第16話 これからの事

 俺は村長ぺぺに頼んで、出産直後の牛に似た生物カーブ言う牛とヤギが混ざったような獣とその子牛を手に入れた。


そう牛乳を手に入れるためだ。


この世界では畜産と言うことはあまりしていない。なぜなら魔物に家畜が襲われる可能性高いからだ。


でも魔法が使えない者が畑を耕すのに、牛や馬といった家畜は必要なのでいくらかはある。


「……上手いなリリック」


「そんなことないよ」


初めは俺が搾っていたがあまり搾れず、それを見ていたリリックが搾ると、いとも簡単に俺が搾った何倍もの量を乳を搾っている。……俺がするよりも何倍も効率が良かったのだ。




搾りだした牛乳を沸騰しないように気を付けて、加熱殺菌をしてから飲む。


「……うめぇー」


この世界では牛乳を口にすることはない。こんなにも美味しいのに‥‥。

まあ、知識が無かったら、獣の分泌液なんか気持ち悪くて口にしないわな。


シールの母乳以来だわ……あっすみません、クラークみたいな変態発言。

そういえば俺が飲んでいる時に、クラークが俺と一緒にシールの胸から直接飲んでいたな。


最初リリックは牛乳を飲んでいる俺を奇妙に見ていたが、俺が強引に「飲んでみ」と進めて飲ませた結果かなり気に入ってお代わりしていたぐらいだ。


そして得た牛乳を、器に入れて栓をし、上下に入れ振り続けるとこれでバターの出来上がり。

これで料理の幅がひろがるし、岩塩を混ぜれはパンにも合うしな。

ヨーグルトは種菌が無いから怖いので、今回はとりあえずパス。まあ温度管理して放置するだけでできるけど博打過ぎて怖い。


ついに念願のチーズが出来た。

牛乳を低温で殺菌する。温度計がなかったから勘で何とかできた。リリックにこれぐらいと言うと安定したその温度を保ってくれた。木炭のおかげでやりやすい。そして子牛を殺して胃袋からレンネット(子牛の胃の中にあるタンパク質を固める酵素)取り出しまぜる。すると固まってくるのでそれを集めて水分を抜き、塩水に付けてから取り出して冷蔵庫で数週間保管してやっとできる。本当にめんどくさい食べ物だ。


出来たチーズとベーコンと卵を使いカルボナーラを作って食わせたら、マッシュ親子は涙を流して喜んでいた。マリアンは「やっぱり結婚させて」と叫び、シールは「うちの子すごすぎる」と泣き、クラークが興奮して抱きついてキスしてきたのでビンタした。モナがボソッと「ラーク様の奴隷になりたい」と呟いたことはマッシュ達には秘密にしとく。




村長ぺぺに乳製品チーズやバターやカルボナーラを食べさせてから説明すると、早速酪農の件を手配してくれた。

冒険者のおかげで村に近づく魔物の数がかなり減って来ているので、近くの草原でするそうだ。






「この村に残りたいな」


ラッシュ君がつぶやいた。うん、見事に餌付けが成功した。


「うーん、そうしたいのはやまやまだがなあ……一ヵ月も経ってもキマイラを倒せないとなるとなあ……次の依頼も来ているしな」


冒険者がきて、そろそろ約束の一ヵ月間になる。

……まあ、マッシュ親子は俺の料理の虜魅力にメロメロになっているから悩んでいるみたいだった。


マッシュは冒険者のクラン冒険者のパーティー『鷹の翼』のリーダーだ。

マリアン含め10人ほどの在籍している、『金級Aランク』のクランだ。

都でもトップの冒険者クランなので、次の予定が決まっている。


他の冒険者たちのクランは、『風の牙』と『炎の爪』という名前のクランで、どちらも銀級Bランクで、どちらも優秀なクランの冒険者達だ。

ここにきているのは金級レベル魔物『キマイラ』を倒すために来た、銀級や金級の冒険者トップランクの冒険者ばかりなのだ。

他の仕事の依頼が来るのは言うまでもない。


腕のいいクラン達が、一定のところで固まられていると魔物退治で困るのだ。

今回はこの村の防衛依頼で滞在しているが、優秀な彼らには本来の冒険者として次の魔物退治が待っている。


それと冒険者達もここで稼ぐより辺境の地で狩るより、いい防具やいい武器などを扱う店が多くあるから、素材の需要があってここよりも高く売れる、都付近で狩った方が効率がいいだろう。


