人生は積み木のように……

羽田羅輝

放課後の教室にて

 此処はある高校の校舎の一室、外で部活をやっている生徒の掛け声が聞こえてくる。そんな中で僕は珍しいことに、静かに読書をしていた。


……勘違いして欲しくないのだが、この読書というは「読み書き」と書くのが面倒だからと略した物ではない。

 だから「なるほどこの場面はこうだからこうなるんだな……参考になる」とか考えながら本を読んでいるという意味で捉えてほしい。


 そうして放課後の学校を過ごしていると、今日も今日とてイケメンの部類に入るであろう……言葉遣い行動仕草顔、挙げ句の果てには存在自体がうざいと周りから酷評の先輩が、教室のドアを足のつま先で開けると、手に箱を持ちながらづかづかと偉そうな顔をしながら入ってきた。

 先輩は僕の机に近寄ってくると、静かに読書をしていた僕の机の上に、いきなり手に持っていた箱を落とした。

 僕がそれを無視して次のページをめくっていると、先輩は僕から本を掠め取り、それに対して僕が文句をいうよりも先に箱を指差して、開けろとでもいうように顎をしゃくってきた。


 ウゼェ

 しかし、文句を言っても無駄だと半ば諦めている僕は頭を掻きながらなんの封もされていない箱を開けた。


 えーっと、中身は……なんだこれ? 木の塊……になんか変な切れ目が入ってる……ああこれ積み木か、なるほどね。

 そう納得して一人頷いた。

 何気なく前にいる先輩を見ると、哀れな物でも見るような目で僕を見ていた。

 先輩は僕の責める視線に気付くと、情けない奴だとでも言いたいのか目を閉じて顔を下にすると両手を広げて首を振った。


 ウゼェ

 そう思いながらも額に青筋がたった作り笑いを顔に浮かべ、手で先輩に話を促した。



「今日は君にこの積み木で家を作ってもらう」

「昨日の放課後に明日は何かについて考えるって言ってませんでした? それに今更積み木って、子どもじゃないんですから——」

「——子どもじゃないって、君成人してたのかい!?」


 わざとらしく声を上げて聞いてきた。

 ウゼェ


「してないですけど」

「いいか、成人していない人間は成人した人間からしたら全員子どもだ。だから、私達が積み木で家を作っていても何の問題もない、そうだね?」


 先輩はそう言い終えるとふんっと鼻を鳴らした。

 ウゼェ

 そもそも積み木なんて何歳でも作っていいだろ! っていう突っ込みを僕がしてもおかしいか……。


「はいはいそうですねそうでしたね。それで、なんで積み木で遊ぶんですか?」

「遊ぶんじゃない。ふむ、そうだな何故積み木を持ってきたのかの説明を忘れていたかな? ……いいか昨日の放課後で明日は人生について考えてもらうって言ったのは?」


 早口にそう捲し立てた。この人怒ってる顔も不思議とうざいんだよな……。


「……決めつけ良くない。」

「決めつけなどではない君の顔を見れば分かる。というのは冗談だが、昨日私が話をしていた時の君のあの眠たそうな顔! あれを見たら誰だってこいつは話聞いてないって分かる」


 あの時の貴重な時間を返せと小言を付け足しながら先輩は大袈裟にため息を吐いた。



 ウゼェ……でも仕方ない、これはあの時眠りの世界に油断して負けた僕が悪い……でも大体先輩の話し方がうざいのがいけないと思うんだ。


「はぁ、とりあえずその積み木で家を作りたまえ」


 あの先輩、僕自慢じゃないですが今までの人生、積み木を積み上げたことないんで——


「いいから作りたまえ! 君は一々無駄口を叩かないと気が済まないのかね!? もういい! 私が作る」


 初めからこうすれば良かったと嘆きながら箱の中から何個か積み木を取り出そうとしたものの……キッチリと型に嵌っているせいか中々出てこない。先輩は遂に痺れを切らしたのか顔を赤くして箱を逆さにすると思い切り振り、それでも出てこないからか叩いてようやく積み木を取り出すとため息を吐いた。それから気を取り直して話はじめた。


