第7話 白い虎の子

 その日の午後、イゴーの炭焼き小屋に数名の兵士たちがやってきたが小屋はもぬけの空だった。イゴーは食料を調達すると密かに街を離れた。そして、何日かの後に、谷あいの小さな村の一軒家にたどり着いた。

「お帰りなさい、あなた。」

 一人の女性が彼を出迎えた。かたわらには、小さな少女がいる。

「ほら、パパですよ。」

 女性は、スカートの後ろに隠れる少女にやさしく告げた。

「ハハハ、チルト。パパを忘れちゃったか?」

 イゴーはしゃがみこみ両手を広げた。さっきまで怯えていた少女は、一目散にその中へ飛び込んだ。

「チルトは、パパのひげが怖かったのよ。」

 風呂から上がり、髪を切り伸びきったひげを添ったイゴーに女性が笑ながら言った。

「この子を預かった。」

 背中にしょって帰った袋の中から、白い虎の子を出した。

「子猫?うちで飼うの?」

 少女がうれしそうに覗き込んだ。

「虎の子供だよ。怪我をしていてね、大きくなるまでうちで飼うことになったんだ。」

 イゴーは少女に微笑みながら伝えた。それは、やさしい、父親の目だった。イゴーは時々ふらっと出かけては数日から数ヶ月の間、家をあけることがあったので、虎の子供は少女のよい遊び相手となった。

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