第11話 言いがかり
「おい、これはどういうことだ」
なんかまた揉め事の予感がするな。
「どうしたのかな?」
「俺がさっき持ってきた銅鉱石は確か1500Gだった筈だ。だが、今その女のは2000Gと言ったな。これはどういうことだ」
「ああさっき銅鉱石を売りに来た人か、あんたの持ってきた銅鉱石ね、品質悪すぎ。だけどこの銅鉱石は品質がすごくいい。これが値段の差だよ」
「何だと! つまり俺の持ってきた銅鉱石が粗悪品だとでもいうのか!」
「そこまでは言わないけどあんたの持ってきた銅鉱石より明らかにこの銅鉱石で作ったほうがいいものは出来るだろうね」
「……まあいい。次はこれだ。お前はこれを1階層で手に入れたと言ったな」
男は俺の持ってきた鉄鉱石を持ち上げてそう言ってきた。
「それが何か?」
「大方さっきワールドメッセージを出したリューヤとかいうやつを誑し込んでもらったんだろう」
「どういうことだ?」
「1階層からそんなに大量の鉄鉱石は出てこない、2階層なら分からないがな」
なるほど、つまりこいつは俺が他人から鉱石をもらって売っているって思っているっわけか。ていうか俺がリューヤなんだけどな。動画みてないのかな。
あ、アーデさんが後ろで笑いそうになるの堪えてる。
説明するのめんどくさいな。説明したらしたでまたイチャモン付けられそうだし。
「それで……仮にそうだとしてなにか問題でもあるのか?」
「俺はな、そう言う女が大嫌いなんだよ」
『プレイヤー"ヤオス"からPVPの申請が来ました。
受けますか?』
うん、意味が分からん。こいつは嫌いなやつが表れたら誰にでもPVPを仕掛けるのか?
「俺が勝ったらお前の全財産を渡せ」
なるほどそれが目的か。こいつは弱そうなやつにイチャモンつけてPVPを仕掛けて金を巻き上げるとかそう言うことをしているんだろう。一種のPKだな。
おそらく俺が初期装備な上にさっき大金を手に入れたことを知って仕掛けてきたんだろう。
「じゃあお前が負けたら俺に全財産払うんだな?」
「当たり前だ」
『申請が受理されました
これより特設フィールドへ移ります』
闘技場に移動する。
今日だけで3回来てるな。
男が……確かヤオスだっけ、斧を取り出す。
俺もメイスを取り出す。
「ハッ、メイスなんて使ってるのか。こりゃ楽勝だな」
ヤオスの口ぶりから察するとメイスは不遇武器なのだろうか。こんなに使いやすいのに。
カウントダウンが終わると同時に斧を振るってくる。
「オラァ【インパクトシュート】」
なんだろう、開幕即効でアーツを使うのって流行ってるのかな。
こんなまるでよけてくださいと言っているような攻撃をなぜ放つのだろう。
「【ハイジャンプ】」
俺は体術のアーツ【ハイジャンプ】で上に跳んでよける。
そして空中から思いっきりアーツを放つ。
「【パワークラッシュ】」
「おわっと」
ヤオスはバックステップでそれをよける。
ふむ、攻撃への切替が遅いな。モンスター相手なら使えるかもしれないけど、PVPには向かないな、
「チッ、なら」
今度はアーツを使わずに攻撃してきた。なるほど、みんながアーツを使う理由のひとつがわかったぞ。攻撃が遅いわ大振りすぎて無駄が多いわこれじゃあアーツを放ったほうがいくらかましだな。
せっかくだ刀の使い方でも考えるか。
「【クイックチェンジ】タイプ刀」
そういえばよくアニメや漫画なんかで相手の攻撃を受け流してたな。やってみるか。
受け流すように攻撃を受けていく。結構難しいな。
「テメエいつの間に武器なんか持ち替えやがった!」
「今頃気付いたのか。教える義理は無いな」
お、いまのはうまく出来たな。よし感覚を忘れないうちにもっと練習しておこう。
「はあ、はあ、はあ、テメエ俺をなめてんのか」
「おいおい、まだ練習の途中だったんだからやめないでくれよ。それにこの世界に息切れなんて無いだろ」
「テメエ全財産かけてること忘れてるんじゃないだろうな」
「ああ、その話な。だって負ける要素が無いじゃん。お前が隠し球を持っているって言うならまだしも、お前はただ自分より弱そうなプレイヤーに勝負を仕掛けて、金を巻き上げてるだけだろ。そんなやつに隠しだまがあるとは思えんしな。あ、あるなら使ってくれてかまわないぞ。そっちのほうがこっちも楽しめる」
「ち、チックショオオオオォォッ!!」
「もういいや、終わりだ」
ヤオスを真っ二つにした。
『YOU WIN』
元のフィールドに戻ったな。
「さて約束どおり全財産頂こうか」
「テメエ最後何しやがった!」
「は?」
「テメエ最後何もしてないのにいきなりHPがなくなったぞ。さてはチーターだな」
はあ、めんどくさい。見えなかっただけだろうに。挙句の果てにチーター呼ばわりとは。これはもう最後の手段に出るしかないな。
「えっとGMコールっと、これだな」
『ハイこちらMGコール対応受付ですいかがされましたか』
「PVPに負けた挙句、賭けの対価も払わずチーター呼ばわりするプレイヤーがいるんだが」
『わかりました。今そちらに対応AIを送りますので後はそちらにお願いします』
「分かりました」
そして数秒後、目の前が歪んだと思った瞬間そこが光りだし……
「はーい対応AIのシルでーす。よろしくね♪」
「なぜ幼女?」
そこには幼女が立っていた。
なんだろうか、ナツメといいこのシルさんといいココの運営は幼女が好きなのだろうか。
「呼んだのはあなたですね」
「あ、ああそうだ」
「内容は聞いています。まずはログを確認させていただきますよ。……ハイ確認しました。確かに賭けは設立していますね。次にチーターの件ですが、こちらも異常は無いですねチートは認められません。と言うわけでただの言いがかりですね。チャッチャと全部渡してください」
「何だと! お前一体何様のつもりだ!」
「対応AI様ですよ。めんどくさいんでこっちでやっちゃいましょう」
『リューヤは18万309Gを手に入れた』
『リューヤは鉄の斧を手に入れた』
『リューヤは皮鎧(上)を手に入れた』
『リューヤはβテスターの指輪を手に入れた』
『リューヤは960経験値を手に入れた』
「ん?」
『リューヤはレベルが上がった』
『リューヤはレベルが上がった』
『ナツメはレベルが上がった』
『ナツメはレベルが上がった』
「おい! ちょと待て」
「はい、なんですかリューヤさん」
「何で装備や経験値まで送られて来るんだ」
「ええ、なんでも"
そう言い残してシルさんは消えた。
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