靴ひもを結んで
カゲトモ
1ページ
ふと、窓の外から雨の降る音が大きく聞こえた。そう言えば今朝の天気予報で今日は午後から雨だとか言っていたはず。でもこれ、いつから降っていたんだろう?
ま、傘は持って出て来なかったんだけど。置き傘もあるし、買い出しも終わっているし、いざとなれば濡れて帰ってもいいし。そうやって帰っても怒るような人物もいないから。
「どれくらい降ってんだろ」
でも気になることが一つだけ。雨があまりキツイと客足に響くから。開店時間にまだ余裕があると言っても、出来ればあまり降っていてほしくない。ただでさえ今日は土曜日だっていうのに。
あまり降っていませんよーに「っびっくりしたっ!」
涼しげな音が鳴るはずのベルがガロロン、と鈍い音をあげた。
「く、熊谷さんっ?」
俺の声に驚いたのか、それとも不細工なベルに驚いたのか、丸い目をした熊谷さんが扉の向こうにいた。
「花菱さん」
「どうしたんです、いやそんなことよりとりあえず中に入って下さい」
「い、いいんですか」
「もちろんですよ、早く入って」
大柄の熊谷さんサイズの傘を閉じて彼は入って来た。バックから取って来たタオルを渡してカウンターへ促す。一体どうしたって言うんだ、こんな雨の日に。というよりまだ熊谷さんのお店は営業中では?
「あ、あの、ど、どうし、てもお話ししたいことがあって」
どうしても? 熊谷さんは風邪でも引いているのか顔が少し赤い。鼻も啜っているし、外が寒かっただけ? もしかしていつかみたいに長く外に居たとか? とりあえずなにか暖かいものでも。と思っていたのに。
「だ、大丈夫ですっ」
「飲み物はいりませんか? 寒くないですか?」
「お構いなくっ」
お構いなく? 本当にどうしたんだ。久し振りに顔を合わせたと思ったらちょっと変だぞ・・・いや変なのは前からか。もしかしてまた新しい恋を見つけたとか?
俺はもうアドバイスなんてしてあげられないよ? 申し訳なくて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます