な男の子を抱き込み、頭を撫でて、言葉をかけている母親の表情は慈愛に満ちている。近くには妊婦さんが大きなお腹を抱えて歩いていて、またその先には子供を肩車してこちらを覗かせている父親が笑っている。

 眩しいくらいの羨ましさはあっても、小さな子や赤ちゃんを見ても動揺を示さなくなった自分に胸を撫で下ろした。泣くこともない。妬みもしない。無事に生まれ、幸せに育ってほしいと思うことができる。立ち直ってきている。少しずつではあっても、確実に私は前に進めている。


「これではいつまで経っても辿り着けぬな」


 久々に彼の声が聞こえたと同時に、あたりの歓声が一層大きくなった。輿から顔を出すと、人混みを眺めて「参った」と苦笑する彼がいる。麻の日除けをすっぽりと被った姿は、いつもながら盗賊のようだ。


「やはり輿は間違いだったか」


 少し悩む素振りをしてから仕方ないと言って、彼は馬上から私に褐色の手を伸ばした。


「こっちへ」

「え?」

「花をネチェルに渡して私の方へ飛び移れ。馬の方が早い」


 ネチェルが花を受け取ってくれるけれど、こんなに間が空いていては無事に飛べる気がしない。それも思ったより高さがある。


「待って、一回降りてから」


 輿を止めるよう輿を担ぐ兵に頼むと、明らかに嫌だという彼の顔が覗く。


「面倒なことは嫌いだ」

「だって飛び移るだなんてそんな、」


 無理よ、と言い終える前に片腕を取られ、抱えられるようにこちらの身体へ彼の片腕が伸びると、あっと声を上げる頃には輿から馬までの距離を乗り越え、変な格好で馬上に着地していた。顔を上げて見える彼は口端を上げ、意気揚揚とした表情で私を見下ろしている。


「日除けを」


 文句言いたげな顔を向けてみても、相手はしれっとした様子で私を座り直させ、ネチェルから受け取った日除けを私に被せた。頭からすっぽりと被って、てるてる坊主のようになる。本当に、相変わらず強引な人だ。


「ほら、出来ただろう」


 髪を撫でた手が頬に流れていく感覚を追うように顔を上げてみれば、愛おしむような眼差しがある。それを目にしたらふっと力が抜けて、恥ずかしさと愛おしさが相まってはにかむような笑みが零れた。こちらが笑むと、彼の笑みが増す。日除けからはみ出した私の髪を撫でながら、嬉しそうに。

 笑顔に笑顔を返すだけで、これだけ幸せに満ち足りた気分になれる。小さなことであっても、これらがどれだけ尊いものか。当たり前の幸せを拾って感じて感謝して。それらを噛み締め、今という時間を大切に、精一杯生きること。それがどんな時も決して忘れてはならないことなのだと、近頃は強く思う。


「目的の場所はここからまだ遠い。急ぐぞ」

「輿は?どうするの?」


 馬の速さにはとてもついて来られないだろう。輿の傍にはネチェルたちもいるのに。


「戻らせればよい」


 輿の傍にいる侍女たちは「いってらっしゃい」と言わんばかりの笑顔で頷いている。すべて承知の上のようだ。セテムに二言三言告げた彼は私を抱き込んで手綱を引き、兵たちを連れて道を駆け出した。





 街並みを行く。道を行く人々の姿が次第に少なくなって、やがて神殿が沢山建てられた場所へと風景が移り変わり、吹き行く風も砂も変わっていく。テーベ東岸の端の端と言ってもいいくらいの所まで来るとナイルが見えた。海と見紛うくらいの母なる大河を挟み、うっすらと西の谷が浮かび上がる。馬の足が舞い立たせる砂埃の中から、その谷が南北に広がる緑の無い茶色の山並みのように私の視界を流れていく。

 聞かずとも分かるくらい、現代のものと変わっていない。私が父の車の中でぼんやりと眺めた時のものと、少しも。きっと何千年経ってもずっと同じ曲線を描き続けるのだろう。果てしのない月日を思ったら切なさがこみ上げた。


