第99話 魔導炉
遠足というか職場見学の旅行が終わり、やっと《チェスガン》に帰ってきた。
「やっと長旅が終わったんだねぇ~」
今回の職場見学はかなりいろいろなことがあったな……
「そうにゃね~、でもいろいろあって面白かったにゃね」
「確かに面白かった。」
《ガスデール》の街を第2の拠点にしても良いかなと思える位に面白いものがいっぱいあったと思う。
「あっ、そうだエレナ」
「なんにゃ?」
「後でちょっと渡したいものがあるんだけど、明日とか時間あるかな?」
「大丈夫にゃよ。それって例のお礼かにゃ?」
「相変わらず鋭いな……」
自分はまだエレナにお礼の品を用意した件を話していないのに……
「分かったにゃ。(それじゃあ、明日の昼頃にレイのお店に集合にゃ)」
「(了解)」
職場見学の次の日から3日間だけだが、長旅の疲れをとらせる為に、自分達2年生は学校が休みになっていたので、セシリアショップには行く予定だったからちょうど良いかな。
そして、次の日に1人でセシリアショップに来ていた。
「みんな、ただいま。」
「お帰りなさい!」
「お帰りぽん!」
「お帰りなさい。マスター。」
「みんなに《ガスデール》のお土産で万年筆を買ってきたよ。試し書きして良かったのを選んだから良かったら使ってみてよ。」
「ありがとうございます。レイさん。」
「ありがとぽん。レイさん。」
「ありがとうございます。マスター。」
「あとセシリアにはちょっとお願いがあって、セシリアショップでは働けないから、今日から3日間は僕が2階で働くので、2人はよろしくね。」
「わかりました。」
「わかったぽん。」
☆
セシリアと一緒に自宅地下に移動する。
「セシリア、詳細は馬車の中で説明したけど 《ガスデール》に行って鋼材の購入をよろしくね。」
「わかりました。私の新しい能力の試運転も兼ねて行ってきます。」
自分が職場見学に行っている間、セシリアは【魔導スライム】に【風の衣】と同じ要領で、1つだけだが新しい能力を覚えさせる事に成功していた。
それが【空】属性の能力だった。
【空】は本来なら空気を操る激レアな属性だけど、魔眼能力では空を飛べるようになるみたいだ。
【風】と【空】が似ているからかは分からなかったが、【魔導スライム】を使い、力を付与するとセシリアは【飛翔】という能力が使えるようになった。
【飛翔】 自在に空を飛ぶことが出来る。
限界時間 3時間。
自分も空を飛びたかったな……。
そんな事をつぶやくと。
「マスターを抱っこしながら飛べますよ?」
「セシリア……自分で飛ぶのと、抱えられるのはちょっと違うんだ。」
「そうなのですか? 結果は同じに思えますが……違いが分からないです、マスター。」
「そうか、ロマンはまだセシリアには理解しづらいか……。」
「はい、まだ勉強不足です」
「あと 言い忘れたけど、いきなり街中から飛ばないようにね? だから《チェスガン》を出るときは徒歩で出て行って、街からセシリアが見えなくなってから飛ぶようにね。帰りも 《ガスデール》から馬車で最初の休憩所までは行って、そこから馬車は返却、荷物は鞄型【ストレージ】に入れてから飛んでね。」
「わかりましたマスター。それでは行ってきます!」
突然、商会で鋼材を買おうとした理由は、建設会社を見学してる時に【魔導技師】の練度が4.1になり、【魔導工房】に新しく【魔導炉】という部屋が増えたからだった。
【魔導炉】
鉱石、鋼材など金属を溶かし【魔鋼材】として作り替る。その時、不純物は消える。
【魔鋼材】は通常、魔素が溜まった鉱山から取れる鋼材である。
これは属性武器や属性防具などの材料になるから、とても人気であればあるだけ売れるものである。
人気の理由は採掘出来る量が少ないからってのもある。
だから【魔鋼材】を作り出せれば、お金持ち確定なはずだ……。
いろいろ有名になりたくないが、【魔鋼材】は欲しい。
そんな理由で鋼材を手に入れるルートを《チェスガン》以外で欲しかった。
☆
「レイ、来たにゃよ~」
「おっ、待ってたよエレナ」
セシリアが《チェスガン》を出発して1時間後、エレナが約束通り、例のものを受け取る為にお店へ来てくれた。
「レイが洋服を選んでくれるのは初めてだから、楽しみだにゃ~」
「服自体の仕上がりは絶品だけど、エレナの好みに合うかは不安だな……」
