上陸地点末廬国から見て、糸島の方角は?
しばらく会話に加わらず、レジュメとWebマップに視線を往復させつつ考え込んでいた
「ちょいと待ちねえ」
「なんだ?」
「ちょいと待っておくんなまし」
「
「上陸地点、末廬国から、……東南?」
「うん。魏志倭人伝にはそう書いてあるらしい。資料はWebサイトからのコピペだから、オレの入力ミスではない」
あたしは素早く、「魏志倭人伝」で検索をかける。幾つかのサイトで漢文原文を確認するが、確かに「東南」と記述されているようだ。敬太郎君の誤記ではなさそうである。
「どうしたの?」
「いや、末廬国って松浦半島付近なんでしょ?」
「そう。地名も昔っから『まつら』やし、まず間違いないやろう、と……」
黒木敬太郎がノートPCのモニター上で、唐津湾松浦川河口付近を指差す。
「うんうん。壱岐との位置関係を考えると、その辺っぽいよね。で、福岡県糸島ってどこ?」
「ここだよね」
「上陸地点末廬国から見て、糸島の方角は?」
「う~ん……。北東」
「ほら!! でしょ!?」
「あっ!!」
三人が一斉に声を上げた。
「方角は『東南』と書いてあるけど、糸島って『北東』だよ。あと距離も、上陸地点から五〇〇里もないんじゃない? ちょっと計測してみたけど、せいぜいその半分だよ」
「ホントだ……」
「『至』と『到』の、文字の違いをどう解釈すべきかは判った。しかしそれでも各比定地に関して議論紛糾のまま。その原因は何か? 一番肝心の、拠点たる伊都国の比定地が間違ってるからじゃない!?」
思わず畳み掛けるように喋るあたしの顔を、三人が、一瞬で穴があきそうな程見つめる。
いやん。なになに!? ちょっとテレるじゃん。――
あたしは三人のアツい視線から逃げるように、グラスを手に取りアイスコーヒーをぐっと飲み干した。
「紗耶香、お前スゲ~よ。それクリティカルヒットじゃね!?」
あら、そうなの?
いや、確かにそうかもしれない。おほほほほ♪
紗耶香はちょっと得意気に、胸を張った。雄治が私の胸にちらりと視線を投げかけ、ほんの一瞬だがエロい表情を浮かべた後、慌てて誤魔化すように神妙な顔をした。
こいつめ!!
いや。まあ、いいけど……(笑)
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