スターダスト

たいせー

星屑

かつて私に向けて発言されていた絶賛は、今では後輩へ。

かつて事務所から貰っていた褒め言葉は今では罵詈雑言へ。

かつてファンがくれた「ファンです」は「ファン〝でした〟」へ。

今の私をもう誰も『アイドル』とも『マドンナ』とも呼んでくれない。

やれ100年に一度なんて祀りあげた野郎共の目は後輩達へ。

かつてスターだった私はスターダストとして燃え尽きる。

かつて同じグループだった〝あの女〟のせいで、私たちは終わったコンテンツと化した。

私は終わった。

今では惨めに風俗ではたらいている。

全ては〝あの女〟が薬をやらなければ。

私たちは、いまの〝彼女ら〟のようにテレビで泣いて笑って歌っていた。

もう誰も、今の私達には構ってくれない。

私が悪いんじゃないのに。

私は悪くないのに。

なんでこんなに不幸な役回りを演じなければいけないの?

「全部あんたが『不幸』だからいけないのよ。」

誰かが言った。

きっと昔の私だろう。

昔の私と思われる誰かが私に言った。

「全部あんたが不幸なのが悪い」

「でも、私は悪くない。あの女が・・・」

「そうやっていつまでも過去の栄光にしがみついて、自分だけ悲劇のヒロインぶって。

そうやっていつまでも駄々をこねていればいいわ。

いい気味ね。」

「うるさい・・・うるさい!」

・・・居ないはずの〝あの女〟も、私を嗤う

「うるさいのはそっちよ。

あなたが売れなかったのは、あなたに『ブランディング力』が無かっただけ。

もっと言えばあなたがただ少し可愛いだけの『無個性』だっただけ。」

「お前がすべて悪いんだろぉ!!」

「はぁ?自分の実力が無かったからソロで売り出せなかっただけで、全部

他人のせい?

随分と滑稽ね。

結局、あんたは集団じゃなければ実力が出せなかった三軍。

ほら、あのテレビをご覧なさい?」

私の部屋のテレビは、かつて同じグループだったメンバーがソロでバラエティ番組に出ている姿を映す。

「所詮あんたはその程度の実力だったんだよ。」

「うるさい・・・うるさい!!」

ここに居ないはずの後輩が言う。

「先輩には個性もブランディング力もなかった。

売れていた時に買ったこのマンションにいつまでもすがりついて風俗墜ち。

『いつかまた』なんて無意味な呪文を唱え続けてもう何年ですか?

30越えた『オバサン』はそろそろ現実を見た方がいいんじゃないですか?

あ、こんな『虚像』に論破されている時点でもう現実になんか還れないですかね?きゃはははは」

「消えろ・・・消えろ・・・消えろ!!!!」

テレビに映るメンバーが私をこれ見よがしに見て、笑顔で話し出す

「色んな苦労もありましたが、私は頑張っています!

これからも応援をよろしくお願いします!」

その瞬間、私の中の『何か』が切れた。

もういいや。

もうどーでもいいや。

そうして私はカッターナイフを取り出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スターダスト たいせー @d2tum

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