第5話 昇格試験

二人が冒険者を初めて一ヶ月が経とうとした頃のことである。

アルネの森の一件以来、モンスターとの戦闘に慣れるまであまり強い相手が出るところは避けたほうがいいということで、主にDランクのモンスター討伐を行っていた。


二人が冒険者連合に行くと、昇級試験の案内が掲示されていた。

D→Cランクの昇級試験も掲示されていた。本来、昇級試験を受ける条件としてそのクラスを1年以上経験する必要がある。従って、ソーマたちに試験を受ける権利がない。

しかし、ある条件を満たせば試験の受験権利を得ることができる。それは、昇格先のランクのモンスターを討伐した経験がある。ということだ。

以前、ソーマとアリサは、巨大蜘蛛を討伐している。従って、今回の昇格試験の受験権利を得ていることになる。


二人は試験案内に目を通す。Cランクになれば今以上の報酬を得ることができる以来の受注が可能である以上、このようなチャンスは逃すべきではないのだ。

今回の昇格試験の実施日は明後日。場所はアルネの森。討伐対象はマンドラゴラであった。

マンドラゴラはCランクの中では弱い部類に入るものの、呪い攻撃を主体とする厄介なモンスターである。

また、その特性から、非常に見つけにくいモンスターでもある。


試験では、冒険者としての戦闘能力と探索能力を同時に試すようである。

二人は、受付に行き受験登録を行った。

受付のお姉さんには、


「あなたたち、最初はどうなることかと思ったけど、Dランクの中でもなかなか難しい依頼もこなすし、驚いたわ。でも油断しちゃダメよ。しっかり対象の特性を見極めて」


と言われた。


「アドバイス、ありがとうございます」


「あなたたちには期待してるからね!」


こうしてソーマたちは再びアルネの森につながるリーフェ村に向かうのだった。


リーフェ村ではまたあの宿に泊まった。宿のおばちゃんとアリサが非常に仲良くなっていた。


「お嬢ちゃん、今回こそ一緒の部屋にするかい?」


「えっ…あっ…おっおねg…」

「いや、大丈夫です」


ソーマがあっさり否定する。


「なんだい、女心の分からない子だねぇ」


おばちゃんに怒られるのであった。


試験当日、ソーマたちの他にもいくつかのパーティーが試験を受けに来ていた。


「ねえソーマ、あれ」


アリサの視線の先には獣人族の少女がいた。


「獣人族か、珍しいな」


獣人族は、本来人間とは棲み処を分かち、交流はあまり深くない。時々見かけても、それは誘拐などで無理やり連れてこられて奴隷として扱われている場合が多い。

冒険者として登録されている獣人族は非常に珍しいのだ。


その少女は狐の獣人であり、東の島国で着られているといわれる「巫女姿」という服装をしていた。獣人というだけで珍しいのに、服装が相まって受験生の中でも非常に目立っていた。

監督官が試験についての説明をした。期限は3日間。マンドラゴラの討伐が課題である。

こうして試験が開始されたのである。


ソーマは探索魔法を発動しマンドラゴラの気配を探った、やはり、森の奥深くに生息しているようだ。


ソーマたちはそこを目指して歩を進めた。他の多くのパーティー同様にマンドラゴラの生息域と言われる場所を目指していた。

獣人の少女のパーティーがソーマの視界に入った。男4人と獣人の少女一人。獣人の少女との間に妙な距離感があることが気になった。

他のパーティーについての詮索はよそう。そう思いソーマは探索に集中するのだった。


探索魔法の効果もあり、夕方にはマンドラゴラの生息地にたどり着いた。

マンドラゴラは普段地面に埋まっている引っこ抜いた瞬間に呪い攻撃の「叫び」

を行ってくる。


抗呪魔法をかけソーマが引っこ抜きアリサがぶった切るそういう作戦であった。

計画どおりソーマが引っこ抜きアリサがぶった切ったその時であった。周りの地面の様子がおかしい。

そう思ったときには手遅れであった。周りの地面から一斉にマンドラゴラが飛び出してきた。


マンドラゴラは普段群生はしない、この展開はソーマも予想していなかった。

マンドラゴラが一斉に死の叫びを行う。咄嗟に抗呪魔法を強化したがマンドラゴラの一斉攻撃に弱い所を突かれた。アリサが呪いを受けた。


「アリサ!!」


「大丈夫!」


アリサはツバイヘンダーを用い、マンドラゴラを一斉に薙ぎ払った。

しかし、呪いの効果は消えない。


「アリサ大丈夫か?」


「何のこれしき…くっ!」


言葉とは裏腹に額に脂汗を浮かべ、苦悶の表情を見せる。


「とにかく、ヒーラーに見てもらおう」


呪い系の攻撃は回復魔法では治せない。せめて抗呪魔法で進行を遅くするのが関の山である。

リーフェ村の病院に一刻も早く連れて行かなければならない。マンドラゴラをもって帰還しようとしたその時。


「助けてください!!」


そこにはスタート地点で見た獣人の少女がいた。

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