だがしかし……ここ辺境の村マルトの周りは魔物が沢山いて、これだけの数の冒険者が毎日魔物を狩っても魔物がいなくなることはない。

クラークが頑張って守っていても、毎年のように村から死人が出ていたぐらいだ。

村を広げたくても、魔物の所為で開拓が出来なかった村を広げれなかった

このまま冒険者たちが去ったら、元の木阿弥になる。

この村は辺境の地なので交通の利点はないので旅人が来る事がほとんどない。パスタや木炭は高く売れて儲かってはいるが、村のためにはそれだけではだめだ。


俺は考えていた。

せっかく、冒険者が沢山来ているこのチャンスを、何とかできないかなと……。


実は、クラークがこないだ死にかけたことが怖かった。


たまたま俺がいたからクラークが死ななかったが、もしいつものようにクラークが一人で狩りに出ている時にキマイラみたいな恐ろしい魔物とと会っていたら……と。

考えると恐ろしくて、恐怖で夜も眠れなくなる。


でもこれがこの世界の常識なのだ。


雑貨屋のおじさん……セララとクールの父親が、つい3ヵ月ほど前に魔物に襲われて亡くなった。

村のはずれで魔物に襲われて亡くなったのだ。血まみれの愛用の帽子だけが、その場に残っていた。

クールとセララの家は一妻多夫の家族だったので、多分……多分クールの実の父親になるだろう。オジサンはクールと同じ茶髪だった。


『ごめんねラーク君、クールは甘えん坊でへそ曲がりだから、いろいろと迷惑かけるけど仲良くしてくれる?』

俺がクールをぶちのめした時に俺を叱らずに、少し困った顔して微笑みながら俺の頭を撫でた。

俺の事を『神童』とか言わずにラーク君と名前を呼び、俺の目線で喋る優しいおじさんだった。


村の子とは遊ばない俺の事をいつも気にかけていて『都ではやっている遊びなんだ、これでうちの子達と遊んでくれる』とか『お土産あるからみんなと一緒に食べて』とか何かにつけて声をかけてくれた優しい人だった。


遺体は全て魔物に食べられていて、葬儀の時には愛用していた帽子だけしか墓に入れられなかった。


ここは昨日まで見かけていた人が、今日には死んでいるのが当たり前の世界。

すでに知り合いが何人も死んでいる。ここは辺境の村で魔物が多い。


クラークが強いからなんとか一人で頑張っているけど、キマイラみたいなとんでもなく強い魔物に出会うと、いつ死んでもおかしくはない。

そういえばクラークも、たびたび怪我をしてて帰ってきたりしていた。

冒険者が他にいればいいのだが、この村にはクラークしかいなく、冒険者がこの村に来ることはめったにない。


あの葬儀時のクールとセララが泣いている姿を、忘れることが出来ない。

俺があの立場になっても、全くおかしくないからだ。


もし冒険者がこの村に来るようにできれば、現状を変えれるのではないか?

そしてこの村に冒険者が居付くようにすれば、クラークの危険が少しでも減るのではないか?


