第17話 村が……。
「‥‥‥グスッ‥‥絶対また来るから‥‥‥」
ラッシュが泣きながら俺に抱きついていた。
今日で『マルト村』でのキマイラからの防衛の任が終わるからだ。
この一ヶ月間、キマイラとは全く遭遇することも無く痕跡がなかったので、他の土地に移ったという結論に至ったからだ。
マッシュ親子の所属する『鷹の翼』は冒険者ギルド本部がある都に帰る。
キマイラ討伐も兼ねていたとは言え、村の防衛と言う依頼は普通なら
しかもマッシュが
それほどキマイラは危険な相手と言う事だったのだ。(俺が一人で魔法で
でもにキマイラに会えないなら解散するしかない。
だがこの村を去るのを名残惜しんでいるのは、マッシュ親子だけではない。
「ワシ、ここから去りたくない」
「まずい飯の生活に戻るのか‥‥‥」
「都に戻りたくない」
「仕事上がりのお風呂が無くなるなんて‥‥‥‥‥‥い・や・だ」
「なんかこの世の天国だったな、ここ」
あちこちからそんな声が聞こえる。
まあ他の街に行ったことないのでよく知らないけど、この世界ではこの村はかなり快適だったに違いない。
クラーク指導の元にしっかりと血抜きをした魔物は、買い取り価格を辺境の村にしては高いほうにしていたし、住まいとかの待遇もよくしていた。
しかも最後の3日間は
この世界ではトイレは無く、そこら辺での野ぐそ普通だった。
宿で寝るのも多人数の雑魚寝が当たり前で、その上ただ固い床の上にそのまま寝るのが普通だった。
ベッドがあるとしても、虫などの侵入から逃げるために高くした台の上に寝るぐらいだ。
それを宿では、部屋は8畳ほどに一人一部屋の完全に個室。そしてトイレを作り洋式にした。
ベッドには
この世界ではガラスも無くて窓は木の雨戸みたいなのを閉めるだけなので、閉めていたら昼前でも真っ暗だ。
だから俺はガラスを土魔法で製作した。
そしてそれを土魔法で加工して板にしたのを窓に嵌めると、窓ガラスなる。
魔法を使うので
そんなこんなをしていたらかなり立派な宿が出来た。
「ぶっちゃけ、都の超高級宿よりも豪華……いいや王宮よりも豪華だろう」
そう
「うううぐすん、ラーク……また来るよ……」
「うんいつでも歓迎するよ!ラッシュ君は僕の兄貴みたいなものだし、このマルトが故郷と思っていつでもきてね」
俺の胸の中で泣いている、ラッシュの頭をポンポンして慰めた。身長差があるからラッシュは俺の前で跪いている。
「ズズッ‥‥ラークも都に来たらいつでも案内するぜ」
横で鼻をすすているマッシュが言った。
「うん、冒険者の仕事を頑張ってね」
盛大な村の見送りの中、冒険者達は名残惜しい感じでこの『マルト村』を去っていた。
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俺は9歳の誕生日の朝を迎えていた。
来年には
そして15歳になると巣立ちで親元から離れなくてはいけなくなる。
バタバタとした足音とともに扉を開ける音がした。
「ラーク、朝練しようぜ」
‥‥‥ラッシュは結局あれから半年ほどしたらこの『マルト』に帰ってきていた。
よほど気に入ったのだろう。
でも流石にマッシュは
「ラークも朝練終わりに、一緒に風呂に行こうぜ」
………マッシュは冒険者を引退してた。
今では二人ともこの『マルト』に住んでいる。
かなり周りから止められたそうだけど、ラッシュがこの村に住みたがって冒険者を辞めてマルトに来たため、子離れをしたくないマッシュはそれと同時に引退を決めてこの一緒にマルトに来たのだ。
クラークといい、「この世界には親馬鹿しかいないのか!」と俺はツッコミをいれたわ !!
……だがしかし。
以前派遣に来ていた冒険者の半数が、都からこの『マルト』を拠点にして定住して、その上都にいた他の冒険者達を誘って『マルト』に来たので村の総人口が一気に増えた。
今では以前は30世帯ぐらいだった村が、現在では500世帯ぐらいにまで増えた。この分だと、どんどん増えていくだろう。
すでに村ではなく町単位となり『マルト町』になっている。
一気に増えたので
この世界では宿と持ち家ぐらいしか存在しなかったのだが、急激に増えた人口を管理するには
おかげで都からも人が多く働きに来ても住むところに困ることがなく好評だった。
そして人口が急激に増えたので治安も悪くなったから、クラークが『治安維持隊』の隊長となった。簡単に言うと要は私設警察ってやつだ。
クラークは人から好かれやすい性格だし、話しやすいから適任だと思った。実際に好評だ。
マッシュ親子も『治安維持隊』に入って働いている。
まあ全部裏で三味線弾いているのは俺だけどね………。
「わかった、着替えてからいくよ」
俺は自分のベッドから降りて着替えだした。
実はクラークとシールから別れて寝るのが上手くいった。
村に新たに診療所を立ててもらい、マッシュが出て行った後の部屋に俺の部屋を作った。
宿で培った
そして俺が一人で寝ることに、クラークが泣いて嫌がったけど「マリアンに聞いたけど、女性の水浴びをのぞいて女性に、殴られて谷に落ちて骨折するほどの大怪我した人がいるって聞いたけど……どう思う?」と耳元で囁いたら大人しくなった。
1000の逸話を残す男と言われただけあってクラークのネタには尽きない。
流石にかわいそうなので
「良し、はじめぃ」
クラークが開始を言うとマッシュとと打ち合いの稽古をする。
カンバーン ビシィ! バシ バシ バシ! バーン!ビシッ、、ドカ、カッカッカツン
さすがにマッシュは金級の元冒険者で、初めは全然ダメで打ち合いすらならなかった。だがその打ち合いも今では受けるぐらいはできるようになっていた。
まあもちろん手は抜いてもらっているのだけどね。
「やめーい」
「「「ありがとうございました」」」
一時間ぐらい朝練すると、クラークの声の合図とともにやめる。
「ラークも強くなったな、俺の動きに対応しているだけすごいぞ……もちろんラッシュもだかな」
まあ9歳児が大人の動きを受けるだけでもすごいだろ。……でもわざわざ
親子だけで朝練すると
木刀では当たると
だからある程度は本気になっても大丈夫にはなっている。
「ラッシュ君もすごいよ、俺と打ち合っていけるのだから銀級に近いと思うぞ……もちろんラークもだけどな」
マッシュとにらみ合いだした。止めてください。お互いに親馬鹿は!!
