第36話 転移とマルト

「ラークの馬鹿!」


パシン


俺はなぜかリリスに叩かれていた。

なんで?


俺はグレールに戻ってきていた。

宿屋ギミットにいるリリスたちと会って話していると、いきなり平手打ちを喰らってた。

なぜか理不尽にリリスに殴られる俺。


「ラークの不潔!」


リリスが泣きながら二階の部屋に入って行った。


「あーひどいなラーク」

「さいてーラーク君」

「ラークくんではなく鬼畜くんだわ」


なんでだ?セララとマリとサリアからひどい言われよう……。俺はクラークと同じ扱いに変態と同類になっている。

なんかすごく勘違いしているぞ。



「ご主人様どうした?」


あっ原因はこれだ。

ゴルドが俺のそばにいる。

しかも見た目がめちゃくちゃ可愛い女の子の姿で、簡素で露出の多い奴隷服を着て、奴隷の首輪をしている。しかもボンキュボンのスタイルだから、はみ乳が見えるぐらいだ。

これではどう見ても、俺が女の子の性奴隷を連れているように見える。


やばい否定しなくては!


「みんなそんなのじゃないからね」


「性奴隷なんか最低」

「ラーク君が性奴隷持ちってひくわー」

「噂では聞いていたけど、鬼畜くんはクラークさんとやっぱり親子だわ」


鬼畜くんはやめて、だいたい性奴隷なんかじゃないから!


「まあ……。殿方なら性奴隷の一人や二人ぐらいいても普通ですよね。ねっラーク」


いやいやシルフ姫もそこを認めないで!それは全然フォローなってないよー!

俺がフォローを求めてゴルドを見ると……。


「もうこの身の全てをご主人様にささげてます」


「おいっ!」


ゴルドがこっちを見て、肩を出してから泣くふりをした。

このオッサンは、わかっていてやっているな!

女の子たちからは、性奴隷持ちのレッテルを貼られて、白い目で見られてる。

いったい俺が何をしたと言うんだ。


なんとか説明して皆に納得してもらったが、リリスだけは部屋から出てこないから……まあ後でしよう。


「ご主人様は、なかなかと女との関係が大変だな」


まるで他人事のように、ゴルドに言われた。完全に他人事の顔をしている。

ちくしょうお前のせいだぞ。








「ゴルド、頼むよ」


「この身を天に飛ばし我の思うところに縮地せよ、飛龍翔ひりゅうしょう


ギューン


手を繋いだゴルドを中心に、身体が吸い込まれていく。

周りの景色がゆがみ、サイケデリックな色合いの景色になる。

その歪んだ空間がしばらく続くと、突然周りが明るくなって、景色がまともになる。


「すげー!本当に移動できた!」


俺は驚く。こんな便利な能力があるなんて!


「ここはマルト近くの森か?すごいな」


クラークも驚いていた。ゴルドの転移の能力によって、俺たちはマルト近くの森に移動していたからだ。


「まあな、一度いった場所に、転移の石を埋めていたら移動ができる」


ゴルドは自慢げに言う。

そして空中を操作して、コマンド入力をしていると空中から緑色の石が出て来て、それを地面に穴をあけて埋めていく。


「ただし使用すると消えるから、こうして補充をしないと駄目だ。ゲームみたいに全てが簡単ではない」


まあそれでも移動できるだけすごい、馬車なら4日はかかる距離を一瞬での移動だ。



「でもすぐにマルトに戻れて助かった。ありがとう」


「……別にこのくらい大したことはない」


ゴルドが顔を真っ赤にしている。


「ここにこれるということは、前にマルトに来たのか?もしかしてラークを狙っていたのはお前か?」


クラークがゴルドを睨む。


「……ああ俺だ、ここにある懐かしい食べ物地球の食べ物を作ったという少年に興味を持ってな、でもお前の監視がきつくて、会って話すことが出来なかった」


あー俺をつけていた男ってやつか……あれ?


「ねえ、他にも何人変身できる?男にも変身のできるの?」


俺は聞いてみる。


「ああ、あと10人ほど変身できるぞ、もちろん男にも出来る」


そう答えた。

俺は素早くクラークの後ろに隠れる。


「ゴッゴルドって男とセックスしたの?そんな趣味があるならちょっと」


俺を性的に、興奮でもされたら嫌だ。


「いやいや、女の姿でだぞ!したのは!」


ゴルドが必死に言い訳をするが……。


「中身はオッサン性格は男だろ!?」


「ぐっ確かにそうだが、でも女だからいいだろ!男同士とは違う!」


まあなそれなら確かにいいけど……。

何か微妙な気持ちだ。


とりあえず、ゴルドには気をつけよーと?