「さて、問題だ。この積み木で家を作るにはどうすればいいと思う?」


 そんなの正六面体の積み木一つで完成するじゃないですか


 僕がそう言うと、先輩は何言ってんだこいつと言いたそうな顔をした。先輩やめてください、そろそろ殴りたくなります。

 その思いが通じたのか、先輩は顔を伏せて全身を震わせた。


「君、今は豆腐の話をしてるんじゃないんだよ? そのこと、理解してるかな? ねぇ? ?」


 顔が近いです。少し離れてください、あとうざいです。


「うざいって……それは言わない約束だろう。これでも周りにうざがられないように頑張ってるんだよ」


 そういうと、先輩は両手を広げてわざとらしく大きなため息を吐いた。


「……何処がだよ!」

「ブゴォ!?」


 先輩の悪ふざけに無性に殴りたくなった僕は先輩の顔面にパンチを食らわせた。先輩はちょっと唾をこぼしながら床に倒れた。汚い。


「痛い! そんな本気でやらなくてもいいじゃないか! 今のはほんの冗談——」


 先輩がそう言い訳してきたのにまた苛立ちを感じた僕は静かに右の拳を上げた。


「あー……今のでもうスッキリしただろう? そろそろ、真面目に考えてくれるかな?」


……そうだな、落ち着け僕……先輩はこういう人なんだ。この人はどんなことをしていてもすべてがうざく見えてしまうどうしようもない人なんだ。だから冷静になれ……


……よし、ちょっと真面目に考えようか。


「先ず正六面体を二十七個用意して3×3×3の塊を作ってその上に四角錐を置いて屋根を表現したら一軒家の完成」

「お、おお! いやぁ君がそう真面目に答えを言っているのを見ると感動すら覚えるよ」


 いつの間にか起き上がっていた先輩は片手で涙でも拭うような素振りの上に嗚咽さえしているように見えたが、演技だったようだ。澄ました笑顔がうざい。


 そんなことはどうでもいいです。さっさとその積み木で組み立ててくださいよ。


「……可愛げがないね君は」


 うるざいです。


「なんなのそのうるざいって……ああ、そういうこと、地味に組み合わせてるんじゃないよ。まあいい、君の言った通りに積み木を組み立て——るには正六面体の積み木の数が足りないから2×2×2で組み立ててやろう」

 そう言うが早いか、先輩は何度か積み木を積み上げた経験でもあるのか慣れた手つきで積み木を積んでいく。

——しかし、そこはやはり先輩というべきか……両手に一つずつ積み木を普通に持ち上げたかと思えば、いきなりその積み木を持った両腕を空中でクネクネと動かしながら、ホッ! ホッ! という掛け声とともに空中で手を離して綺麗に積み木を組み立てていく。そして先輩の思い通りに決まったのだろう「おっし!」と小さく声を出し、これまた小さく腕を上げてガッツポーズをした。


…………ウゼェェェェェェェェェェ!!! 何そんな変な動きしてやがんだ! 地味に腹が立つんだよ! 掛け声はなくていい! 黙ってやれ! それで、なんで空中から離して落としてるのに積み木が綺麗に積み上がっていくんだよ! それも地味に腹立つ……! そりゃガッツポーズもしたくなるだろうよそんなスゲェ技が決まったんだから、だけどその小さい喜びの声と小さいガッツポーズが微妙に、でもすごくウゼェェェェェェェェェェ!!!

 いやそもそも——


「茶番はいいからサッサッと作りやがれェェェェェェ!!!」

「ブフー!?」


 先輩の腹に思い切り蹴りを入れた。ボキャっという何かが折れる音が聞こえたような気がするが、多分気の所為だろう。

 先輩は蹴りを入れられた勢いで十センチほど飛んだ後、白目を向いて気絶した。


……はっ!? 遂手が——じゃなくて足が出てしまった。

……いや仕方ない仕方ない、誰だってあんなの見たら腹が立って蹴りの一つや二つ入れたくなるに決まってる。だから僕が先輩に蹴りを入れてしまったのは仕方がないことなんだ。


……それはそうとよくは聞き取れなかったけど、先輩は叫び声までちょっとうざかったかもしれない。

 もしそうなら、本当にどうしようもないな先輩は……。



 しばらくすると先輩は気絶から復帰して、僕に文句を言ってきたが、無視して話を促した。積み木の家は先輩が気絶していた間にもう作っておいた。



——さて、今日は人生について考えるということはもう分かっているね? では何故私がいきなりそんなことを考えたのか。君は昨日夢の亡霊からの囁きに気を取られていたようだから聞こうともしなかっただろう? 仕方がないから、特別に! 説明してあげよう! ——おっとそんな怖い顔をしないでくれ。


 ゴホン、人生を何かに例えた話というのは耳にしたことはないかな? 私はそれに惹かれて、私自身も人生を何かに置き換えて例えてみたい、そう思った。

 だから昨日の放課後に人生について考えようと君に提案したんだ。君はその時まさに夢の亡霊と激しい攻防でも繰り広げていたようだったから私の話をあまりよくは聞いていなかったのだろう、私の提案に対して「どうだ?」と聞いたら「いいんじゃない? ……それより……眠——」とか言って亡霊に完全に負けてしまっていたね。挙げ句の果てにはその亡霊に体を乗っ取られたのか変なことを言っていたね。


——曰く「先輩はなんでそんなにうざいんですか」とか……! あとは小声で早口に何かの物語を言っていたり……あれは怖かった。


 ん? ああ、独り言だ。気にしないでくれたまえ。

 ともかく、こうして積み木を持って来たのは何のためなのか、勘の鈍い君でも分からないだろう——まあ待ちたまえよ! 暴力ならまた夢からの亡霊に存分に振るってくれたまえ……何? 夢からの亡霊ならもう来ない!って泣きながら帰っていった? それは良かったね、私の話をしっかり聞けるじゃないか、ははは……。

 とととりあえず話を進めるぞ。


……人生をこの積み木の家で例えるとすればどうするか。


 まずこの積み木の家はなんなのか? それは人生だと考えよう。この一つ一つの積み木にはその人の人生経験が詰まっている。そんな積み木がこの家を組み立てる材料として使われているから、この家は人生そのものだ。私はそういう風に考えてみる。

 ああ、君も考えてみるといい。人生をこの積み木の家で例えるならばどうするかを。別にその考えが矛盾しててもいいし、こじつけでもなんでもいい、兎に角考えてみてくれよ。

 そんなことどうでもいいじゃない。きっと考えてみれば思いの外楽しいぞ。楽しくない? そうか……


 まあいい、価値観は人によって違うだろうし、次はこの積み木の色だ。これは人生においてどんな種類の経験をしてきたか……と考えられないかな? ……積み木の数が少ないから種類によって固まった経験だというように解釈するぞ、経験種類の数が8個だけというのは無理がありそうだけど気にするな!

 それは置いといて……例えば赤なら一生懸命何かをしてきたという経験、黄色なら何かに衝撃を受けた経験、青なら他人と接する経験などだ……私はほとんどないけどね。まあそれは君もそうだろうけどね……否定しないのかい。


 はあ、ちょっと気が重くなってきたが、次はこの積み木の家が完成した後のことだ。

 さて、一旦この積み木の家をこのままの状態で放置していたとしよう。多分その内風化して崩れて、最終的には砂塵になるだろう。

 ここからだ、最初に私はこの積み木の家を人生だと言ったね。それが崩れる——崩れる時というのは人の記憶から忘れさられた時としよう。それで四角錐屋根が乗って完成した時が命を落とした時としよう。積み木の家が完成し長い年月が過ぎて崩れる。

 積み木が崩れるというのはその人がそれまで積み上げてきた人生経験が無為に変わると考えられそうじゃないか?


 そう言われると、君はこれから自分が生きていく人生は、結局死んでしまえば全て無為へと変わってしまうと言われたようなものだから、激しく否定するだろう。


——その恐怖故に……


 否定しないんかい! 今のは否定する流れだろう……

 何? そんな雰囲気作らないでいい? うざいだけ? ……いいじゃないか、話が盛り上がるだろう? ……無視するな。


 はあ……続き、いいかな?