だから俺はこの村を変えることを決心した。

冒険者がここに定期的に来るための付加価値を村につけるしかない。


この村には俺の料理と発明地球から由来の食事と道具がある。


こないだは塩漬け漬物発明公開した。

塩をするだけで野菜が何ヵ月も持ち、肉も腐らずに味も美味しくなるのだから、知らないこの世界の人はびっくりだろう。

乾燥していないものが、腐らず美味くなるなんて信じられないはずだ。


冷蔵庫の無いこの世界での保存食と言ったら、風魔法で食料を乾燥させるのが一般的で、保存食は魔法使い作る物という認識だった。魔法が使え無い人は買うしかなかったのだ。


それが誰でも作れる保存食は革命的だろう。

その上塩漬けはパスタとの相性もいいのだから、一緒に販売するだけで売り上げが上がったぐらいだ。


そう、この村には俺がいて地球の前世からの知恵があってこの村にほかにはない価値がある。

それだけでも冒険者がこの村にいる理由になるはずだ。

だから村を開拓して冒険者を集める事にする!



俺は悪い顔をして笑う。



「ラーク!何か悪いこと考えているでしょう!お父さんそっくりのその変な笑い方はやめなさい」


……シールに怒られた。





「なるほど、わかった!そのようにしよう」


村長の家に来ていた。ある提案を聞いてもらうためだ。

俺がこの村のことで、暗躍しているのを知っているのは、村長ぺぺとリリックぐらいしか知らないだろう。


ぶっちゃけ村長ぺぺは俺に報酬は出すと言っていたが、必要がないので断っていた。

お金をもらっても使い道ないし、俺がやっていることをバレるのが嫌だったからだ。


そういえば、クラークが村の防衛の報酬給料手当がかなり増えたと喜んでいたから、そっちに回したのだろう。

まあそれでも、シールから村に伝わる俺の料理だけでも、目立ちすぎているけどな。



まずは宿。100人単位で泊まれる宿を建築する。幸い土地だけは腐るほどあるし、大工の出来る村人も多い。俺の書いた簡易的な設計図をリリックに書き直してもらい、わかりやすくしてもらう。(リリック万能説)

それを元に建築することにする。


次はお風呂だ。村長ぺぺにうちに来てもらい、風呂に入ってもらった。

「感動した。量産して販売したい!」とも言ったが加工が難しいから、今の時点ではリリック以外には無理かも知れないと思ったが、リリックがもっと簡単にできる風呂を開発して販売が可能になった。


だが、村長ぺぺ入ってもらったのは、これの大型版の建設のためだ。そう『銭湯』だ。


しかし風呂は簡単にはできるが、水道設備の確保が難しい。

近くに川があるからそこから水を引き込めば作れないことも無いが、お湯にするのが大変だ。俺が火魔法でその水を温めればいいのだが、魔法を秘密にしているし、毎回俺が付きっきりで水を温めるのは大変だ。


うん?魔法……。

やってみるか?





村長ぺぺに許可をもらい、村人が滅多に来ない、村はずれ土地に俺たちは来ていた。


「じゃあ、ここらでいいよ」


計画書を片手にリリックが指示を出す。


「じゃあやりますか! リリック、もし俺が倒れたらあとよろしく!!よしやるぞ!……土の聖霊よこの地にいる全ての精霊よ、力を我に集いて力を貸し与え給え」

最近では滅多に言わない詠唱を唱える。これはしないと難しいぐらいの魔法だ。

詠唱をするのは精霊を呼び集めることだ。これにより精霊が集まってくると数が増えると計算がしやすくなり、より大きな魔法が使用できるようになる。

俺は魔法の方程式を計算し出す。

これは計算が難しいので発動までに結構時間がかかってしまったが……。


「できた! 」



地響きと共に、目の前の地面が凹み、大きな穴が出来ていく。そして穴を囲むように岩がせり出して、穴の縁を囲んでいく。



しばらくの時間とともに、あるところから 『フシューン』という破裂音とともにドンドンと水が噴き出している……その水は湯気を出している。そう、温泉を掘り当てたのだ。

俺はここに岩風呂を作り出したのだ。魔力の枯渇を感じつつも、土魔法で排水も整えて温泉設備を完成させる。


「……凄い」


ここまですごい魔法を見たことがないのだろう。俺も今までしたことがないからな。

地下水は深さ100メートル当たりに水温は3度上昇し、温泉は1500メートルも掘れば湧く。これが前世からの知識だ。……さすがに1500メートル近く掘ったのは疲れた。


