第6話 運命
虎の子は炭焼きのイゴーに預けた。追われる身のゼノとカナタにはミルクや肉の調達は困難だからだ。二人は朝霧にまぎれて隣の国へ入った。
「ここからは、エストラットだ。我々のようなシラコから来た人間をきらっている者もいるから気をつけろ。」
ゼノは近くの街を目指した。
「旦那。旅には馬がお勧めですよ。どうです、こいつなんて。足も速いし、丈夫だ。何かの縁だ。金貨1枚でいいですよ。」
商売人の男が栗毛の馬を売り込みに近づいてきた。
「それはだめだ。足に怪我をしているな。それに歯も磨り減っている。おそらくそう長くはないだろう。そっちの小さいのなら買おう。」
ゼノの答えに商人は首を激しく横に振った。
「こいつは子馬でさあ。まだ乗れやしませんや。それに子馬は貴族が高く買ってくれる。旅の旦那が買えるような値段じゃねえ。」
商売人は見切りをつけたのか足早に立ち去ろうと馬たちをせかせた。
「そうかな。その子馬は貴族に売れないだろう。荷物で隠しちゃいるが後ろ足にひどい模様がある。」
「ちっ!ばれてたかい。しかし、安売りはしねえよ。」
商売人は強気に言い放った。
「金貨30枚なら文句はないだろう。もらっていくぞ。」
ゼノは強引に商人に金貨を渡すと子馬の手綱を取った。
「いやあ、御見それしました。もしや、どこかの貴族様のお忍びで?まいどありい。」
馬商人は市場の中に消えた。
「子馬を買ってどうするんです。」
カナタはゼノに質問した。
「この子が道案内をしてくれる。」
そういうとゼノは薄茶色の子馬の手綱を放した。子馬は二、三度首を大きく縦に振るとそのまま歩き出した。
いくつかの砂漠を超え、小さな谷の湖に着いた。そして子馬は止まった。
「この子の模様は選ばれし部族の証だ。その中にお前と同じ選ばれし者がいる。」
子馬が一鳴きすると、どこからともなく馬たちが集まってきた。
かれらは互いに顔をこすり合わせ無事を喜んでいるようだった。
その中に一頭の白馬がいた。後ろ足には子馬のものとは明らかに異なる模様がある。
それは普段カナタが額宛で隠している目のような模様によく似ていた。
白馬は小さく一鳴きした。
カナタにはそれは
「ようこそ。」
と聞こえた。
「彼がお前と同じ8つの動物だ。」
ゼノはカナタに小声で告げた。
「8つの動物は互いに意思が疎通できる。お前たちは互いに引き合う運命だ。全員がそろったとき事は起こる。」
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