第1章

第2話 ここ・・・どこ?



―――気付くと、『あたし』はここにいた。







「………どこ?ここ。」

小さな呟きが漏れ出る。

見渡す限り、草がどこまでも続いているように見える。そう、どこまでも・・・どこまでも。というか、むしろ自分以外何もいないように見える。

爽やかな風が前方から来て、草がそよぐ。波のように、ゆらゆらと穏やかに。

風は草だけでなく、少女のうるしのように黒く長い髪をも透いていく。

そしてそれは、来ている服でさえも。ワンピースだろうか、布地が白くて薄い。

それが気持ち良くて、『あたし』は少しだけ目を閉じた。目を閉じた時・・・耳から聞こえるのは、ただただ風と草の音ばかり。どうしてここにいるのかの疑問でさえも、この気持ち良い風で忘れそうなほどに、そこは静かだった。


―――出来ることなら、いつまでもここにいたいと・・・『あたし』はそう、思った。







(…まぁ、無理だろうけど)

ため息をつくと、『あたし』はもう一度周りを見てみる。けれど、ただただ周りは草ばかり。足下は、ふわふわと雲みたいな感触のする土。足を微かにかするのは、草の葉先。

もう少し、周りの先の方を見てみる。もしかすればどこかに村か森か、はたまた山が見えるのではないか・・・そう思った。

けれどやはり、見えるのは草だけ。

(村とか…ないのかな)

もう一度、『あたし』は周りを見続けた。

・・・けど、なにも見えなかった。


「…この先、どうすればいいの?」

また『あたし』の小さな呟きが零れる。けれど、その呟きは誰の耳にも届きそうにない。

当然だ、誰もここにいないのだから。

そう結論付けてまた、ため息をついた。



・・・とにかく、どうにかしてここから離れなければならない。まずは動かなければ。

小さく気合いをいれると、まずはどの方向に行くか・・・というのを考えた。

―――考えて考えて考えた結果、とりあえず前に進むことにした。しかしその前に、やるべきことをやっておくことにした。

今いる場所に、その辺の草をとって輪っかを作った。何本も何本も、草をとってはそれに編み込み、その印を大きく作っていく。

そしてついに大きくなったそれ(フラフープくらいの、大きな草の輪っかだ)を、別で作った草の土台の上くくりつけ、いつでも戻ってこられるようにと願いをかけた。

(…これで、大丈夫かな)

根を詰めていた緊張の糸をほどくと、『あたし』は歩き始めた。当初の予定通り、前へ前へと。



しかし、歩けど歩けどなにも景色は変わらなかった。どこまでもどこまでも、草と空が続いた。

最初はどうにかなると考えていた『あたし』も、果てしなく続くこの草原にうんざりしてきた。









―――だからかもしれない。

〟と考えたのは。

けれどここで確かに、『あたし』の運命さだめは―――大きく変わった。




突然、『あたし』の身体を金色の光が包みこんだ。

そして、驚く間もなく視界は白く染まった。

―――その光はすぐに消えたけど、すぐに変化が起こっているのがわかった。












―――だって。

『あたし』の背中に、金色に輝く翼が現れたのだから。

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