act.9 ミミズとヒナ子とvsアルゴル一般兵士型におまけの暗殺用自動人形
ララ達一行は再び草原を歩いていた。迷彩服を着た金髪少女ララとソフィア。そして巨大な黄色い羽毛玉ヒナ子だった。
ララが勝手に名付けたヒナ子であったが、当人(鳥)はご機嫌である。ララに懐き片時も離れようとはしない。しかし、食欲は旺盛であった。
ララは手持ちの戦闘用糧食を砕いて与えているのだが、そんなカ〇リーメ〇トのような物で満たされるはずもない。10食分(2本で一食)の糧食をあっという間に平らげ、さらに何か食わせろと要求してくるヒナ子である。
「ぴよ」
「お前な、私が一本食べている間に19本も食べたのだぞ。まだ欲しがるのか?」
「ぴーよ?」
「さっきの現地人を切り刻んで餌にすればよかったかな?」
「ララ様。貴重な資金を提供してくれた方々ですよ。そのような扱いはさすがにお気の毒です」
そう言ってララをたしなめるのは、暗殺用自動人形のソフィアである。
「ぴよ」
ヒナ子も同意しているようだ。ロリコン親父など食いたくもないと言っているに違いない。ちなみに、例の三人組は貧乏だったのか、三人合わせて6万しか持っていなかった。財布を漁ったのはもちろんソフィアだった。
これで一行の所持金は30万ほどになる。
10㎞程先に城が見えてきた。複数の原色を塗りたくった派手でケバケバしい外観の城、美術城イクリプスである。
今、ララ達は草原の中でやや小高い丘に陣取っている。
そこから城とその周辺が一望できる。城の壁面や城壁は赤や青、黄等の原色で彩られている。正気の色使いではない。また、城の周辺には無数のテントや小屋が立ち並びスラム街を形成していた。
もう日が暮れようとしている。西の空は段々とその赤みを増していく。
「今夜は此処で野営しよう。暗くなってからあの怪しい場所へは近づかない方が良いと思う」
ララの言葉にソフィアが頷く。
「賢明な判断だと思います。しかし、丘の上は目立ちますが」
「目立った方が良い。資金を提供してくれるヤツが来ればいいな。代理に出会えればなお良い」
「なるほど。テントの準備をいたしましょうか?」
「頼む。食事の準備もな」
ソフィアがテント設営を始めた。テントと言ってもララ一人用の小さなものだ。
ヒナ子はその辺の草地をつついている。バッタ等の昆虫類を啄んでいるようだ。
「今夜はその場所で野営ですか?」
マユから通信が入った。
「そのつもりですが何か?」
「その場所に近づいてくる物体を確認しました」
「物体ですか?」
「はい。人ではありません。4体です」
「代理では?」
「違います」
「今、視認しました。アレはアルマ帝国軍の軍服を着ています。男女2名ずつ計4名です」
「ララさん。敵です」
「分かりました」
人ではない何かが4体。しかもアルマ帝国の軍服を着ている。
こんな場所で正規軍の人員がララを訪ねてくるはずがない。怪しすぎるその4体はゆっくりと丘を登って来る。
「ララ皇女殿下。ご機嫌うるわしく存じます」
「この度の遠征まことにご苦労様です」
もっともらしい世辞を述べる男に、ララはサバイバルナイフを投げる。それは見事に額に刺さるのだが、男は何事もなかったかのようにそのナイフを抜き地面に放り投げた。
「ララ様。挨拶の途中での狼藉、ちと御戯れが過ぎますぞ」
「我々の話をきいて……」
話の途中でララは開いた右手の平を突き出した。同時にその男は後方に吹き飛ばされ、バラバラになった。いや、その体を構成していた環形動物が一斉に離散したのだ。
ミミズのような環形動物の集合体。アルゴル族であった。
「ぴよよ!」
その光景を見て、即反応したのがヒナ子であった。次々とミミズをついばみ飲みこんでいく。
女二人の両腕が消失し、極薄の細長いリボンとなってララに襲い掛かる。しかし、ララが手のひらから発する衝撃波を受け後方にすっ飛んでいく。女の姿から30センチ程度の人形に変化し動かなくなった。
「暗殺人形のキャトルですね。アルゴル族との組み合わせで何を企んでいるのでしょうか?」
「大方私を人質にでもするつもりなのでしょう」
ララとマユが交信している間にもう一人の男の姿が見えなくなっている。集合体から離散し草原に潜り込んでいるようだった。
その姿を隠しているアルゴルはララの足元から体中に巻き付いて来た。ララ全身に巻き付き、口周辺をまさぐりって体内へ入ろうとしている。その瞬間、ララの前身から眩しい稲妻が発せられた。ミミズたちはララの強烈な放電を浴び絶命していた。
「姉様。天然記念物をやっちゃいましたが、何か罪に問われる事がありますか?」
「問題はありません。そもそも、その地でララさんの行為を罰する法はない。勝手に自滅しただけでしょう」
ララは煙を上げるミミズを掴み匂いを嗅ぐ。
「これは、いい感じに焼けてるぞ?ミディアムレア?な感じかな。焼肉の匂い♡」「ララさん。それ食べるのですか?」
「いえ、ヒナ子の餌にちょうどいいかと。風呂敷あったかな。生は夕食。焼けてるのは朝食用にしよう」
ヒナ子は一人分の生アルゴルを食べつくしたようで、満足そうにゲップをした。
「ぴよ」
嬉しそうである。
そうこうしているうちに日が暮れた。ヒナ子は大あくびをしてから眠ってしまった。明日の食事は十分確保できてるので安心したのだろうか。
固形燃料のコンロで湯を沸かし、ご飯とレトルトのカレーを温める。もちろん、ソフィアがこなしている。この人形は重量物を扱えないこと以外は完璧だった。
ソフィアが皿にご飯を盛りカレーをかける。レトルトではあるが、香ばしいカレーの匂いが周囲に漂っている。
「ララ様。さあどうぞ。お召し上がりください」
ララがカレーを受け取り、さあ食べようかという時だった。
「いい匂いですね」
その一言でララとソフィアが凍り付く。そこに立っていたのはチェックのシャツにジーンズ姿の青年だった。
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