 すると突然、その曲線は消えて視界は途切れて真白に変わる。気づけば、私たちは神殿だらけの場所を走り抜けていた。馬上で上下に揺られながら、蹄の力強い音があたりにこだまするのを聞く。小さな神殿がいくつも並び、ギリシャの神殿のような円柱の並木が続いている道は、どこかの迷宮にでも放り込まれたような錯覚を引き起こした。風景が切れたと思っても、またすぐに別の形をした柱が波のごとく続いて過ぎて行った。

 厳密な計算の下に造られた土台と、神々と歴代ファラオと思われるレリーフ。名付けてしまうなら、ここは神殿集合地帯だと言えるだろう。


「神殿が多いのね」


 きょろきょろ見回していると、隣で馬を走らせていたカーメスがそうだと頷いた。


「ここは歴代のファラオたちが沢山いらっしゃる神々のためにお造りになられた神殿の地です。いわば聖地と呼んでも大げさではありません」


 話には聞いていた場所だ。歴代の王たちが作り続けていたから、古そうなものも、新しめのものもある。エジプト神話に出てくる神は日本の八百万並みに多いこともあって、神殿も自ずと多くなったのだろう。


「あなたも作ったの?」


 尋ねてみると、彼から頷きが返ってくる。


「ひとつの神殿をファラオが作り、後のファラオが増設することがこの場所では多い。今回は我が祖父アメンホテプ3世が作ったものに私が増設したのだ」


 そうして辿り着いたのが、小さなスフィンクスたちが並ぶ参道がついた、大きな神殿だった。先程通り抜けてきたどんな神殿よりもずっと大きく立派なものだ。宮殿の神殿を越える高さと、対称に作られた巨大な本殿。天井を支える、太く頑丈な鮮やかな彩色を施された柱たち。広がりを見せる道はその大きさと壮大さを見せつけるように広く長い。参道の先には王の業績を記すオベリスクも、ラムセス2世の巨像もない。観光客の声も聞こえず、神聖さに溢れていてあまりにも気高い。それでも分かる。ここはあの夏、両親と良樹の4人で回ったあの遺跡──ルクソール神殿。


 馬から降りて、立派なスフィンクスの参道を彼と歩いていく。あの時、私はこの道を興奮気味な父と辿ったのだ。そんな父を可愛いと言う母と並んで歩いた。近くに着いた頃には、見上げすぎて首が痛むくらいだ。気づくと、神殿の前にそこに仕える神官たちが私たちを迎え入れてくれていた。敬意を払う彼らに彼が話しかけ、最後に私の方を向いた。


「入ってみるか?」


 唐突に彼はそう言った。


「いいの?」

「それだけ物欲しそうな目をされたら入らない訳にはいかぬだろう。丁度見せたいものも中だ。ほら」


 こちらがちゃんと返事を返さないうちに手を引かれ、私たちは中に足を踏み入れた。案内する神官たちに導かれるように空に届きそうなまでの門をくぐると広すぎる中庭が現れた。突然現れるこの空間は、外に大きく開かれ、多くの神像が置かれていた。現代では大王ラムセス2世が増築したものが目立つということがあってか、記憶の場所より殺風景のように見えるのは否めない。この神殿自体、エジプト文明滅亡前にアレクサンドロス大王の時代まで増設され続ける神殿だから、逆にこの時代ですでに沢山あったらそれこそ妙な話だ。

 そうでありながら、セテムたちに待ってもらいながら神官たちと入った、その先の列柱室は違った。陽が射さない薄暗い世界で、現代よりも勝る美術が私たちを待ち構えていた。聳え立つ柱は、近くまで行ってしまえば全体なんて見ることが出来ないくらい大きい。その影は夜の海のように真っ暗で果てがないようにも見える。太すぎると言っても過言ではないくらいの円柱の鮮やかなレリーフはとても繊細で今にも動き出してしまいそうだ。赤に茶色に、黄色。青に緑に、黒と白。上の扇状に開けた部分にはハスの花が彩るように描かれ、ファラオたちのカルトゥーシュが緑の字で太陽と共に並んでいる。アメン神やオシリス神、その他の神々たちが生き生きとファラオの名の下を歩いていた。


