act.41 玲香合流☆vsカルト・イレザイン&ガイスト・トート

 勇者ロボットの頭部を模したクルックス研究所。その上空に待機している黒猫の操縦するアカンサス・シン。そのグレーの塗装は薄曇りの空に溶け込んで視認するのが困難となる。

 そのアカンサス・シンに銀色の機体が接近し、空中で静止した。

「待たせたね。ボクはこっちに合流することにしたよ」

「玲香か。びっくりさせるなよ。光剣抜きそうになったじゃないか」

「驚いた? えへへへ」

「ん。ロックオンされてる。まずいぞ」

「あれね」

 200m先で、紫色で細身、凹凸のないのっぺりとした形状の人型兵器がアサルトライフルを構えていた。そして、その砲口が火を噴く。

 黒猫は瞬間的に高度を取り姿を消す。地上で姿を消していたアカンサス・クロウは研究所とその人型兵器アンノウンの間に実体化する。玲香はその人型兵器アンノウンの攻撃をあえて盾で受けながらそいつに向かって突っ込んでいく。

「どりゃぁぁ」

 気合を入れて盾ごと突進する玲香のバリオン。相手は細身で軽量であるからか、あえなく後方へと吹き飛ばされる。

「いきなり撃ってくるとは卑怯だね。ボクは起動攻撃軍准尉の遠山玲香だ。この機体はトリプルDバリオン。お前何者!」

「こんな玩具では役に立たないか。ふふふ」

 そう言ってアサルトライフルを投げ捨てて大鎌を構える。凹凸のない球面状の頭部には眼球に相当する部分は見当たらない。

「私はカルト・イレザイン。この機体はサイボーグである。名はガイスト・トート。ここにベルの反応があったのだが……、ベルは誰が持っている」

「ベルの持ち主は研究所の中さ。ララ姫と戦いたいならボクを倒すことだね」

「研究所の中か。やはりクルックスは裏切ったのか」

「裏切ったんじゃないわ。自分の仕事をされているだけ。次期社長を決めるイベントに、こんなにも大勢の人を巻き込む方が不条理だわ」

 話に割り込んできたのはミハル中尉だった。彼女のアカンサス・クロウはビームライフルを構えている。

「不条理か、ふん。戦争とは不条理なものだ。ベル持ちのララ姫とやらを倒す為にはお前たちを倒すしかない訳だな」

「ボクとそこのライムグリーン。上にいるグレーの計3機が相手だけどやる気あるの?」

「相手にとって不足はない。お前たちはソリティアの邪魔をしている連中の一味なのだろう。ここで排除する方が得策だというものだ」

「いい心がけだね」

 玲香が上段から一気に打ち込む。しかし、ガイスト・トートはそれを苦も無く受けた。その状態のまま右脚の蹴りが入ってくるし、同時に左手で短刀を抜き切り付けてくる。玲香は短刀は盾で防いだものの右脚の蹴りはまともに受けてしまった。ぐらつくバリオンだが玲香はすぐに立て直す。しかし、その時大鎌の一撃がバリオンを襲う。玲香はそれを盾で受けるが盾は大鎌に貫かれ、バリオンの左腕も同時に貫かれた。

「くそう。なんて動きをするんだ。まるで三人同時に相手をしているみたいだ」

 ガイスト・トートの特異な動き。それはサイボーグ化されたが故の特異な動きであった。複数の脳が個別に手足を動かし攻撃してくるのだ。手足が別々に動くため攻撃の威力は低い。しかし、これは欠点ではなくガイスト・トートの特殊能力を発揮するための布石なのだ。

 のっぺりとした球形の頭部にカルト・イレザインの顔が浮かび上がってくる。玲香はその顔を見た瞬間に身動きが取れなくなってしまった。

「何これ。体が動かない」

「ふふふ。術中に嵌ったな。もう君は私に逆らえない。いいね。もう逆らえないんだ」

「そんなことあるもんか。ボクは絶対に負けたりしない」

「その強がりがいつまで続くのかな」

 カルト・イレザインは舌を出しベロりと舐めるまねをする。しかし、その顔はバリオンのコクピット内では巨大化しており、玲香の顔はカルト・イレザインに嘗め回されていた。細身で色白。頬がこけた青年の顔であったが、それは同時に深い闇を湛えた老人のようでもあった。

