第28話 シーラ

 レイちゃんを体験学習で預かって半年位が経過したとある休憩室での出来事。



 ソフィアとの話して元々の預かる理由だった、【料理】系のスキルがレイちゃんにはあるかもって話だったけど、レイちゃんの職種は【魔導剣士】だったから多分だけど、【料理】系のスキルはないだろうと思っていた。


 職種には大分類という非公式な区分けがあり、それは4つに分かれていた……。


 戦闘系、支援系、生産系、特殊系の4つ。


 特殊系は別として、戦闘系の場合は支援系、生産系のスキルは取得出来なくはないが、ほとんどいない事から昔から分けられていた。



 レイちゃんはいつもの様にキリの良いところで帰ってもらった。


「それにしても、レイちゃんは皿洗いだけだとは言え、仕事が完璧に近いわよね……。」


「そうですね。 レイちゃんは本当に5歳なんですか?」


「あ~。 それは私も思うわ~。 私の15歳時の働きレベルに近いわ~。」


「「それ、あるかも。」」


 確かにベテラン従業員ばりの皿洗いスピードと綺麗さ、しかも【クリーン】の除菌付き。 むしろ、皿洗いマスターと言っても良いと思ってしまうくらいに凄かった……。


「本当は別種族だったってオチは?」


「レイちゃんは知り合いの子供だから、間違い無く人族よ。」


「そうなんですね。 そしたら生産職か特殊支援系の職種とかですか?」


「それが前衛職なのよね……。 多分、器用なだけかな。」


「5歳であのレベルは器用ってレベルでは片付かない感じはしますけどね。 私の数年の修行期間が悲しくなりそう。」


「……レイちゃんは何をやっても出世しそうですよね。」



「「それは思った!」」





 ☆



 レイちゃんの体験学習最終日。 ついにレイちゃんが食堂で働くのも最後になった。


 レイちゃんはいつも通り、完璧に仕事をこなして帰る時間になっていた。


「シーラさん、従業員の皆さん短い期間でしたけど、ありがとうございました!」


 ………。


「それで感謝の意味でプリンを作ったのですが、従業員のみなさんで食べませんか?」


 本当に凄く良く出来た子ね。 ソフィアの教育が良いのかしら……。 ブラットと同い年なのに、こうも違うなんて。


 そしてレイちゃんの作ってくれたプリンが事件になった。


「旨すぎる……」


「至高の食べ物だ……」


「もう死んでも良いや。」


「今までのプリンはいったい……。」


「レイくんを攫えば、毎日……。」




 うちの食堂でもプリンは作っているけど、別物だった。


 とろとろな感じなどは頑張れば再現は出来そうだけど……。


 食べた後に来る快感みたいなものは無理だと思うわ。


(ソフィアが心配していた意味が分かったわ。 多分だけど、このプリンにはスキル付与がされている……。 しかも中毒性かな…… 身体が少し熱い……。 コレみたいなのを毎日食べていたら……。 ソフィアとフローラちゃんが少し心配ね。)




 ☆



 そして、レイちゃんが食堂から居なくなってから数日後……。



 当然、私はレイちゃんのレシピでプリンは再現が出来なかった。


「みんな…。 ごめんなさいね。 私にはあのプリンは無理だったわ……。」


「シーラさんのせいではないから謝らないでください!」


「そうですよ~。 でもあの味を知ってしまったら……」


「私の旦那にならないかな……」


「「それだ!!」」


「ち、ちょっと待って! そんな事したら私がソフィアに殺されるわ!」


 流石にレイちゃんに何かあったら私がふたりに殺されるわ……。 


「……そっか。 レイくんの両親はあの有名なレオンさんとソフィアさんだった。」


 私の旦那もかなり強いけど、レオンさんとソフィアのコンビはほぼ無敵に近いレベルであり、王国では勝てる可能があるのはエリーさんだけではないだろうか。 視界に入る物を防御無視で攻撃出来る【魔剣】使いと、即死以外は瞬時に回復が出来る【聖女】並の【回復魔法師】。


「……普通に死ねるわ。」


「死体が残るかな?」


「モロットが消えるかも?」 


「……。」


「とりあえず、もう一度頑張って再現してみるわ。」


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