第20話 錬金スキル
「珍しい。お客さん」
そう言って奥から女の子が出てきた。
「道具屋のおばさんに教えられてね」
「そう。何見る?」
「魔石を使ったものが有れば見せて欲しいんだけど」
「そう……そこの棚」
なんか暗くなったな。何かあるのだろうか。
「これってどう言う物なんですか?」
棚にあった商品を持ち上げて言う。
「それ、入れたもの、粉末にする」
へー、使いようによっては便利かもしれないな。
「これは?」
隣にあった金属でできた手袋のような物をみせる
「それ、硬いもの、柔らかくする。それで、隣ので、硬くする」
もう一つ隣を見ると似たような手袋がある。
これいいな! 硬いものって事は金属なんかも柔らかく出来るんだろ。もう1つので硬く戻すこともできるし、鍛治なんかに使えそうだな。
値段も手が届く。
「これ下さい」
「それ、ですか」
バツの悪そうな顔になる。
「それ、魔石使ってる。使うには、魔石に、魔力込めないと、行けない。でも、魔力込めるには、特殊な、スキル、必要」
成る程、つまりそのスキルがないと買ったとしても使えないってわけだ。
しかも特殊か……持ってる人が少ないんだろう。
バツの悪い顔になった理由はこれか。
「ちなみにそのスキルの名前は?」
「【魔力操作】って言う、ごくごく稀に、スキルソードが見つかることがある」
ん? 【魔力操作】って種族スキルのあれか? スキルソードにあるんだ。ってそこじゃない! 俺持ってんじゃん。つまり使えるってことだよね。
「そのスキル持ってますよ」
驚いたようで目を見開いた女の子。
「本当! これ、魔力流してみて」
魔石を差し出して来る。
魔力を流す、か魔法の時みたいに魔力を集めれば良いのかな?
とりあえず手に集めた魔力を魔石に流し込んで見る。
あれ? うまく入って行かない。流し方が行けないのかな? どうしよう。なんか魔石に入る前に霧散してる感じなんだよな。今度は無理やり押し込む感じで流してみる。
お、うまく行ったみたいだ魔力が魔石に入って行く。
魔石が光った。魔石って魔力込めると光るんだね。
「本当に、持っているんですね」
「ええ、種族スキルにありました」
「種族スキルに……もしかして、空飛べたり、する?」
「はい、飛べますけど、なんでわかったんですか?」
「種族スキルに【魔力操作】がある人、大抵、空を飛べる」
「そうなんですか、知りませんでした」
「しらない? おかしい、空飛ぶのに、魔力操作、必須」
「ああ、そういえばナツメが無意識に魔力を循環させているとか言ってたな」
「無意識、循環……普通じゃない」
いきなり普通じゃない認定されてしまった。
「貴方、名前、私、エマ」
「エマか、俺の名前はリューヤだ。よろしくな」
「ん、よろしく。リューヤ、スキル、覚える気ない?」
「スキル? 覚えられるなら覚えておきたいな」
「じゃあ、この板に、手乗せて、魔力、流して」
そう言ってエマが出したのは魔法陣の書いてある一枚の板だった。
とりあえず言われた通り手を乗せて魔力を流してみる。
『【錬金】スキルを会得しました』
「【錬金】スキルは【魔力操作】のスキルと、この錬金板、ないと、取得、出来ない。錬金板、扱ってるの、ここ以外無い」
結構取得条件厳しいな。【魔力操作】のスキルソードが中々手に入りにくい上にここにしか無い錬金板を使わないといけないって、俺は運が良かったのかな。
そういえば最初のジョブ選びの時に【鍛冶士】や【調合士】はあったが【錬金術士】は無かった気がする。
「その、錬金板、上げる。そこ、棚にある物、全部私が【錬金術】で作った、参考にして」
【錬金術】は【錬金】の進化版かな? 確か一定以上スキルレベルをあげると進化するスキルがあるんだったっけ。
「ココの物全部エマが作ったの!」
かなりの量だ。これを一人で作ったのか。
「いくつか見ていって良いか?」
「もちろん」
許可をもらって店内の物をいくつか見せてもらった。
「それじゃあまた来ます」
そう言って店を出る。
……結構買ってしまったな。エマって意外と商売上手なのかもしれない。
あのあと店内の物をいくつか見て回ったが、最初に買うと言っていた手袋以外にも色々買ってしまった。
ピロン♪
この音は、確かフレンドチャットか。
コウからか。
『狩りをそろそろ切り上げて寝ようと思うんだがナツメはどうする?』
ココで送還しても良いけど魔石はどうなるんだろう? 俺の手元に来るのかそれともその場に残るのか? 実験したいところではあるが今はやめたおこう。
『噴水広場で待っててくれ。すぐ向かう』
『了解した』
フレンドチャットを閉じて噴水広場へ向かった。
◇
「悪い、待たせた」
「ずいぶん掛かったな。町の外まで行ってたのか」
「いや町の中だったんだが入り組んでてな。それで時間掛かった」
「そうか、今度話を聞かせろよ」
「ああ、2人は?」
「もう寝てると思うぞ」
「そうかコウも寝るのか」
「ああ、早く起きて狩りがしたいしな」
「そうか。じゃあな」
確かに少し眠いナツメを送還して俺もログアウトすることにする。
本当は鍛冶をやる予定だったんだが。夕飯後にやることにしよう。
ログアウトして夕飯の支度をする予定だったのだが……
「あでッ!」
転んでしまった。なんだ身体が重い。いや向こうでの身体が軽かったのか。これはちょっとなれるのに時間がいるかもしれない。
さて、何を作ろうか。あまり動きたくないし簡単な物にしよう。
パスタにするか。
茹でてソースを掛けるだけなので楽だ。
茹で始めたところで春香にメールを送る。
春香が降りたところでちょうど茹で上がり、ソースを掛けて机におく。
「「いただきます」」
「なあ春香」
「何お兄ちゃん?」
「お前起きてすぐ行動できるのは何でだ?」
「もしかして転んだ?」
「ああ」
「やっぱり。長い時間やってると転ぶんだよね。解決方法としてはリアルの身体をゲームに近づけるとか起きたらストレッチするとかかな」
「ゲームに近づけるとか無理だろ」
「そりゃあ完全にするのは無理だけど近づけるだけで大分軽減されるらしいよ。ストレッチと併用すれば大分楽になると思うよ。ちなみに私はストレッチオンリーだよ」
ゲームに近づける、か。明日からランニングでもするか。朝1時間くらい早く起きれば問題ないだろう。
「それじゃあお兄ちゃん私はログインしてくるね」
そう言って春香は自室に戻っていった。今ログインしても寝る以外の選択肢がないと思うのだが何をするのだろう?
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