第5話 俺って・・・


前世の俺の親父は、息子の俺に興味が無かった。



いや正確には、俺にだけ興味がなかった。


弟は親父に可愛がってもらっていた。


それは俺が、不細工だったからだ。



親の悪いところを集めたような顔で、見るも無残な顔立ちだった。


弟は逆に整った顔をしていて、バレンタインチョコは沢山もらっていた。


勿論、俺は生まれてから一度も、もらったことがない。


そんな俺がアニメや漫画に走って、オタクになるのは必然だろう……。


学生時代は根暗でいじめられていた。




流石に社会人になってからは顔の醜さでいじめられることはなかったが、彼女はできず、友人と言える人は少なく、あるとしたらネット上だけの付き合いがあるオタク仲間ぐらいしかいなかった。


でも根暗になった原因があるとしたら、親父の一言だった。




「お前みたいな不細工は、俺の子供では無い!聡子俺の母親が浮気して産まれた子供だ!」



実際にどうがわからない。親父は冗談だったつもりかもしれない。


家族みんながA型だったのに俺だけO型だった。


でもABO式の血液型遺伝だと別におかしくはないはず。




しかしその言葉が深く俺の心に傷つけた。




俺はその日から鏡を見るとを極端に嫌っていた。写真にも写ることも拒否をしていた。




テレビとかの画面で自分の顔がうっかり写らないように、部屋には厚手のカーテンをかけ常に閉め切って真っ暗にしていた。


洗面所やトイレでは、鏡に顔が映らないかと目をつぶっていた。


常に自分の顔を見ることを……。



……恐れていた。




高校を卒業後は実家では居場所がないので、家族からできるだけ離れる意味も込めて、県外の有名大学に入学して一人暮らしを始めた。


そしてそのまま大学のあるところで、就職をした。


実家は農家をしていたが家を継ぐつもりもなく、弟が継げばいいと思っていた。


実際に父親は実家を継げとかを言うどころか、何年も帰らなくても何も言ってこなかった。



実家に帰るのは、大学に入学してからは初めてだったのだ。

俺は……13年間は一度も帰郷しなかった。


俺に優しくしてくれた祖父と祖母は、高校生の時に死んでいて実家に帰る理由がなかったからだ。





そして弟の結婚式のために帰郷をする事に……。


別に弟は憎くないので帰ることにした。それは兄弟が結婚式に出ないと、田舎では流石に体裁が悪いからだ。




そして、俺は帰りのバス事故で死んだ。


死んだことは別にそれでもよかった。


家族ともう関わりのないことになったので、気持ちが楽にはなっていた。


俺は新しい父親のクラークが俺を可愛がってくれるから、うざいと思いながらも内心ではかなり嬉しかった。


本当の父親を手に入れたと思っていた。



でもしかし……俺の髪の色が黒いとなると、クラークと血がつながってないかもしれない。


……となると俺は、シールが浮気してできた子供なのか?


でもシールがそんなことをするとは思えなかった。




あの脳筋馬鹿はこのことに遺伝の事に気づくことがないのだろうか?

他の村人がこのことを気づいてクラークに言わないだろうか?

でも血の繋がりがないかもしれないと思うと、クラークの態度はどう変わってくるだろ。

クラークは前世の親父みたいに俺を無視をしないだろうか?





「ラーク?どうした?」


クラークは俺の様子がおかしいことを心配したみたい。


「なんでもない、大丈夫」


ここは平静を装わなければ、似てないという事を気づいたのを気づかれたら絶対にダメだ。



「大丈夫じゃあないだろ、泣いてるぞ、どうした」


俺の瞳からは大粒の涙が流れている。


しまった、3歳児だからか感情のコントロールができない。


心配したクラークは俺から剣を取り上げて、鞘にしまうと優しく抱きしめてくれた。



「どうした?こないだ怒ったことを思い出したのか?ごめんな、ラークが怪我しそうだから怒鳴っちゃったね、お父ちゃんが悪かったね」


頭を優しく撫でてくれる。


「ううん、そうじゃない」


俺が泣き止むまで、抱きしめていた。


何気ない行為だけど、それをされると安心感があった。






「今日の朝、ラークが泣いていたね、どうしたのかな?剣の修行がいやだったのかな?」


俺を挟んでクラークはシールと話し出した。




さっきまで、シールの過去の冒険談を聞いていたが、途中で寝てしまった。


朝の剣の修行と、昼からの魔法の自主練でくたくたになっていた。


いつも楽しみにしているシールの楽しい冒険談も、今日の俺にとっては単なる長話でしかなかった。


クラークがさりげなく、俺の頭を撫でてきたので、起きてしまった。


だが、このまま寝たふりをすることにした。




「なんか剣に写った自分の顔みて泣き出したね」


シールは俺の行動に気づいていたみたいだった。やっぱり母親だけあってよく見ているな。




「もしかしたら髪の色が違うことを気づいたのかな?」


俺はクラークの発言に驚いてしまった。

そうだよ、てか意外と勘がいいな。




「この子は結構頭がいいからね……」


シールも俺の頭を撫でる。やっぱり二人は気づいていたのか。まあ当然か、生まれた時から気づくわな。



「俺の爺さんが黒髪だったって教えたほうがいいかな?」


なにっいいい、クラークはさらっととんでもないことを言ったぞ。

そっか隔世遺伝か!それを考えてなかったわ。これだけの髪の色があったらそれぐらい普通にあるわな。


だからなのか!さほど問題にならなかったわけか!!


「そうなの、知らなかった」


おい、シールも知らないのかって、なんだ気にして損したわ。



もしかしたら浮気とかして違う子供を身ごもっても、気にしないのかもしれない。


隣に住んでいるオッサンなんか5人も嫁さんがいるし、村に唯一ある雑貨屋の奥さんなんかは旦那さんが3人いたよな。


一夫多妻とか一妻多夫とかが当たり前なのは、魔物がたくさんいる世界だからかもしれない。


生活が厳しいチベットにある村では一妻多夫が当たり前で、一人の夫が死んでも替えが利くようにしているって聞いたな。


しかし緩いわ!この世界。倫理観も日本とは大分違うしな。



浮気とかしても大したことないのかもしれないかもな。


昔の日本がそうだったように、生活に厳しい世界では一人でも多くの子供を作るために、旅人に自分の妻を差し出して犯させたというぐらいだしな。


ここでは誰とでもセックスするのが当たり前かもしれない。






「「ちゅっ、うふっ」」


いやいや俺が考えている間になにしてる?


てか俺を挟んでなにしてる?


「ラークも可愛いけど、シールが可愛い!」


いやいやクラークさん、息子挟んで息子を固くするのやめて。そのうえ息子に息子をくっつけるのはやめて。


「ラークもかっこいいけど、クラークがかっこいい!」


いやいやシールさん、止めてください。あなたの旦那は息子に息子を接触させているから、するなら離れてからしてください。


「「大好き!!!」」






あーーーーーー!


俺は一人部屋で寝たい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る