第29話 鉄の槍

「ひるみの状態異常?」


「そう、どういう効果があるんだ?」


 ログアウトして春香にひるみの状態以上の効果を聞いた


「そうだね、とりあえずモンスターの場合、攻撃をする回数が減って回避が多くなるかな。プレイヤーの場合攻撃行動が若干遅くなったり、アーツがごくたまに発動しなくなったりする」


 まあホントにごくたまにだからそうそう起きないんだけどね。と春香は付け加える。


 やはり実際に使った方が分かりやすいか。PVPの場合はどうしよう。コウに頼むしかないか。ミキは後衛だから無理だし。ルカは一応前衛も出来るけど、コウほどではない。

 PKすることも出来るけど、向こうから向かってくるならともかく、こちらからやるのは気が進まない。


「光輝に頼んでみるしかないな……」


「光輝と何するの?」


「俺に何を頼むんだ?」


「……………」


「……………」


「……………」


「すいません警察ですか? 家に不法侵入者が―――」


「ギャー、ストップストップ!」


 受話器を取った俺を、あわてて光輝が止めに来る。


「……すいません不法侵にゅ―――」


「ストップ! 悪かったから、勝手に入ったのは謝るから、やめてくれ!」


 とりあえず光輝を正座させて、二人から話を聞く。


「で、なんでココに居るんだ? お前ら」


 ゲームをやっていたはずの二人がログアウトする理由はトイレかご飯ぐらいだろう。体調が悪いようには見えないし。


「ログアウトしたら親が外食してくるって、書き置きを残して出かけてて」


 と光輝が言うと、美月も。


「私も方もおおむね同じ感じね」


「そうか……要するに昼飯をたかりに来たと」


「……はい」


「……その通りです」


 しょうがないか、はあ今日の昼飯はチャーハンだし人数増えてもあんま問題ないからいいか。


「なあ美月。何で俺は正座してるのにお前は椅子に座ってんだ?」


 光輝が椅子に座って話をしている美月に言う。


「私はちゃんと春香に入る許可を得てから入ったから」


「チャイムを鳴らしてから入るべきだったか」


 人の家に入る時の常識だろ。




 ◇




「で結局龍也は俺に何を頼む気ったんだ?」


「スキルの検証だよ【威圧】ってスキルの」


 光輝に頼むつもりだったのでちょうどいい。ここで頼んでしまおう。


「【威圧】か。でもあれ自分よりレベル低くないと聞かないぞ。お前のレベルじゃ、俺には効かないと思うぞ」


 そういえば忘れていた。俺は現在レベル12そしてそのレベルはナツメが三人と狩りに行って手に入れた経験値だ。

 つまり三人は俺たちの三倍近い経験値を手に入れている。さらに言えばラルミィの不足分の経験値まで持っている。となると確実に俺よりレベルは上だろう。

 やはりここから先はレベリングがネックになってくるだろう。


「レベリングしてから挑むことにするよ」


「お前まさか召喚士で上位種族のくせに俺たちのレベルに追いつく気か?」


「まあ何とかなるだろう。とりあえず今のレベル教えてくれ」


「18だけど」


「分かった。レベルをある程度上げた時に頼む」


 18か、フォレストウルフを無限に狩っていればそのうち上がるだろう。


「マジで追いつく気でいる。どうしてだろう。何故かは分からんが、何か追いつかれそうな気がする」


「お兄ちゃんだからねー」


「龍也だからねー」


 おい、だから何なんだそれは。


「まあ今日は【鍛冶】やる予定だからまだ先の話だな。それに先に倒すモンスターもいるし」


 クラーケンにリベンジしないといけないしな。


「そうか、なら今のうちにレベル上げしないとな」


「おう、すぐ追いつくから待ってろ」


 やばいな。何するかは分からんが本当に追いつかれかねない。

 本気でレベリングしよう。


 そんなことを考える光輝。


 チャーハンを食べたあと、かなり無茶なレベリングをして、死に戻りし、結果的にレベル上げが遅くなることを、この時の光輝はまだ知らない。




 ◇




「さて、それじゃあやりますか」


 と言うわけでおばさんの所で金床を買ってお金を3時間分払い【鍛冶】を始める。


 今回作るのは槍だ。鉄のインゴットはまだ残っているので、洞窟に良く必要は無いが、そろそろ行ったほうが良いかもしれない。

 ミスリルも欲しいしな。


 そういえばと【鍛冶】のレベルをみて見る。

 ……ちょうど10だった。


 思っていたより高いな。高くても7ぐらいだと思っていたんだが。【鍛冶】スキルって上がりやすいのかな? それとも何か別の要因が? 今度アーデさんにでも聞こうかな。


 まあ今はそれは置いといてと槍を作り始める。


 カンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッ……


 そういえば叩き続けていると腕が重くなるようなあの感覚は仕様らしい。まあそうだろうな。スタミナなんてこの世界には無いし、長く叩くだけで武器が強くなるなんていう世界だ。腕が重くなるような仕様でもないとそのうちぶっ壊れ性能の銅の武器とか出て来そうだ。



 ―――「なあ、これ本当に鉄の武器なんだよな? ちょっと性能高すぎないか?」


「まあお兄ちゃんが作った物だしね」


「二人ともうらやましい。私も何か欲しい」―――



 すでに自分がそのぶっ壊れ性能の武器に片足を突っ込んでいることをリューヤはまだ知らない。


「よし完成!」


 鉄の槍


 鉄鉱石で作られた槍

 普段の工程ではあり得ないほどの長い時間叩かれていたのでもの凄く出来が良く

 ミスリルの槍にも引けを取らない攻撃力を持っている


 制作者・リューヤ


 いつものようにレシピ登録して終了


 そういえば作れる物が増えるんだっけ。

 レベル10だと何が作れるようになるんだろう。


 えっとレベル5で刀か。レベル10で……自由創作?


 なんでも自由に物を作れるらしいが、そんなに簡単な話ではないらしい。何でも自由ってのはゲームによる簡略化をなくしただけらしい。簡単に言えばリアルで出来る人はこっちでも良いですよってわけだ。そしてそんなことが出来る人が何人いるかって話だろう。不評なようだ。


 どの道俺も使えないし、問題なしでスルーだな。

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