第67話 クラン
アップデートの終了は明日の10時か。少し長引いたかな。
二陣も入ってくるだろうしいつもより騒がしくなりそうだな。とりあえず今日は春香が送ってきた楽譜でも見て寝るとしよう。
……なんか歌詞あるんだけど、これ俺も歌うことになってないか?
翌日、ログインするとルカ、コウ、ミキの三人につかまった。
「ようやく見つけた。リュー兄、これに手をのせて」
ルカが指さすのはよくわからんウインドウ、ステータス画面とも違うし、該当者の手をのせてくださいとしか表示されていない。
よく分らんが、ルカなら俺が不利益を被ることはしないだろうと、手をのせる。
『クラン天使の翼のクランマスターになりました』
はい?
「おいルカ、これはなんだ? いきなりクランマスターになったとか言われたんだが」
「うまくいったみたいだね、これで一仕事終了。間に合ってよかった」
詳しく聞くと、ゲーム開始になってから速攻でクランを作ってマスター権限を俺に渡したらしい。
理由は俺を厄介なクラン勧誘から守るため、らしい。
前回のバトルロワイヤルで1位になった俺を勧誘したいというグループは多いらしく、あの手この手で勧誘した後、
そうなる前に俺をクランマスターにしたということらしい。
「ちなみにクランメンバーは私とミキ姉、コウ兄のパーティーだね。身内クランだから」
なるほど、クランメンバーはメニューから見えるようになっているのか。人数は22人? 一パーティ6人で、春香たちの3パーティーで18人、俺を入れて19人。後の3人はナツメ達か。従魔も人数に含まれるのか。NPCも1人として数えるのか、あれ? だとしたら他のNPCも合意さえもらえればクランに入ってくれるのかな?
おっと、だんだん人数が増えてきたな。2陣の人のキャラメイクが終わったのかな。移動しといたほうがいいな。
噴水広場からエマの店まで転移した。
そう、前回の大会で手に入れたポイントで、簡易ポータルという道具を交換して、エマに許可をもらって、お店の奥に設置させてもらったのだ。この簡易ポータルは許可した人しか使えないので、現在使えるのは俺とエマだけだ。
ん? なんか表が騒がしいな。どうしたんだろう。
「やっぱりここだ。これ全部
客が来ているのか、まあいつかは見つかるだろうと思っていたが、思っていたより速かったな。
ただ一つこの客は勘違いしているようだが。
「エマ、お邪魔してるぞ、ずいぶん騒がしいな。どうしたんだ?」
「リューヤ」
「撲殺天使! やっぱりここがアーティファクトを作ってる店だな。俺にも銃を売れ」
はあ、まったく、こいつは1陣のプレイヤーだろうから、好感度システムは知っていると思うのだが、そんな威圧的な態度で接するとエマが怖がるだろうが、涙目になってるじゃないか。
おっとその前に確認しないと。
「エマ、
「ううん、前にも言ったけど私は武器は売らない」
「そうか、分かった。俺はちょっとこの人に用事があるから少し外に出てるな」
エマのいってらっしゃいの声を聴きながら、プレイヤーの襟をつかんで店の外まで引っ張る。
エマは今まで
俺の銃に関しても基本的に作ったのは俺だし、エマが関わったのは、魔方陣の研究と銃口を作る部分くらいなものだ。銃口は手袋じゃどうしようもなかったから、エマに新しい
「おいコラテメーなにしやがる」
「ちょっと外でOHANASHIしようじゃないか」
そう言いながら店から少し離れたところまで引きずる。
◇
「お帰り。さっきの人は?」
「ああ、少しお話したら帰っていったよ。それより大丈夫だったか?」
「うん、リューヤが来てくれたから大丈夫」
うれしいことを言ってくれる。そうだそういえば一つ聞きたいことがあったんだ。
「なあエマ。エマってクランに入れるのか?」
「クラン? ああ確かギルドが新しくそんな制度を作ったて言ってた。あれはギルドに入っている人全員に当てはまるから、多分入れるはずだよ」
「エマって冒険者ギルドに所属してたのか?」
「うん、素材なんかは自分で取りに行くほうが安上がりなことが多いし。まあ本業は生産ギルドなんだけどね」
生産ギルド、確か生産職の人がよく利用するギルドだっけ。アーデさんから聞いたことがあるな。素材なんかをよく買いに行ってるとか。後、露店をするにも生産ギルドの許可が必要だって言ってた気がするな。
エマは冒険者ギルドと生産ギルドの両方に入っているのか。
とりあえずクランには入れるってことでいいんだよな。
「エマさえよければ、うちのクランに入らないか?」
「クランに、いいの? 私戦闘とかあまりできないよ」
「それはお互い様だ。俺よりもエマのほうが生産スキルはずっと高いし、できないことがあれば、他のやつが補えばいいんだから。それに、さっきみたいな奴が、いつまた現れるかわからないし、無理やりクランに入れられる可能性も考えると、すぐにどこかのクランに入るべきだと思うんだ」
先ほどのプレイヤーのことを思い出したのだろう、少し震えている。人見知りのエマのことだから、入ってすぐは大変だろうけど、コウたちにはエマの性格なんかは話しているし、エマが嫌がるようなことはしないだろう。
さっきのプレイヤーがいつこの場所を公開するかわからないし、その場合プレイヤーがここに殺到することは間違いないだろう。その時、無理やりエマを自分のクランに入れようとする奴がいるかもしれないし、そうなる前にどこかの……俺たちのクランじゃなくてもいい。エマのことを理解してくれるクランに入っておくべきだ。
……いや、やはり嘘だ。できれば俺たちのクランに入ってほしい。エマとの魔方陣の研究やモノづくり、どれもこれも楽しいものばかりだった。何回も魔方陣を書いて、何回も失敗して、なんでうまくいかなかったかを考察して、また一から始める、また失敗して、もう一度考察を行う。エマとのこの時間がたまらなく好きになった。
だから俺はまだまだエマと一緒にいろいろなことをしたい。だからエマ……
「俺たちのクランに入ってくれないか」
「うん、よろしくリューヤ」
こうして俺たちのクランの人数は23人になった。
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