そして俺は意識を失った。






「すごかった!ラークの言った通りすごい!お風呂もでかくて楽しかった。せっけんっていうので身体を洗うと、身体が溶けちゃってるのかと思ったぐらいに、ぬるぬるしていたけど、後はさっぱりするし、最後に飲んだぎゅーにゅうってやつはものすごく美味しかった」


「すごいよな! なっラッシュ! ラーク、俺はあのぎゅーにゅうってやつを俺は3杯も飲んだぞ!明日も行くぞ!!」


温泉から帰ってきたマッシュ親子は、まるで夢の国ネズミーランドから帰ってきたみたいに興奮していた。


村に温泉施設を作ったのだ。

温泉の周りを囲い等の施設を作った。お風呂の真ん中に仕切りをつけて脱衣所を作り、男女が別れて入れるようにする。


リリックに灰汁あくと植物油を混ぜて石鹸もつくってもらい、良い匂いのする果汁もまぜて匂いもよくした。

魔物と格闘した血まみれの冒険者が、まずは身体を洗ってから入れるように洗い場を作り、風呂の入る前には必ず石鹸で身体を洗うように徹底させた。

もう垢まみれは懲りたからな。


料金は一人当たり50ギルほど、冒険者なら安い価格だろう。

甘い果物を混ぜたフルーツ牛乳と酸っぱい果物ラスイの実と言う果物の汁を加えて固めた擬似ヨーグルトフル〇チェに麦芽糖入れたのを、冷蔵庫で冷やして販売している。

麦芽糖は発芽させた麦を乾燥させて砕き、片栗粉に水と混ぜてから煮込み、少し放置したのち乾燥麦芽を入れて8時間ほど保温してから濾し、煮詰めると水あめ状の麦芽糖ができる。


ただ牛乳は一杯200ギル、ヨーグルトは210ギルだ。これは少し高いが搾乳に限界があるからな。

ちなみに宿も温泉施設の近くに建築予定だ。


まずはここにいる冒険者に温泉を体験してもらい、そしてまた来てもらう。そのはまってもらった冒険者が、都に帰った時に温泉の噂を広めてもらう。


すると冒険者が集まる村にする。

他の町にはないシステムだからな!!

村に来て魔物を狩った後は、美味い飯を食べて、温泉に入って楽しむ。

それでどんどん金を落としてくれたら、村はもうウハウハ状態だろ。


さてと、うまくいくかは冒険者達の反応に寄るけど、とりあえず、マッシュ親子の様子ならよさそうだ。


さて俺もどうなのか?!客として入ってみるか!

実はリリックと村長ぺぺまかせっきり丸投げで温泉の詳しいことは知らないのだ。






「お客様どうぞこちらへ」


若い女性が案内してくれる。

この村では見かけない顔だが村長ぺぺが人材不足から都から出稼ぎを急遽雇ったと言っていたな。


人がいないな……。

まあまだ昼間だし、得体の知れないものに50ギルも払うのは躊躇している冒険者や村人も多いだろう。

うん、まあ、これからだな。


俺は脱衣場から引き戸を開けて、風呂場にでる。


ガラガラ









「えっ」










そこには全裸のリリスとセララが立っていた。

セララは年齢の割には膨らんだ胸で、股間には紫色の毛がたわわに生えていた。

リリスは小さくて少しだけ膨らんた胸、股間にはまだ毛も生えてなく割れ目も見えていた。




「「キア~~~~~~~」」



俺は二人から殴られた。

















俺は女顔だが男だ!!!!間違えるな!!






‥‥‥‥‥ふう…バイト、グッジョブ。

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