「見えるか?あれが祖父のものだ」


 彼が指差すカルトゥーシュが示すのは、アメンホテプ3世の名。彼の祖父であるその王はとても偉大な人だったようで、自分の功績を神々と一緒に沢山描いて残していた。


「祖父の治世は40年、我が国がこれ以上発展した時期はないと他国に言わせるほどだった」


 彼と神官たちの話を聞きながらレリーフの意味を知って行く。神に捧げた生贄のこと。お祭りのこと。平和を勝ち取るための、名もなき戦争のこと。ずっと奥の方にはアメンホテプ3世が神の化身から誕生したことを示す誕生の間と中庭があり、そこの像はすべて祖父アメンホテプ3世のものだそう。同じモデルの像が沢山並んでいるのだと想像すると少し笑えてしまう。

 彼はしばらく眺めている私を見て神官たちを下がらせ、私たちは二人きりになった。静けさの奥に神官たちの歌声が厳かに聞こえ始めた。


「……ここはね、私の時代にも残っているのよ」


 柱に描かれる鮮やかな神様を指先でなぞりながら彼に告げた。現代ではナポレオンの遠征に宿舎として使われた歴史もあり、その際に潰された壁画もレリーフも多い。それでも、この遺跡がこれから越えるだろう月日を想うと言わずにはいられなかった。


「あなたに呼ばれる前にここにお父さんとお母さんと来て……凄いねって、昔の人ってこんな大きなもの作ったんだねって話したの。3000年もここに立ち続けるなんて、一体誰が想像したかしら」


 そうか、と返事を返してくれる彼の表情は緩やかだった。

 これも見た。あれも。あちらにあるものも。確かに私の時代にあった。

 この神殿は、古代と現代を確かに繋ぐもの。時代を越えていくもの。文明が忘れられても、これは古代人の想いを未来へと伝えていくのだろう。崩れても。壊されても。削られたとしても。

 目の前にあったひとつの柱に手を添えて、そっと額を付けてみる。何故だかそうしたかった。聞こえるはずのない鼓動を感じてみたかったのかもしれない。


「アンケセナーメンはこの神殿によく来て、同じことをしていた」


 ふと、額を離して隣を見やると彼が懐かしそうに言った。


「アンケセナーメンが?」


 その名を呟いて、懐かしさに胸が詰まりそうになる。


「神と話しているのだと自慢げに言っていた」


 あの日、母と柱の影で休んでいたら同じような懐かしさがあった。それはきっと、彼女が私の中にいたからなのだろう。

 彼女は私と同じことをして、何を想ったのだろう。国の行く末。民。弟である彼のこと。兄や家族のこと。今は私の中にいるのかさえ分からないけれど、彼女はここで沢山の想いを巡らせたのだと思う。この偉大なる神殿の中で。


「ヒロコ」


 呼ばれて柱から身体を離すと、彼がいた場所に誰もいなくて驚く。慌てて声が方向を探したら、手招きをする人を向こう側に見つけた。


「どうしたの?」


 彼がいたのは少し離れた、次の空間へ行く幅の大きな通路の入口だった。傍に来るなり、私の肩を抱いて見てみろと壁の方を指差した。


「良い像だろう」


 肩を組む、朗らかな曲線を口元に浮かべる大きめの夫婦像が立っている。なんて幸せそうな顔だろうと、釣られて私まで口元が同じになる。ファラオとしての王冠を被る遠くを見据える男性と、王家の女性らしい長い髪を肩に垂らす微笑の女性。大概は男性が大きく彫られることが多いのに、この像は男女が同じ大きさで作られている。王妃であっても王の足元に小さくあるのが常であることから、この像の形式はかなり珍しい。それに、随分新しいもののようだった。鼻の筋も瞳も綺麗に象られていて、滑らかな表面が綺麗だった。