「やめろ。舐めるな。気持ち悪い!!」

「そうか。悪かったな。では気持ちよくしてやろう。ふふふふふ」

 その時の玲香の意識では、何故か自分が全裸になり、カルト・イレザインの手に全身をまさぐられていた。体中を舐めまわされ、そして大事なところへも手が伸びていく。圧倒的な不快感はいつしか性感へと変化していき、それは我慢のしようがない強い性感へとなる。そして、とうとう玲香は絶頂を迎えてしまった。

「あああああああ。やだ、こんな時に、イキたくないのに、だめ、イッちゃう~♡」

 失神してしまいそうな巨大な快楽に押しつぶされた玲香だったが、そのバリオンの両腕をミハルと黒猫が切り落としていた。

「ミハル中尉。この娘をお願いします」

「わかったわ」

 ライムグリーンのアカンサス・クロウがバリオンを抱え後退する。

「あれはしばらく正気には戻らんよ。貴様も私の虜にしてやろう」

「やってみな。俺は男には興味がないんでね」

 光剣を抜いたアカンサス・シンの前に一辺が1mほどの正八面体のドローンが八つ現れた。その銀色に輝くドローンはゆらゆらを浮遊しながら一斉にビームを放つ。射線の交差した場所にはすでにアカンサス・シン姿はなく、ガイスト・トートの側面から切りつける。ガイスト・トートはその剣撃を巧みに避けるのだが左手首を切られてしまう。再び黒猫の周りにドローンが集まってくるがアカンサス・クロウのビーム砲がそのドローンを薙ぎ払う。黒猫はとっさに後退した。

「ミハル中尉。危ないですよ。俺に当たったらどうするんですか?」

「あなたならかわせるって信じてるの(´∀`*)ε` )チュッ」

「そういうの結構ですから。おわっと」

 残り4機になったドローンのビーム砲をかわしながら光剣で斬り落としていく黒猫。そして、ガイスト・トートは一気にアカンサス・クロウとの間合いを詰め大鎌で斬りかかってきた。

 しかし、残像を残してアカンサス・クロウは消えていた。

「どこだ。どこに行った」

「ここよ。あなたの真上」

 直上からミハルが放ったビームはガイスト・トートの脳天から足元までを貫き溶解させた。ぐにゃりと潰れそして爆発炎上する。

「やりましたね」

「ええ。十年早いんだよって感じですよ。まあ、玲香さんがあの機体の特性を暴いてくれたのも大きいですけどね」

「そうそう。玲香は?」

「コウ少尉。様子を見てあげたら」

「わかりました」

 黒猫は両腕を失ったバリオンに駆け寄り、コクピットを開く。

 そしていきなり玲香に抱きつかれキスを浴びせられた。

「はあ。もうだめ。ね。黒猫さん。抱いてちょうだい」

「ミハル中尉。嵌めましたね」

「そんなこと分かりきってるじゃないの」

「俺に押し付けて! これどうするんですか」

「皆には黙っててあげるから。美味しくいただいちゃいなさいよ」

「そんなこと出来ませんって。うわ服を脱がすな。あそこに触るな」

「ねえねえ。黒猫さん♡」

「あー!! ごめんなさい」


 バキ!!


 黒猫に殴られて意識を失った玲香だったが、その頬の腫れについて黒猫は後々とっちめられることになるのであった。


※カルト・イレザインの精神破壊・発狂のさせ方ですが、接触した相手に幻影を見せて狂わせることとしました。作中では性感で狂わせていますが、全身にムカデを這わせたり、刃物で切り刻んだり、恋人に首を絞められたり、相手によっていろいろやるという感じ。それをやりながら愉悦に浸る変態能力者がカルト・イレザインですね。本人の意思がどれだけ強くても数分で崩壊します。また、周囲を防御するドローンはどこかで見たことがあると思うのですが、あの名作アニメ「〇ヴァン〇リオン」に出てくるあの使徒を思いっきり小さくしたものです。武装もビーム砲に強化してあります。ガイスト・トートは全身のっぺりとしたデザインとしました。これはファフナーに出てくるアレみたいですねww。有原先生。色々改変しております。失礼しました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る