『至』と『到』の違い
「それはどういうこと? 行程が詳細に書かれているのに、途中で迷子になる……ってのが意味不明なんだけど」
「うん。次のページを見てよ」
黒木敬太郎はレジュメの三ページ目を指差す。
「魏志倭人伝の、実際の行程の記述やね。『渡一海 千餘里 至末盧國』とか『東南陸行 五百里 到伊都國』って感じで、方角と距離と到着地点が羅列されてるんだ」
「うん」
「で、帯方郡 → 狗邪韓国 → 対馬 → 壱岐 → 松浦半島 → 福岡あたりまではちゃんとルートが判明しているっちゃけど、そこから先が判らんとよね」
黒木敬太郎のレジュメに行程が記されている。
1. 從郡至倭 循海岸水行 歴韓国 乍南乍東 到其北岸狗邪韓國 七千餘里
2. 始度一海 千餘里 至對海國
3. 又南渡一海 千餘里 名日瀚海 至一大國
4. 又渡一海 千餘里 至(・)末盧國
5. 東南陸行 五百里 到(・)伊都國
6. 東南至奴国 百里
7. 東行至不彌國 百里
8. 南至投馬國 水行二十日
9. 南至邪馬壹國 女王之所都 水行十日陸行一月
10. 自女王國以北 其戸數道里可得略載 其餘旁國遠絶 不可得詳
次有斯馬國 次有巳百支國 次有伊邪國
次有都支國 次有彌奴國 次有好古都國
次有不呼國 次有姐奴國 次有對蘇國
次有蘇奴國 次有呼邑國 次有華奴蘇奴國
次有鬼國 次有為吾國 次有鬼奴國
次有邪馬國 次有躬臣國 次有巴利國
次有支惟國 次有烏奴國 次有奴國
此女王境界所盡
11. 其南有狗奴國
「返り点とか打たれちょらんけど、シンプルやから大体読めるやろ?」
「うん」
「気を付けんといかんのは、『至』と『到』の違い」
「どういう意味?」
「以前はその違いに留意せず、次々と数珠つなぎに地点を辿ってたらしい。しかし最近の研究では、こんげな感じに解釈されちょっとよね」
図を見て貰う方が解り易い、と黒木敬太郎はレジュメの四ページ目の図を指し示す。
そこには帯方郡から伊都国までの順路が一本、示され、拠点伊都国から先は矢印が複数、放射状に伸びていた。
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