act.47 vs暗夜(あんや)+清夜
「マユ姉さま。ベルを持っているのはあの黒いやつですか?」
『ええそうよ。もともと清夜型の一機だったんだけど、搭載しているOSが未知のコンピューターウィルスに汚染されて人格を持ったみたいね。その人格が自己改造して元々の清夜型とは別物になっているわ』
「別物?」
『攻撃力、防御力ともかなり上昇しているみたいね。周りにいる清夜型もそのウィルスが感染していると思う。気を付けて』
「わかりました。ヒナ子、ここで待っていろ」
ヒナ子の背を飛び下り、ララが走っていく。約1000mを一気に駆け清夜一機の頭部を蹴飛ばす。清夜は仰向けに倒れ、その胸を上空から黒猫がビーム砲で貫く。
その時、ララと暗夜の目が合った。まだ半数以上残っていた清夜型は戦闘を止め後方へと下がっていった。ララも手で合図しとその中にいる暗夜と向かい合う。
「デュエル開始前から無作法な奴だ」
「フフフ。清夜が既に6機も屠られてます。貴方たちは只者ではありませんね」
「まあな。ここにいる連中はほとんどが元“代理”だ。皆腕が立つ」
「なるほど。ベルの反応ばかりに気を取られていたせいで、その他の勢力には無頓着になっていました。これは反省点です」
「ベル持ちを潰していたのか」
「ええそうです。一人を大勢で囲んでね」
「なるほど」
「汚いと罵らないので?」
「ふん。戦争の基本だ」
「さすがは帝国最強と言われている姫様ですね。どこの帝国かは存じませんが」
「知らずともよい。貴様は潰す」
「ではお相手仕ります」
「只今デュエル承認されました。プリンセス・フーダニット陣営の代理、ララ・アルマ・バーンスタイン様とリンド陣営の代理、暗夜様のデュエルを開始します。5……4……3……2……1……開始です」
「周りの清夜をけしかけないのか?」
「ええ、その場合の戦力差はこちらが不利。一対一で戦う方が有利だと判断します。貴方の取り巻きと清夜を比較しての結論ですよ」
「貴様は本当に無人機なのか?」
「もちろんです。脆弱な人間等乗せているだけ無駄ですよ」
暗夜の抱えているアサルトライフルに付属しているグレネードランチャーから一発の砲弾が発射された。その砲弾は円筒形でララの足元へと転がっていく。そして濃い紫色の煙を猛烈に吐きしていく。
「毒ガスか」
「サリンを噴霧しています。色はわざわざ目立つようにしてありますね。余計なお世話ですけれども。ところでララ姫、ガスマスクは所持していらっしゃいますかな?」
「いらん心配をするな」
濃い紫の煙に呑み込まれたように見えたララは風上にいたアカンサス・クロウの肩の上にいた。
「ミハル。サリンガスだ。中和剤を撒け」
「所持していません。サリンガスは熱に弱いので熱処理します」
「分かった。任せる」
ミハルと黒猫は毒ガス弾に対してビーム砲で対処する。旭も炎を出して毒ガスを中和していく。
「余計な事を。清夜させるな」
周囲の清夜8機が襲い掛かってくる。光剣を抜いたミハルと実剣を抜刀した旭に次々と倒されていく。
50㎜アサルトライフルを構えていた暗夜はララを見失った。
「何処に行った? 見失うなど信じられない」
「毒ガスはもう尽きたのか」
ララは暗夜の頭の上にしゃがんでいた。
「どうでしょうか? まだ数発持っていると思いませんか?」
「ふん。持っていれば最初に使っているだろう」
「やはりご存知でしたか。ではこういうのはどうでしょうか?」
暗夜の背に装着された翼状ブースターが開き噴射を始めた。暗夜はララをその頭に乗せたまま飛翔を始める。
「ララ姫、あなたは地上では相当素早い動きをする。しかし、空中ではどうですかな? まさか、高所恐怖症とか、そんなことはありませんよね」
一気に2000m上昇した暗夜、その周囲には黒猫の乗るアカンサス・シンとフィーレ姫の乗るヴィオレット・ツァオバラーが接近してきていた。
「ララ姫」
「ララ様」
必死に呼びかけてくる黒猫とフィーレ姫。しかしララは余裕で離れろと合図をする。
『ララさん。黒猫さんからどういう事ですかって質問よ』
「特大のアレを放ちます。防御シールドを最大にして離れるように指示してください。姉さま」
『分かったわ。アレね』
「はい」
黒猫とフィーレ姫はララのそばから離れていく。
「ララ姫。諦められたのですかな。このままだと打つ手はないのではありませんか」
「違う。巻き添えを食わせないよう下がらせた。貴様、覚悟しとけよ」
「何をするつもりですか!」
ララは全身に紫色の電光をまとう。その電光はさらに光度を上げ、そして暗夜をも包み込んだ。
「喰らえ、超電撃EMPだ。はああああ!!」
ララと暗夜を包んでいた光が極大まで光度を上げ眩い閃光となる。その衝撃と電磁波は周囲に拡散された。
暗夜はそのまま地上へと墜落し、爆散した。残っていた清夜型も全て沈黙していた。ララはというと、黒猫の乗るアカンサス・シンの肩の上に座っていた。
「黒猫、ゆっくりと降りろよ」
「わかりました。ゆっくりと降下します。ところでララ様。高い場所は苦手なのですか?」
「余計なことは聞かんでいい。馬鹿者」
「失礼しました」
「ふん」
このやり取りでララの苦手なものが一つ明らかになったのだが、本人はバレていないと思い込んでいた。
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