 さっきも言ったようにこの材料になっている積み木は人生経験で、それで組み立てられている家は人生そのものだ。

 その人生経験が詰まった積み木の家は形が崩れた後どうなるか? 材料になっていた積み木は形を変えて、その人が残してきた物に変わる。

 それが今も語り継がれたり残されている偉人の考えや名言などだ。それを読んだ人々は、またこんな考え方があるのかという未来に繋がる経験となっていく。そう考えると少し面白いと思わないかい?

……それは偉人だけで、一般人の僕の経験は未来には残らないじゃないですか? ……ふむ、確かにそうだ。一般人の経験が個別個別にズラーーっと残っていたらキリがない、はっきり言って邪魔だ。



 だから、そんな一般人たちの人生という名の積み木の家の積み木——人生経験は崩れた後時代の流れとともに砂塵に成り果てる……

 崩れた上でその人々の経験の砂塵が一つに纏められて未来に残されていく。

 その例が歴史書じゃないかな。人々がその時代をどう生きたのか……だが当然、そこには個人レベルの経験までは書かれていない。でも、確かにその経験は未来にまで保ってきた。先人達の纏められた経験だ。

 歴史書以外にも、今に残る技術、文化、伝統などがありそうだ。


——いつか私達現代人もこんな風に纏められた経験となることだろう。そう考えると、なんだか感動的だね。


 私は「人生は積み木のように崩れ、残骸として未来に残っていく」こう考える。君も自分なりの答えを持つといい。




……


…………


……………………って



「君はまた……! 折角良い感じに纏めた私の話を聞きながら何をやっているのかね!?」

「はい? 見れば分かるでしょう? 読書ですよ」


 僕は先輩のありがたいお話を少し聞き流しながら下を向いてやっていた読書を一旦止めて答えた。


「それは分かってる! なんで今やってるんだという意味で私は聞いたんだ!」

「先輩のよく分からないし、ちょっとおかしい部分がある人生の例え話に呆れたのもありますが、10割くらいは先輩の話し方がうざかったからです」

「……だとしてもせめて9割2分だろう?」

「そうですね、10割2分ですね」

「……もういい、君と話をしていると良い感じに纏めた達成感がなくなりそうだから少しほっといてくれ……」

「それは良いことですね、僕が。しばらく先輩のうざい話をまた聞かずに済みますから」


 僕がそう言うと、先輩はため息をついた後に思いつめた表情で窓の外を見た。

 先輩のその動作は、やはりなんとなくうざさを感じる。


「なんで、私はこんなに周りからうざがられるんだろうか……先生を除けば、君だけだよ後輩くん、私と長時間話し相手になってくれる生徒は、他の生徒は私が話しかけるよりも前に「うざい」と言ってすぐ暴力を振るってきたりするからね。君も暴力を振るってきたりはするけど他の生徒よりはマシだ。もちろん、そんなのない方が良いけどね」

「僕も他の生徒とそう変わりませんよ。でも少し変わってる部分があるとすれば、殴られたりしながらも人と会話を試みようと頑張っている先輩をすごいと思って尊敬することですかね。だって僕には人に話しかける勇気がないんだし、だから他の人からおかしいと思われるだろうけど、例え同級生でも先輩と呼ぶし話を聞いたりするんです」

「はは、その話は前にも聞いたよ。でも、その尊敬する人の話を自分の目蓋を見て過ごしたり、殴ったりするのは仮にうざかったとしてもどうなのかね?」

「そこは許容範囲だと思ってほしいです。他の生徒は話すら聞かずに、僕よりももっと多く、ほとんど手加減なしにやってですから」

「まあ確かに君のいう通りだから良いけど……でも君もそんなに手加減してないよね?」

「あ、今読書に集中してるのであんまり話しかけないでください」


 そう言いながら左手で本のページを捲り、その内容を小声で早口に読み上げながら右手でノートに書き写すペースを上げた。


「誤魔化すな……って、本当に君は飽きないね、読書。よく喉を枯らさない上に手が疲れないね」

「そりゃまあ他の人から理解して貰えないけど、楽しいですからね。本の内容を口に出して読んだり書き写したりするのが」

「それが助長して、本が手元になくても本の内容を小声で読んだり手を休ませずに書き写したりしてるから、周りに影で独り言が多いやばい奴認定されたり、常にペンを動かさないと死ぬ新手のマグロ呼ばわりされて避けられるんだ」

