幕間 Ⅰ

 晴れ晴れとした日だった。

 燦々と陽の光が乾いた大地へ降り注ぐ。






 そして、吊るされた哀れな男の上にも――。

 生と死に、平等に陽は昇る。






 オールドバニーのほぼ中心にある広場には、早朝だというのにも関わらず、早くも大勢の人々が集まっていた。


「可哀想に――」

「おいおい! 滅多なことを口にするなよ!」


 誰かがそっと言い、誰かがそっと咎める。


「あいつはルールを破った。それも、とびきり上等な奴を、だ。だから……仕方ないことさね」

「……ああ。まあ。……うん」


 誰かが言っていた。


 ――あいつは、昨日の晩、見張りに立つ筈だった男の代わりを引き受けちまったんだ、と。何でもかみさんが急に産気づいたとかって話でな。しかし、どうやら集合の時間にほんのちょっと遅れちまったらしい。


 だから――。


「……仕方ねえのさ。ルールを破った奴は誰だってああなる定めだ。このオールドバニーではな――」


 それきり、どちらも口を開こうとはしなかった。



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