いや、あれは紗耶香が気付いたっちゃっど

 智ちゃんって、何者なんだろう。……

 ほんわかした可愛らしいお嬢様、って感じなんだけど、実はちょっとした人脈を持ち行動力もスゴい。「紗耶香ミスコン・プロジェクト」が、あたし達の想像を超えるレベルで着々と進んでいるの。


 智ちゃんは先輩達に取材して、例年のミスコンの段取りを調査し対策を練った。

 同時進行で、衣装の類いが全て揃った。水着審査用のビキニも、あたしと智ちゃん、それにプロジェクトチームの京子とゆうかの四人で選びに行き、買って来た。さらに演出の教材となりそうな動画も、色々と揃えてくれた。


「都会の有名大学だと、スポンサーを募ってミスコン費用を確保するんだってさ。で、機材なんかもスゴいのを整えて大々的にやるらしいの~。でもうちは田舎のショボい大学だから、全然レベルが違うわけよ。市のお祭りとか海水浴場のイベントでやるミスコンみたいな、小ぢんまりした感じね。照明も大型プロジェクターも無いの」


「ふ~ん。まあ、そうだよねえ」

「その辺も考えて、衣装のデザインとか配色を決めたんだよ~♪」

「なるほど」

「本番が快晴なら、こっちのドレスね。曇り空なら、こっち」

 スゴい。そこまで徹底的にやるとは、想像していなかったよ。――


 夏休み最後の週末。あたしはバイトのお休みを貰った。

 いつもの四人が雄治のアパートに集まり、智ちゃんが教材としてピックアップしたミスコン動画を視聴した。そしてアパート前の駐車スペースで、智ちゃん指導のもとウォーキングの練習。


「うん、カンペキやろ。カッコいいよ」

「そうだね。すっごくイイ感じだよ。でも本番まで、動画を見ながらちゃんと練習を続けてね~」

 三人のOKが出たところで、再び室内に戻り質疑応答の研究。智ちゃんが取材した例年の質疑応答を元に、受け答えをどうするか、四人で協議した。


 夕方、ひと通りの作業が終わると、いつものように酒盛りを始める。


 今日のメニューは焼き肉。費用は、宝くじ成金女子大生のあたしが全額出した。

 雄治ご自慢のホットプレートで肉や野菜を焼き始めると、彼の七畳ワンルームはロフトの隅々にいたるまで、たちまちケモノ臭い煙が充満した。でも雄治自身のリクエストだもんね。あたしゃ知~らない、っと(笑)


「それじゃあ、Webサイト作業が一応片付いたのと、紗耶香のミスコン優勝を祈って、乾杯っ」

 いつものように敬太郎君が、乾杯の音頭を取った。四人は百均ジョッキを掲げ、ビールをグイっと飲む。うん、喉ごし最高♪


「それにしてもマジで、卑弥呼様情報には驚いたなあ。垂仁天皇イクメイリビコは想像しちょったけど、崇神天皇ミマキイリヒコは全く気付かんかったわ。そこに気付けば、卑弥呼ミマツヒメ臺与トヨスキイリビメにも気付いたっちゃろけどなあ」

 と、敬太郎君がライスにお肉をワンバウンドさせつつ、言う。ちなみにお肉は、四人分で二.五kg用意した(笑)


「いや、崇神天皇ミマキイリヒコは紗耶香が気付いたっじゃっど。そン後紗耶香が身を張って(笑)卑弥呼様を呼び出して、ウラを取った」

「そうか。やっぱ紗耶香は天才やな」


 いやいやいや。あたしが酒盛り費用を出したからって、そんなにお世辞言わなくても良いんだってば。――

 ってか、身を張って……ってのは何よ!!(汗)

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