ひとつの再会

勝利だギューちゃん

第1話

今、列車の中にいる・・・

いくつもの路線を乗り継いで来た・・・


今乗っているのは、小さな村に向かうローカル線・・・


2両編成の列車が、ゆっくりと走る・・・

時の流れがとても、ゆったりと流れている・・・


車窓には、都会では見られない、風景が広がっている・・・


「次は、霜月村~霜月村」

車内アナウンスが流れる・・・


降りる駅が近づいてきた・・・

(久しぶりだな・・・)


列車を降り、改札口を出る・・・


以前来た時と、全く変わっていなかった・・・

まるで時が止まったかのような・・・

嬉しいような、恨めしいいような、複雑な気持ちだった・・・


以前ここに来たのは、7年前・・・

俺が小学生の時だった・・・


家庭の都合で、この村に住んでいる祖父母の家に預けられた・・・

1年間の間だった・・・

その祖父母も、既に他界し、家も取り壊されていた・・・


娯楽施設は殆どなかったが、自然の中で都会では味わえない事・・・

それが何よりも、新鮮だった・・・


この村には、海がない・・・

山沿いにある小さな村・・・


俺がこの村に訪れたのは、連絡があったからだ・・・

もしなければ、来ることはなかったろう・・・

俺の事を、覚えていてくれたのを嬉しく思う・・・


村は変わらない・・・

でも・・・人は少なからず変わってしまう・・・


それが、時の流れだ・・・

時間には、逆らえない・・・


俺に連絡をくれた人の家に向かう・・・

この村に来た時は、よく来てた・・・


呼び鈴を鳴らすと、家主が出てきた・・・

俺の事を覚えていてくれたようで、歓迎を受けた・・・


でも、やはり年齢には逆らえないようだ・・・


しばらくすると、電話をくれた主が来てくれた。

「ありがとう・・・わざわざ来てくれて」


明野美優(あけのみゆ)

この村に住んでいた頃、一番最初に仲良くなった子だ・・・

この子がいなければ、村になじめなかっただろう・・・


「久しぶりだね・・・美優・・・」

「琢磨くんも元気そうだね・・・」

「何とかな・・・」

しばらくは昔話に花が咲いた・・・


「そろそろ行く?」

「ああ」

そう言って、美優と外出する・・・


しばらくすると、墓地についた・・・

あるお墓の前でとまる・・・


「この下に眠っているよ・・・」

お墓の下には、美優の妹が眠っている・・・


幼い頃から病弱だったが、とても明るい子だった。

雫という名前だった・・・


美優と同じでとても俺に優しくしてくれた・・・

でも、昨年・・・この世を去った・・・


雫の遺言で、俺には納骨をすませてから、知らせて欲しいとのことだった。

電話は、それを伝える物だった・・・


美優も、普段は明るい子なのだが、さすがに落ち込んでいるようだ・・・


「雫はいつも、琢磨くんに会いたがってたわ・・・」

「えっ」

「いつも、琢磨くんの話ばかりだった・・・」

そうか・・・


「琢磨くん、しばらく雫とお話してあげてね」

そういって美優は、その場を立ち去った・・・


人は死んでも、心は死なない・・・

俺の心の中では、永遠に生き続けるのだ・・・


(琢磨お兄ちゃん、ありがとう)

雫の声が聞こえたのは、気のせいではあるまい・・・


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとつの再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る