閑話 初々しい2人
夜会が終わって2日後の夜。俺達は当代様の別荘の主寝室で途方に暮れていた。
「どうする?」
「どうしましょう?」
夜会の次の日、あの神官親子へ処分を通達して里でのすべての予定が終了した。そして今朝、アレス卿と少年王が帰国していくのを見送った後、陛下と皇妃様は俺達を置いて帰国してしまった。その後、俺達は本当に夜会の後の口約束通り、当代様の別荘へ連れて行かれたのだ。
代々の大母が避暑の目的で利用する別荘は優美な装飾で彩られており、女性好みの調度品が揃えられている。そんな所へ男の俺が滞在してもいいのかと
そんな訳で別荘を管理しておられる使用人方は、特に気にした様子もなく俺の荷物も部屋に運び込んでくれた。
着いたのは夕刻だったので、コリンと2人、暮れ行く庭を散策して過ごし、共に夕食を取り、食後は少しお酒を頂いた。離宮にいた時と同様にゆったりと流れる時間を楽しみ、明日は天気が良ければ遠乗りに行こうと約束し、お休みの口づけを交わしてそれぞれの部屋に入った。
ゆっくりと湯を使い、寝る前に読む本を厳選して寝室の扉を開ける。思いのほか豪華な天蓋付きの寝台に驚いていると、別の扉が開いて先ほどお休みの挨拶を交わしたばかりのコリンが入ってきた。
「え?」
互いに目を丸くして固まる。そして2人で状況を整理すると、男性用と女性用の私室が寝室で繋がっている作りになっていたのだ。調度品の豪華さから推測すると、この別荘の主寝室をあてがわれていたらしい。自分で荷物を運び込んでいれば気付いたのだろうが、コリンと過ごすことを優先して全て使用人に任せてしまったために気付けなかった。
「どうする?」
陛下の口ぶりからすると、おせっかいを焼いたのは当代様だけではなさそうだ。だが、彼らの思惑通りに関係を持つのはちょっと躊躇われる。何より、あんな事があったばかりのコリンは怖いのではないのだろうか?
「お、俺、向こうのソファで寝ます」
夜着姿のコリンを前にして、理性が保っていられるはずもない。俺は逃げるように
「い、行っちゃ嫌」
「コリン……」
俺を掴む手がわずかに震えている。あの時の事を思い出したのではないかと気になるが、口に出すのは躊躇った。
「一緒に……」
これ以上言わせたら男が
「怖くなっても途中で止められませんよ?」
「うん……」
彼女は俺の腕の中で恥ずかし気に頷いた。あー、もう、本当にかわいい。俺はたまらず彼女に口づけると、そのまま寝台に足を向ける。陛下や当代様の思惑通りになるのは癪だが、かわいい恋人の望みを叶えるのは当然のことだ。そう自分に言い訳をして、彼女と初めて
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