カリスマ服飾士は【服飾の極み】を持っているだけあって、服の仕上がりは【鑑定】結果を見ても分かる通り、凄いクオリティなんだよな。
ちなみに、カリスマ服飾士に触発されたのもあり、自分はエレナに似合うであろう靴とネックレスを作ってきた。
【至高のブラウス】
【至高のショートパンツ】
作って貰ったのは、この2着で至高のブラウスは全体的にヒラヒラした感じのもので色は純白でキラキラしていて、至高のショートパンツは水色の太もも位までの長さのパンツで、両方ともエレナの動きを阻害しないようにしてもらった。
そして、流石は【服飾の極み】だからか、両方とも自動的に【クリーン】【自然治癒】【防刃】【防衝】など様々な効果が付いていた。
【真戟のブーツ】 ……が上昇するブーツ。
【天廻のネックレス】 ……が上昇するネックレス。
この2つが自分が新たな試みで作った、エレナの為のブーツとアクセサリーなのだけど、自分の【鑑定】ですら測定不能なものが出来上がってしまった。
「どうかにゃ?」
おっ、エレナがプレゼントした服などを全部着てくれたみたいだ。
「うん、イメージ通りで似合ってるよ!」
「にゃはは、ありがとうにゃレイ。それにしてもこれらは普通の服や靴じゃないにゃよね?」
「まあね、でも性能に関しては折り紙つきだから安心してよ」
「分かってるにゃよ。私としては予想以上に凄いお礼でびっくりしているにゃ。大切に着るにゃ!」
自分のファッションセンスが正解だったかは分からないが、エレナの笑顔が見れただけで十分だろう。
☆
その日の夜、セシリアが予想外の早さで帰って来た。
何かトラブルでも起きたのか?
でも、セシリアならトラブルが起きた時点ですぐに連絡のくれるだろう……
「戻りました、マスター。」
「早くない? 何かあったの?」
確か《チェスガン》から《ガスデール》まで、片道100キロ位なかったか?
「【風の衣】を使いながら【飛翔】したので、飛んでいる時間は片道30分位でした。」
ん?
30分?
「時速200キロ!?」
そんな高速飛行出来るの?
「飛んでいる時以外の偽装が大変で時間がかかってしまいました。」
「……なんかセシリアの方が僕より凄くない?」
「マスターの方が凄いですよ!」
「まあいいか……セシリア、お疲れ様だったね。」
☆
30万コルトで買えた鋼材は3t位だった。
1kg 100コルトの計算かな。
「思ったより買えた量が少なかったね?」
「それが……」
重いものを運ぶ馬車は高額で、例え偽装だとしても街を出るときの馬車代は結構取られたみたいだ。
「それなら仕方ないかな。まあ、初めての事だし次回をどうするかだね。それよりも【魔導炉】の結果次第か……」
自分は早速、セシリアが買ってきてくれた全ての鋼材を【魔導炉】に入れて、稼働させる。
【魔導炉】からは蓋を閉めているので、中身は見えず、静かにゴォォ……という音だけが部屋に響いていた。
鋼材を入れてから、1時間後……
チンッ!
電子レンジかよっ!って突っ込みたい完成音と共に、3tあった筈の鋼材が、たったの3kgの魔鋼材になっていた。
魔鋼材の価値はよく分からないが……
30万コルトで、たった3Kgの魔鋼材にしかならないのでは……完全に赤字ではないのか?
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前・レイ(7歳)
状態・良好
属性・雷
職種・魔導技師4.1 魔導剣士4.6
種族・人族
パッシブ・人見知り、建築、土木、料理
素材の極み、鍛冶、パラレル思考
共感覚、魔導科学、特殊採取
アクティブ・魔導操作、鑑定、クリーン
ストレージ
武器強化、雷属性付与
魔導工房、魔導具作成、魔導弾
魔導手、魔導壁、魔導剣
圧縮魔導砲、魔導細胞生成
魔導工房内・作業室、金属加工室、合成室、魔導炉
固有スキル・ジョブホッパー
鑑定の魔眼
装備・神木の小太刀
魔導圧縮銃
身代わりネックレス
重力カウンターの指輪
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名前・セシリア
職種・魔導姫
種族・魔導生命体
固有能力・魔素通話、魔素データ通信、同期
魔素圧縮吸収、魔素操作、指揮
装備・魔導服(メイド服)
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