第30話 槍で模擬戦

【鍛冶】スキルのレベル5で刀が作れるのか。金床も余ってるし作ってみようかな。

 そういえば【刀術】取りに行かないとな。思いっきり忘れてたな。どこに行けば取れるんだろう? あとで調べよう。


 鉄の刀


 鉄鉱石で作られた刀

 普段の工程ではあり得ないほどの長い時間叩かれていたのでもの凄く出来が良く

 ミスリルの刀にも引けを取らない攻撃力を持っている


 制作者・リューヤ


 うん、うまく出来たな。


 良し、槍と刀もまずは使ってみるか。改良点があるかもしれないし。相手は誰が良いかな?


 ロックゴーレムは槍も刀も向かないし、エルダーウルフは範囲攻撃がないと辛いしな。今のスキルレベルだとメイスを出すことになりそうだしな。


 それ以外で良い相手というと……あ、モルドさんとか良いかもな。仕事の邪魔にならなければ模擬戦をお願いしようかな。




 ◇




「モルドさん居ますか?」


「ん? この声はリューヤか。久しぶりだな」


 いや俺からすると昨日始めて合ったんだけどね。こっちだと4日ぐらいたってるからな。


「今大丈夫ですか?」


「ああ別に良いぞ、最近はクエストをクリアしようとする奴も減ったからな。少し暇なんだ」


 そういえばモルドさんのクエストは鬼畜クエとか言われてたっけ。


「また模擬戦をして欲しいんですよ。今度はメイス以外で」


「お、いいぞ。そういうことなら相手になってやる」


 良かった。モルドさんくらいしか言い相手が思いつかなかったんだよね。手加減もちょうど良いくらいだし。


 今回は槍と刀で模擬戦をしようというわけだ。


「俺の武器はどうしようか?」


「モルドさんの好きで良いですよ。その方が面白そうです」


「言ったな、後悔するなよ。アーツもスキルもありで良いか」


「はい、それで良いです」


 そう返事をすると、槍を手にするモルドさん。

 それを見て俺も槍を持つ。


 とりあえずできる限りやらせてもらおう。


 前回と違いモルドさんは油断してない、アーツを撃っても隙になるだけだ。

 今回は、不用意にアーツは使えないモルドさんはこっちの使えるアーツは全部使えるだろうからアーツの対処法や隙のできるタイミングなど色々知っているだろう。

 そんな人にアーツを使うのは愚作でしかない。


 アーツを使うとしたら絶対によけられないタイミングでないとだめだろう。

 ……モルドさん相手にそんなタイミングあるかは不明だが。


「来ないならこっちからいくぞ」


 モルドさんがそう言いながらこちらに走ってくる。


「ウオット、アブね」


 槍の間合いって思ってたより遠いな。


 ……いや今のはワザとだな。わざわざ間合いの外から石突の部分のみを持って最大の間合いで突いてきたんだろう。本来そんなことして弾かれでもしたら簡単に槍を落としてしまうだろう。そんな博打をを軽々と出来るからこの人はすごい。


「最初に槍と戦う冒険者は今ので大体やられるか、よろけて転ぶかするんだけどな」


 よく言う。俺が避けることまで計算して、次々と突きを放っているくせに。


 それにしても突きって言うのは避けずらい。今まで戦ったことが無かったから分からなかったが突きは剣のように振っている訳ではないため起動が読みにくい。

 いきなりテニスの剛速球サーブを連続で顔面に向かって放たれてるみたいだ。


 ……いや、そんな経験無いけど。


 そんな高速の攻撃を槍の間合いで放ってくるから困る。避けるので精一杯で攻撃に出れない。


 とはいえ攻撃に出なければ勝てるはずもない。どうにかして、こちらからも攻撃を仕掛けないといけない。


 突きを避けたところで裏拳の要領で槍を弾き、バックステップで後ろに下がり、今度はこちらから仕掛ける。

 槍なんて使ったことなんて無い。使っているのを見たこともない。つまり今俺が目標に出来るのは、モルドさんだけだ。

 モルドさんの槍捌きを見よう見真似でやってみる。


 ……スピードが足りない

 ……パワーが足りない

 ……狙いが甘い


 てんでだめだ。モルドさんの足元にも及ばない。

 モルドさんの真似だけでもだめだ。それじゃあどうしてもモルドさんの下位互換になってしまう。

 だったら俺に合わせて最適化すればいい。槍の長さ、重さ、重心すべてを理解して自分の身体に合った方法を考え実行しさらに最適化していく。幸い槍は俺が作った物だ、この槍のことは俺が一番知っている。


「なあ、リューヤお前槍使い始めたのっていつだ」


「今ですけど」


「……最初のお前はかなり拙かったんだが、上達速度がハンパじゃねえな。しかも最初は俺の真似ごとだったが、今はお前のオリジナルも入っている。お前ほんとに今始めたのか? 最初に出来ない振りでもしてたんじゃないのか?」


「そんな面倒くさいことはしませんよ。ただ目の前にちょうどいいお手本がいてそれを自分のスタイルに合うように改変して最適化しただけですから」


 リューヤは簡単に言ってのけるが、普通改変や最適化するにはたくさんの戦闘経験が必要になる。本来こんな模擬線で片手間に行える物ではない。

 はっきり言って異常であった。


 まったく、ありえないことをさも当然のように言いやがる。こりゃあとんでもないやつを見つけちまったっかもな。


 モルドはそんなことを考えながらリューヤの槍を捌いていく。


「これでどうだ【大車輪】」


 モルドがアーツを使って槍を振り回す。


 今自分は攻勢に出ている。モルドはもう一度仕切り直すためにアーツを放ったのだろう。

 だが仕切り直されると負ける可能性が高い、モルドとの模擬戦で多少は強くなったとしても初戦は付け焼き刃だ。


 ……なのでココから更に前に出る。


「【ハイジャンプ】」


 体術スキルのアーツ【ハイジャンプ】を使って上に飛ぶ【大車輪】のアーツは全体を攻撃できるアーツだが上と下には攻撃できない。


 つまりそこは死角になる。ココでアーツを使えば勝てるだろう。だが。


「!!」


 アーツを放とうとするがそこでモルドが槍を手放した。手放したことによりアーツが中断される。そしてモルドの拳にアーツの光がともる。


「あいにくとその手は既に見たぜ」


 そう、前回も俺はモルドがアーツを放った隙を突いて倒した。

 そのモルドが学習をしないわけがない。


「きっと今回も狙ってくると思ったぜ」


 まんまと誘われたわけだ、【大車輪】のアーツは餌、本命はこっちと言う訳か。

 槍の戦いなのにそんなのありかよ。とも思ったが【ハイジャンプ】を使った俺が言えた義理ではないな。

 スキルの途中で武器を手放すとキャンセルされるのか。知らなかった。完敗だな。



「……俺が相手でなければな」


 翼をだし重力に逆らって舞い上がる。

 そしてそのまま空中で宙返りをし頭が下に向いたところで……


「【空歩】【ハイジャンプ】」


 既にアーツを使って隙だらけのモルドにスキルとアーツのコンボで突撃した。

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