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バーテンダーになろうと思ったのが高校三年生の時、バーテンダーって格好いいって思ったのはそれよりも前のことだ。俺はその時からこの仕事に心を奪われているらしい。
「あの時想像していた大人に、俺はなれているかな」
物静かで、どこか冷めていて、それでいて格好よくシェイカーを振ってスマートに仕事をこなして、綺麗な嫁さんをもらって子供もいて・・・
「人生は甘くないね」
ケーキのように甘くはない。きっと俺の人生はカクテルのように、時には苦く、時には甘く、時には喉を焼くように熱く、時には包み込むように優しく。俺の心を酔わしていくんだろう。
「なんてね。どこのポエマーだっての」
そんなことが簡単に浮かんでくるくらい、俺はこの仕事が、今の生活が楽しくて大切なんだと思う。
一分、一時間、一日。一週間はとても速くて、一ヶ月はとても短い。一年なんてあっという間だ。カレンダーだって十二枚しかないんだから。
「一日一日を大切に生きなきゃ」
なんて使い古された言葉が口を吐く。あんまり自然と出るもんだから自分でも笑ってしまう。
「さ、明日も仕事だ。帰って寝よ」
終電はもうない。隣に人もいない。帰っても寝る時間は少ない。それでも明日はやってて来る。俺の新しい一日を連れて。
「お疲れ」
――パチン。
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