「朝飯のあとお風呂行こうか」
ナイス!ラッシュ!!
流石にうちの風呂はこの人数はきついので温泉に入りに行く!
俺たちは温泉のフリーパスを持っているから、温泉は基本いつでもただで入れる。
【治安維持隊】とその家族は、街の施設のフリーパスを持てることにしている。まあこのくらい役得は必要だろ。
ちなみに夜はクラークの希望の元、クラークとシールと俺で家の風呂に入っている。
一緒に入らないとクラークの機嫌が悪くなるからな。
朝飯の後はみんなで入浴がいつもの日課。
シールさんは温泉が気に入ったみたいで「お肌がツルツルになるわ」と言っていた。
29歳になるのに確かに若く俺を生んだはずなのに15.16歳ぐらいにしか見えない。……クラークは精神的に10代前半に見えるけどね。
「あれシールさん?ラーク君たちも朝風呂?」
「セララたちもお風呂?珍しいね」
「やっとさっき帰ってきたからね、最近は入れなかったから、久々のお風呂」
入り口ではセララと数人の女の子と会った。
セララ達はもう一人立ちをして冒険者をしている。流石に精霊魔法が使えなかったから魔法使いはあきらめたが、何とか
「ラークも風呂なんだ」
セララの陰に隠れてリリスが少しだけ顔を出していた。
「うん……なんで隠れているの?」
リリスも去年成人を迎えたので、セララと一緒にチームを組んで冒険者をしている。村の中のいい女の子だけで、冒険者としてパーティーを組んでしているそうだ。
まだあまり強くないから街道ぞいの護衛だけだそうだけど。
「ちょっと汚れているから……」
「えっ汚れているって?気にしなくていいよ?魔物の返り血が汚れているなんか、父さんのとかで見飽きているし、こないだは魔物の内臓の内容物が頭にまで飛び散ったラッシュ君が帰ってきたのを見て、お互い大爆笑していたから、何とも思わないけど?」
俺がそう言うと
「ごめん、先に入るね」
リリスは女湯の方に走っていった。うーんよくわからん?
俺が首をかしげていると、何故か周りの女の子がクスクス笑っていた。
「ラーク君は、女心わかってないよね」
「顔は可愛いのに鈍感ね」
「まああと数年したらわかるわよ」
そう口々に言っていた。なんだよそれって?
「あーいい湯」
「本当にな、親父も冒険者やめてよかったろ」
「そうだな、ここはいい町だ、クラークには感謝しているよ」
「よせよ、俺の頼みを真っ先に聞いてくれて、ここに来てくれた、マッシュには頭上がらないよ」
まだ朝早いので俺たち以外には客はいない。
そうなので4人とも湯船を泳いだり、ぷかぷかと浮きながら入っている。
「あらセララまた胸が大きくなったの?」
「ちょっとだけね、……シールさんはいつまでたっても綺麗ですね」
「あらありがと、リリスちゃんもかなり胸が大きくなったわね」
「そうですか?実は最近は鎧がきつくなってきて新調しようか迷っているのです」
「まだ大きくなるから待った方がいいわよ、簡単な手直しならしてあげるよわよ」
「リリスは恋しているからもっと大きくなるわよ」
「ちょっと何言ってんの……きゃやめてよマリ、後ろから揉まないで」
「ええんか?感じちゃう?リリスはここ感じるのかな」
「あっん、駄目だって、ちょっと乳首クリクリしないで」
「ほほう、感じとるな、恋するリリスちゃんは感じやすいね」
「……シールさん、触ってもいい?大きい胸あこがれるので」
「あら、セララちゃんも大きいわよ……いいわよどうぞ」
「大っきい」
「あっあっん、そんなことされたら」
「マリっあっあっ駄目ッ」
「セララちゃん、そんなにすると……」
「クラークさんといつも、こんなことしているのですか?」
「あっあっそんな」
と……女湯からそんな会話が聞こえてきた。
湯船には………潜望鏡が4つ浮かんでいた。
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