宮崎邪馬台国ン重要拠点やったんじゃねえやろか
もっと沢山、そして詳しくこの地の遺跡を調べてみたかったが、時間がない。
あたし達は適当なところで切り上げ、次の目的地へと向かった。県道を南下し熊本市街地を抜ける。行き先は宇土半島の根本付近にある
今回、高速道路は使わない方針なんだよね。そんな無駄金遣うくらいなら一泊増やそう、と話し合っている。その方が落ち着いて運転出来るだろうし、スケジュール的に無理せずゆっくりできるし。――
あ、その分雄治とたっぷり、その……イチャイチャしようとか、そんなことは全く全然ちっとも考えてないからね(汗) いやいやホントホント、ウソじゃないってば(焦)
まあしかし、本当に楽しいよ。お互いが好む音楽を聴きつつ、快晴の九州各地をのんびりドライブ。お互い興味関心を持つ歴史談義に花が咲く。このずんぐりむっくり男と付き合い始めて、良かったと思う。ちょっと智ちゃんの策略にハマった感じがしないでもないけど(笑)
熊本市街地の混雑を漸く抜け、さらに先の塚原古墳群に到着したのは、午後五時直前だった。幸い八月初旬なので、陽が落ちるまでにまだ二時間程余裕がある。
熊本県最大級の古墳群らしい。
高速道路を通す工事中に発見された。熱心な住民運動の後押しもあり大規模保存が決まったため、何と高速道路は古墳群の地下を通っている。なんかスゴい。――
時間の関係で、先に歴史民俗資料館を覗いてみた。ざっと眺めるが、やはりめぼしい展示品は少ない。
ふたりは資料館閉館前に、外へ出た。広い古墳群を見て回る。あ、広いと言っても生目古墳群くらいか。西都原古墳群の規模には全然敵わないっぽい。
「あっ。あれ……」
キレイに並ぶ、四角い墓が目に付いた。方形周溝墓である。
「うん。宮崎には確か、あんまし無いよな」
雄治も頷く。一角にずらりと二〇個ばかし並んでいる。方形周溝墓は大陸由来だと言われている。
その反対側に目を転じると、そこそこ大きな前方後円墳が二つ、目に付いた。そのうちの一つは、初期の柄鏡式らしい。
「元々この辺には、弥生時代から大陸文化の影響を受ける勢力があったっじゃろな。で、倭国大乱の後に古代宮崎勢力が入り込んだんじゃね!?」
「うんうん。なんかそんな感じがするね。……だから柄鏡式の前方後円墳がある、と」
「そうやな。この辺から南にかけて、宮崎邪馬台国ン重要拠点やったんじゃねえやろか」
卑弥呼様情報によれば、邪馬台国人は霧島をかすめて九州山地を縦断し、八代付近に到達して船に乗り、八代海有明海を経て伊都国佐賀平野に抜けたという。
であればまさに、ここが熊本県南部狗奴国勢力との、境界だったのかも。――
ここでは古墳が二〇〇基程確認されていて、全体としては五〇〇基規模ではないかと言われているらしい。狗奴国に面する最前線ということで、度々小競り合いが生じ、傷つき倒れた人々の亡骸が丁寧に埋葬されたのかもしれない。キレイに整備された雰囲気の良い公園だが、何となくそんな血なまぐさいイメージが脳裏に浮かぶ。
あたし達は日没前に移動し、近場のビジネスホテルのダブルルームを予約し落ち着いた。
あ、何度も念を押すようだけど、あくまで無駄な出費を抑えるためにダブルを取ったんだからね。ふたりしてイチャコラえろえろタイムを堪能するためじゃないよ。
いや、まあ確かに……ふたりでイチャコラえろえろタイムを過ごしたけどさ(恥)
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