第15話 魔法特訓
「何かしょぼくないか?」
「たしかに普通の【ライトボール】よりも威力が低いわね」
ミキも同じ意見のようだ。
俺は【聖属性魔法】の種族スキルを持っているから、威力が強くなるはずなんだが、なぜか逆に威力が低くなっている。どういうことだ?
ミキにも原因は分からないらしい。
「あ、そうだ! ナツメちゃんなら何か分かるかもよ」
ルカの言葉になるほど、と俺の特訓に完全に戦力外のコウと遊んでいたナツメを呼びもう一度魔法を使ってみせる。
「何か分かったか」
「分かるもなにも私には主がワザと威力を落としてるようにしか見えないんじゃが」
「ワザと威力を落とす?」
ミキとルカを見る。
二人とも首を振っている。
「なあナツメ。魔法の威力って決まってるんじゃないのか?」
「おお、そういえばそうじゃった。他の種の物は魔法の威力は変えられない物が多かったのじゃ」
ナツメの話によると、魔法の威力が弱いのは【魔力操作】のスキルが原因らしい。魔法は体内の魔力を一カ所に集めることで発動させる事が出来るが、俺の場合は【魔力操作】が魔力を集めると言う動作を阻害しているらしい。
つまり解決策は【魔力操作】をやめれば良いってことだ。
……うん解決策は分かる。分かるんだが……
「【魔力操作】ってどうやってやめるんだ?」
今まで能力すら分からなかった物をいきなりやめろと言われてはいやめました。と、出来れば苦労はしない。
「主、もしかして無自覚で【魔力操作】をしていたのか? 【魔力操作】ってスキルを持ってようやく魔力を感じることが出来る物で制御するにはかなり技量がいるのじゃが」
そう言ってナツメは俺の手を取った。
ん? 何かが入ってくる。
「主、今感じているのが魔力じゃ。今度は自分の身体の中にも同じ物があるから探してみるのじゃ」
ナツメの言葉を聞いて目を閉じ集中する。
ん? これか? それともこれか? なんかそこら中にある気がするんだが、どれなんだ?
「主は今自分の魔力を無意識に身体に循環させているのじゃ。だからそこら中にあるように感じるのじゃ。まず循環を止めて、その後魔力を一カ所に集めるのじゃ」
循環を止める。壁でも使ってせき止める感じかな。その後その壁にぶつかった魔力を一家所に集める感じで……右手に集めて
「今じゃっ主」
「【ライトボール】」
すつと先ほどよりも大きなボールが出て木に向かって行き……
木に当たった部分をえぐり取った。
「「「は?」」」
思わず俺とルカとミキの口から間抜けな声が漏れる。
ナツメは当然だとでも言うようにうなずいている。
【ライトボール】木をえぐってもなおそのまま、真っ直ぐ飛んでいった。
……ちなみにコウは先ほどからずっと蚊帳の外である。
「…………」
「…………」
「…………」
『リューヤはレベルが上がった』
『ナツメはレベルが上がった』
おいおいおい! どこまで進んでんだよ【ライトボール】、今レベル上がったよな? つまり【ライトボール】がモンスターに当たって倒したって事だよな。
俺はナツメを見る。
「…………」
「…………」
「うむ、光系統の攻撃魔法は撲滅には向かないが直線上の敵には強いのじゃ」
違いますナツメさん説明を求めての沈黙じゃないんですよ。
「なあナツメ」
「何じゃ主?」
「普通の威力の魔法の使い方を教えてくれ」
「……うむ、了解したのじゃ」
◇
「……ようやく威力がまともになってきたな」
「いやお兄ちゃん今のでも十分強いよ」
「これでもか」
「そうね普通は今の3分の2くらいよ」
「結構近づいた気がするんだが」
「トッププレイヤーなら一目で気付かれるよ」
「でも時間を取り過ぎたわね、あとは進みながらにしましょう」
「そうだね、コウ兄行くよー」
「ようやくか、待ちくたびれたぜ」
その後今度は全員で倒しながら行く予定だったのだが……
「ねえリューヤ」
「どうしたミキ?」
「お願いだからナツメちゃんを下がらせてくれない」
「ああそうだな、ナツメ俺たちより後方の敵を頼む」
ナツメのプレイヤースキルの存在を忘れていた。俺たちが攻撃する暇もなく全部倒されていく。パーティメンバーが倒すので経験値は入るのだが俺以外にアイテムのドロップはない。流石にそれは不味いのでナツメには俺たちが取り逃がした後方のモンスターを倒してもらうことにする。
ちなみに現在俺に入っている経験値は、倒したモンスターの経験値÷パーティ内のプレイヤー数÷(召喚獣の数+1)なので倒したモンスターの経験値が40だとするとコウ・ミキ・ルカには10ずつ経験値が入るが俺の場合ナツメがいるのでさらに2で割って5しか入っていない。召喚士のネックであるレベリングだがこれから召喚獣が増えればさらに大変になるだろう。まあその分召喚獣が増えるから楽になる可能性もあるが。
普通にパーティプレイをすると確実にレベル差が出るなこれは。
「そろそろボスエリアに着くと思うよ」
「そうか……なあルカ、さっきから俺たちを囲むように動いてるプレイヤーがいるんだがほっといて良いのか?」
「え、お兄ちゃんも分かるの?」
どうやらルカは気付いていたようだ。
「そりゃああれだけ周りをちょろちょろされればな」
「普通スキルでそういうの確認するんだけど……まあお兄ちゃんだしね」
「どんくらいいるんだ? 3人くらいなら俺一人で十分だぜ」
いや俺一人に負けるのに1度に三人も相手に出来るのか?
そんなことを考えていると
「お兄ちゃんは一人分の粋を確実に逸脱してるからね」
とルカに言われてしまった。
何も言ってないのにまさかエス……
「エスパーじゃなくて顔に出過ぎなだけだよ。あと3人かな」
「おいルカそれ違うぞ。少なくとも5……いや6人はいる」
「え……お兄ちゃんそんなことまで分かるの?」
「まあな、でもなんか変な感じがするんだよな。何かいきなり気配が薄くなったりする奴が何人かいる」
「うん、とりあえずお兄ちゃんが気配を感じ取れることは今はおいといて、それは多分【潜伏】スキルかな」
「【潜伏】スキルってたしか周りに気付かれにくくなったり【索敵】スキルに引っかからなくなるんだっけ?」
「うん、平原とか開けたところだとあんまり意味ないけどここみたいな遮蔽物が多い場所だと高い効果を発揮するスキルだよ」
「あいつらの狙いって何だと思う」
「そりゃあまあ」
「PKかな」
「プレイヤーキラー略してPK。他のプレイヤーを殺すこと等を目的としたプレイヤーとかプレイスタイルのことかな」
「なるほど……で今回俺たちがターゲットにされた訳か」
「そういうこと、どうしようか、ここで迎え撃つ? それとも気付かない振りして進む?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます