第390話 魔狼ダンジョン攻略 ③
【テレーザ視点】
私はレイくんの言われた通りに、倒れている冒険者達にポーションを使って救護をしていたのだけど、何人かにはポーションの効果がなく、冒険者達の何人かはダンジョンに吸われていく感じで消えていった。
最初は安全エリアに転送されたのかなと思っていたのだけど、団長や他の冒険者達の悲しそうな表情を見ると、安全エリアに飛ばされたのでは無いのではないかと思い始めた。
「すいません、確認したい事があるのですが……」
「ああ、なんだい? 君達にはポーションで団員を助けてもらったから、出来るだけ協力するぞ」
「えっと、ポーションの効果が無くて消えてしまった団員の事なんですが……」
「……死んでいった団員の事なら君達が気にする必要は無いからな? あいつらは君達が来る前に、既に亡くなっていたからな……」
やっぱり亡くなっていた?
でも、確認しないと……
「間違っていたらもう訳ないのですが、安全エリアに飛ばされたのではなく、亡くなってしまったのですか?」
「安全エリア? なんだそれは?」
団長は私の質問の意味が分からないといった感じの表情だったので、私はもの凄く嫌な予感をしてしまう。
「私達のいた地域では、【認証の指輪】さえ付けていれば、ダンジョン内で亡くなっても安全エリアに転送されるだけで、実際には死ななかったのですが、こっちの地域では違うのですか?」
「ああ、なるほどな……【認証の指輪】ってのは知らないが、お嬢ちゃんが言っているのは、最近開発されている疑似体験用の仮想ダンジョンのことだな。あれは確かに死なないが、現実のダンジョンはそんな安全エリアなんてものは無いぞ。街の外だろうがダンジョン内だろうが、現実で死ねばみんな死ぬのは変わらない」
「えっ……?」
私は団長の答えを聞いて頭の中がまっ白になってしまった。
「冒険者の学生と言っていたな……今の学校ではそんな現実も教えていないのか?」
団長は【認証の指輪】を知らない?
この世界で生きている限り、【認証の指輪】を知らないはずがないのに、団長は知らないと普通に話していた……これはどういう事?
「おい、大丈夫か? まだ戦闘中だと言うことを忘れるなよ」
「はっ!? すいません!」
私が団長と話している今もレイくんはペットの魔狼と共にダンジョンボスと戦い続けていたのだった……今はダンジョンボスに集中しないと……
だけど、レイくんの戦いを見て、今の私では立ち入ることの出来ないレベルの戦いをしているのが分かり、私の力不足が悔しくて仕方ないと思った。
ボスのスピードになら【天翔眼】を使えば対応出来るだろうけど、明らかに私には攻撃力と決め手が不足しているのだと分かった。
ザザザザッ!
レイくんがボスの首元に持っている剣で攻撃したのか、凄い音がしていた。
「あの子は凄いな……我々で耐えるので精一杯だったダンジョンボスと対等にやり合うとは」
「はい、レイくんは凄い人ですから!」
「なるほどな、でも俺の事はもう良いから彼の助けに行った方がいい。ダンジョンボスは瀕死になると更に狂暴化してしまうのだ」
「いえ、今の私では足手まといになりかねないので、こちらにいます」
「そうか……しかし、まさか暴走状態のダンジョンボスがここまで強くなるのは予想外だっかな……」
「それで、どうすればダンジョンの暴走状態を止められるのですか?」
「ああ、それはダンジョンコアに聖属性の攻撃をすれば良いらしい。そうすれば次から沸くダンジョンボスは正常に戻るらしい……しかし、初級クラスである魔狼ダンジョンが暴走状態になっただけでこれだけの強さだとすると……」
「それは……」
それは私達では対処不能レベルの危険度合いですね……
暴走状態の危険性を感じながら、レイくんとボスとの戦いを見るとボスの首元は血塗れで、このまま戦えばレイくんの勝ちは間違いなさそうだった。
「あの子は凄いな……それにあの巨大な鎧はなんなんだ? ……大きさや形だけなら【魔導機兵】のようにも見えるが……むっ、やばいな」
レイくんとペットの魔狼は一旦離れると、レイくんの持っていた剣が赤く輝きだし、それからレイくんはボスに向かっていき、赤く輝いた剣を首元に向かって横凪ぎすると、ボスの首は横にズレながら落ちていった。
バキン……
レイくんが地面に着地すると同時に、レイの着ていた鎧の両腕部分がバラバラと壊れだした……
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