ん!? 日の出かも
二人共、首から下が泥だらけになった(泣)
「大丈夫か。怪我は無えか?」
「うん、大丈夫」
立ち上がろうとして、あたしは泥に埋まった何かを踏み、再び転んだ。
何だろう、と泥から少し露出したそれを引っ張り出してみると、それは……二〇cm程の
「あった……。あったよ~っ!!」
あたしはそれを雄治に見せた。雄治は笑い出した。
「おうおう。そういうことかよ」
ふたりは泥に腰を下ろしたまま、しばらく手や足でゴソゴソとそこら中を探る。程なく残りの三本も発見した。
「おっしゃ。回収成功♪」
傍らの加工されたような岩を掴みつつ、何とか立ち上がった。
雄治はポケットからスマートフォンを取り出し、下で待機している敬太郎君に電話をかける。
「済まんけど、
と、ヘルプを要請。
あたし達が草を刈って通り道を作ってるから入り易いだろうけれど、それでも到着まで五分はかかるだろうね。――
それまでに上へ登ろう……と視線を上に向け、気付いた。空からの光は、丁度あたし達が今立っているこの位置へ射してるじゃん。
「なるほどね。こういうことか……。確かに全て上手くいったわ」
「そうやなあ。泥だらけになっしもたけど」
ふたり、互いの顔を見合わせつつ、笑った。
「そう言えば、今掴んじょるこン岩、石棺じゃらせんどかい?」
「あ、そうかも」
「一昨日、日高氏の本を読んじょって、記述を見つけたとよ。工事で墳丘墓が崩されっせ、石棺が露出しちょったち書かれちょった。さっきずっと通って来たルートは、多分葺石で覆われちょって、足場が良かったっじゃろな。で、この辺は昔工事で掘り返されちょる場所で、雨で泥濘んで滑った……と」
「なるほど」
つまり、空からの光は丁度墳丘墓の、石棺の位置を射していた。あたし達は光に導かれ、さらに都合よく足を滑らせて
いや、でもまだ安心は出来ない。あたし達は無事、ここから脱出出来るのか!? 足元が完全に泥濘んでいるため、登ろうとしてもズルズル滑る。かなりヤバい(焦)
手こずっているうちに、頭上から、
「おい、大丈夫か?」
と頭上から声がかかった。敬太郎君と智ちゃんが、あたし達を覗き込んでいた。
「ああ大丈夫や。ブツも回収した。おぅ、その辺足場が
雄治が上の二人に声をかける。
……と、その時急に、空が明るくなってきた。
「ん!? 日の出かも」
あたしが声を上げたその瞬間。――
突如、敬太郎君と智ちゃんの傍らに、卑弥呼様が姿を現した。
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