「私らの像だ」


 思わず声を上げて彼を勢いよく振り返った。


「左が私、右がヒロコ」


 よくよく見てみればカルトゥーシュがそれぞれの足の横に刻まれている。


「今のような時がずっと続けば良い。それを願った」


 仲睦まじい様子が、ずっと。ずっと、傍に。幸せに。

 彼の想いにじんと心が震えた。


「この前出来たばかりなのだ。なかなかの出来だろう。お前に見せたかった」


 うんうんと頷きながら満足そうに相手は繰り返し頷く。

 言われる通り、美術的には素晴らしい。第18王朝特有のアマルナ美術が生かされ、像の側面に描かれるレリーフは驚くほどに美しい。


「でも、あなたが少し幼いようだけれど……」


 ファラオという雰囲気はあるものの、私だというものと比べると顔も丸くて何だか少年のよう。言ってしまうなら、可愛らしい。


「アンケセナーメンの方が年上だということを伝えたらこうなった。お前を近くで見たという者に作らせた訳ではないからな、まあ仕方あるまい」


 確かに私の方が4歳ほど年上ということになっていることを考えれば、納得。写真もないのだから似ていないのは仕方がない。それよりもまさか、自分が像になるなんて思いもしなかった。気恥ずかしいような、誇らしいようなよく分からない気持ちがぴょんぴょん飛び跳ねていく。多分、死後に像を作ってもらった偉人たちも同じような感覚なのだと思う。


「これもこの神殿と共にお前の時代まで残れば面白いな。時代を越え、人の想いを越え、我らのことが伝わればよい」


 3300年後まで。それだけの長い時を、この像が越えることができるだろうか。

 屈み込んで像の足を撫でる。指の腹から伝うざらざらとした感触に、気のせいか、体温のような暖かさも感じられた。

 ルクソールにこの像があったかと記憶を辿ってみても、残念ながら思い出せない。そもそも私は歴史に興味のないエジプト人同様、ルクソールという場所にあまり行ったことがなかった。もっと行っておけば良かった、歴史を勉強しておけば良かったと、今更ながらに後悔する。

 ただ確かなのは、あの時代になれば観光客でごった返して賑やかな場所になり、この清閑な厳かさは余韻だけを残して文明と共に失われてしまうこと。たとえ、そうであっても。


「残っていたら嬉しい……とても、嬉しい」


 失われていく中で残ってくれていたのなら。

 答えた私に嬉しげに彼も笑った。



 すべてを見終わって外へ出たら人がいなくなっていた。と言うのも、あれだけ大勢いた兵たちが全員消えて、セテム、カーメス、ナクトミンの3人と馬4頭だけしか残っていない。どこを見ても振り返ってみても、他の兵たちの姿が見えなかった。神隠しにでもあったのではと思ってしまうほどにごっそりと人がいなくなっている。そんな光景に、彼は一つも驚く様子を見せず、頭を下げる彼らに「ご苦労だった」と告げた。


「ファラオ、陽の暮れる前に参りましょう」


 セテムがいつもより強張った表情で馬を差し出す。側近の言う通り、西の方角には傾いた太陽があった。あと数時間で、砂漠の地は光を失って月の世界へと移り変わる。


「ヒロコ」


 抱き上げられ、再び馬に乗る。行きたいというもう一つの場所にこれから向かうのだろう。それは分かっていたものの、セテムの神妙な面持ちと、警戒しているようなカーメスに何故だか胸騒ぎを覚えた。


「次はどこへ?」


 彼が馬に乗るのを見届けながら彼に問う。日除けを整え、西の方角に目を細めたその人は、少しの間を開けて唇を動かした。


「我ら王家、一族が眠る谷」


 どこのことであるかをすぐに察して身体が強張る。一瞬怯んだ私に腕を回し、相手は続けた。


「お前の言う、『王家の谷』だ」



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