「マグロはやめてくださいよ、表面上は平気に見えるでしょうけど、内心酷く傷ついてるんですから……独り言が多いのは本の内容を忘れないように暗記する為、常に手を動かしてノートに書き写してるのは本の内容を覚える為ですから、まあそれを先輩以外の生徒にも話しても理解できないって顔されましたよ」

「それだから人が話しかけようとしないのだよ、少しは控えなさい。……まあでも、その習慣のおかげで君の暗記系の問題は完璧だから……千歩譲って良いのかもしれないが」

「控えようにも、読書してないと落ち着かないんですよね。小さい頃、いや物心つく前から寂しさを紛らわすためにずっとやってましたから。でも、最近は声を出して読まないよう努力してますよ」

「君の場合、読書とは読み書きと表裏一体みたいなものみたいだからね……だからといって読書を本を読むことと本の読み書きをすることの二つの意味で混同して使うのはややこしいからやめてほしいけどね。

……そういえば今君が書いてるそれは何の本だい?」


 僕は文字を書く手を止めた。


「小説の書き方についての本です」

「? なんでまたそんなのを読んでいるんだい?」

「その……ちょっと大きな声では言いたくないんですが、小説を書こうと思ってるんですよ」

「へー……え!? あの何かを考えるよりも暗記が命だった君が小説を!?」

「驚き過ぎです。まあ、暗記能力以外にも考える能力を身につける為に……ですね。きっかけはあるコンテストをネットで見つけたことですが」

「ふーん? ……ちょっと怪しいね。そのコンテストとやらで何か貰えたりするかい?」

「…………入賞したら図書カードが貰えますね」

「はっきり言ってそれ目当てだろう?」

「…………」

「沈黙は肯定と判断しよう」


 どうせバレるだろうし、後でうざい顔される前に先に言っておこうか。


「……そうですよ、新しい本を読書しようにもお金がかかるので、一応無理かもしれないけどやってみようってことで」

「やっぱりね。まあ理由はどうあれ、行動するのは良いことじゃないのかい? そんなに気にしなくてもいいさ。それで、これは私の興味本位だが、コンテストに応募するんだい?」

「書読です」

「……ショドク? 何だいそれは」

「いはうぎょうのじです」

「え? いはうぎょうのじ? 祝う行事?」

「違います。これはコンテストに応募するのかのなぞなぞのヒントですよ」

「なるほど、よく分からないね。それはともかく、君も人生という名の積み木を、また一つ積み上げていく訳だね」

「なんですか急に? まだ人生を積み木で例えることはやめてなかったんですか」

「また違う例え方を探しているのさ。私が他人にうざがられることがなくなる可能性を探すみたいにね」

「無理じゃないですか?」

「なんでだ! 私は諦めたりはしないぞ! いつか他人に殴られることなく会話が出来るようになるまで諦めたりはしない!」


 先輩は太陽の光が入ってきている窓に向かって椅子の上に片足を乗せてそう宣言した。

 その姿は少し男前に見えて、しかしそこはいつもの先輩のようで、うざさを感じた。


「先輩……まずは口調から直していきましょう」

「あれ!? 今のは君から私を賞賛するような流れだと思っていたんだがなぁ」

「確かに台詞は良いこと言ってましたけど、そこは先輩ですから。周りが見てもうざいだけです。だから、人に賞賛してもらいたいならまずはそのうざさを直してください。努力や経験を積み上げていけば、先輩はきっと人に賞賛されるような人間になりますよ」







僕は「人生は積み木のように努力や経験を積み上げていけば、報われる」という考えを持つことにしましたから

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人生は積み木のように…… 羽田羅輝 @satoumizu

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