「ラークありがどう」


ペペにポポが助かったという報告をすると、ぺぺが泣きながら俺に抱きついてきた。熊のような大柄なペペに、力の限りに抱きつかれベアハッグ圧死しそうになる。


「きつい、たすげて」


あっ意識が……。


「おい、ご主人様が苦しんでいる」


「ゴホッゴホッ」


ゴルドがぺぺから、引き離してくれた。


「ああすまん、つい嬉しくて……てか?いつの間にラークは奴隷持ちに?それよりも早くないか?グレールの往復にしても早すぎる?」


「えーと………」


ペペにはざっと今までの経緯を話す。さすがにポポが転生者とかの話はしていないが、ゴルドが特殊な魔法使いで、転移できることを説明しておく。


そして町を大きくすることにしたことを話していく。


「まあ、町を大きくするのは嬉しいし、こっちも協力するが?どうするのだ?」


「実はこうしようかと………。」


俺が計画を話す。




「お前っそんな大それたことを!しかしここは………」


ペペがいろいろとマルトの秘密を言ってくれた。


「なら計画の半分は出来たも同然ですよ!」


俺は興奮していた。こんなに思い通りになるなんて思ってなかった。


「ああ、多分お前の考え通りになる。ちょっといろいろ用意をするから一刻2時間ほど待ってくれ!おいキノス執事こっちに来てくれ!」


キノス執事がこちらに近寄ってくると、ぺぺと同じように抱きつかれた。


「感謝しています。ポポ様のことありがとうございます」


涙を流しながら言われた。


「まあ俺は大したことしていないですよ、お父さんがほとんど倒しましたから」


「いえ、ラーク様がいてくれなかったら、クラーク様がそこまではしてはくれません、ラーク様のおかげです」


うーん確かにね。変に納得してしまった。クラークは正義の味方ではないので、下手するとポポを見捨てる可能性が高かった。


「とととっとりあえっず、リリックのところに行ってきます。おと、父さんは治安維持隊を見ているのでまた来ます」


俺は急いでペペの家を出て、リリックのところに向かう。

感謝をされなれてないから、ちょっと恥ずかしかった。






「ラーク!」


誰かと思ったらクールだ。


「よークール」


「なんでここに?姉ちゃんは?!」


俺に掴みかかってくる。


「姉ちゃんは!どうなった!」


ゲッ首が締まって苦しい。


「苦しい!」


「すまんがやめてやれ」


「あっ」


ゴルドに言われて、気づいてクールが手を放す。


「ごほごほ………バカ!俺がここにいるから無事に決まっているだろ!いきなり首を絞めるな!帰ってくるのは、まだまだかかるが無事だよ」


俺が咳き込みながら言うと。


「そうか………ラークありがとう、良かった」


本日3度目の抱きつかれるベアハッグされる

クールは俺を抱きしめたまま、号泣をしている。

もう男野郎ばっかに抱かれるのは嫌、抱かれるなら女の子に抱かれたい。




しばらく泣いた後やっと解放してくれたが、興味がゴルドに移ったみたいで、いろいろと聞かれた。くそ現金な奴め!


適当に誤魔化してリリックのところにやっといく。

リリックにいろいろと説明すると、納得してくれたみたいで、俺に協力してくれるってことを約束してくれた。


不器用な俺には、リリックの協力がないと実現できないことが多いから、これで完璧だ。

そしてクラークに会いに、治安維持隊本部のラッシュの元に行くと……。


「ラークあれ?クラークさんはもういないよ家に帰るって」


「え?」


なんか嫌な予感がする。






「あああんっクラーク」


「シール最高だ、もう我慢が出来なかった!」


「クラークっああんそんなに激しいと……らめっ」


家に帰り寝室の戸を開けると、思った通りにクラークとシールがしていた。


「何をしてる……」


「よーラーク!ぺぺとの話終わったか?うんっ」


「ラーク、おかえりっああん大変だったわああんんっ」


「いやいや!普通はここで止めるでしょ!」



そう言うとクラークがシールを抱えて駅弁状態でしだす。


「ああんっ」


「母さん、あんじゃなくて」


「ラークも細かいこと気にするな!いまさらだ」


「みんな無事でよかったわああんんん」


確かにいまさらだけど……シールまでこんなのってないだろう。


「はあ……父さん、あと半刻1時間ほどしたら町長ぺぺの家に来て……」


「なにそれだけしかないのか!シールいくぞ!」


「あああん、らめっ壊れちゃう」


より激しく腰を振るクラーク、そして抱きつき悶えるシール。



俺は静かに部屋の扉を閉めた。

俺……この先この夫婦とは、親子としてはやっていけないかも……と思ってしまった。







「この身を天に飛ばし我の思うところに縮地せよ、飛龍翔ひりゅうしょう


ゴルドの転移の魔法でグレールに戻る。


「おかえりーどうだった?」


アーロンが出迎えてくれた。

ここはアーロンの家だ。

転移には周りに人がいない方がいいので、アーロンの家の庭で転移をしていた。




「思ったよりもいい感じなりそうだよ」


アーロンにこれまでの経緯を話す。


「こっちもー上手くーいきそうだよー」


嬉しそうにアーロンの、間の抜けた声で言った。




「さて、後は上手くいくかな?」


俺はそうつぶやく。


「きっと上手くいく、大丈夫だ」


ものすごくスッキリして満足そうなクラークが、俺の肩を叩いた。

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