第17話 真っ赤なそれは
そしてまずは家の前の、坂へのT字路から匂いを辿ってみる。わたしはとパフィンちゃんはふたたび鼻を効かせてみる。くんくん。
ひとみちゃんの他に、家族やマスコミ、捜索関係人と思われるたくさんの人の匂いにあふれている。
しかし、今の私の鼻はひとみちゃんの匂いのみを明確に嗅ぎ分けることができる。そして匂いは、坂の下への海岸側、そして坂の上の山の方へといきなり分かれていた。
「あれ、いきなり匂いが坂の上とと下に分かれちゃってるよ。パフィンちゃんは?」
「ワタシも同じデース。ご両親の話や報道だと、坂の上には行ってないということだけド……」
「それぞれがどのくらい時間が経った匂いか分かる?新しい匂いの方が向かった確率が高いと思うのだけど…」
優衣おねえちゃんが聞いてくる。
「う~ん、そこまでは分からないなぁ。パフィンちゃんは?」
「ワタシもそこまではちょっと……。まずは当日の足取りを追うためニ、坂の下の方から調べてみるのがいいと思ウ」
「それもそうだね」
パフィンちゃんの意見に彩先輩、楓ちゃん、チャチャちゃんも賛同し、まずは海岸への坂道を下ってみることとした
チャチャちゃんが聞いてくる
「ねえ鈴、犬並に鼻が利くって、どんな感じなの??」
チャチャちゃんはまだヨツユビハリネズミとスズガモにしか変身できないから、犬の嗅覚はわからない。
わたしはにおいを探りながらも、いい例えがないか考えてみる。
「うーん、料理が大好きなチャチャちゃんに分かりやすいよう例えて言うなら……かきあげを食べてる感じ?」
「かきあげ?おそばの上に乗ってる丸い天ぷらのあれ?」
「そう、そのかきあげ。かきあげって、いろんな具が入っているよね。でもその匂いだけ外から嗅いでも、中に何が入っているか分からないよね?」
「うん」
「 でも食べて口の中に入れて噛んでいくと、あ、この香りはホタテ、これはあさり、これはイカ、三つ葉、ネギ、ニンジン…と、だんだんと分かってくる感じは分かるかな?」
「あ、なるほど!!噛んでると口の中だけで、実際に見えなくても具がわかるよね!!」
「そう、それと同じ事を、空気に対してできる感じ。鼻から空気を吸って、鼻の中で空気を噛む。そうすると空気の成分が全部わかっちゃう感じ」
そんなことを話しながら坂を下っていくと、海岸まであと50メートルくらいのところで、ひとみちゃんの匂いが途切れてしまう。
「どうやらここで、ひとみちゃんだけ家に帰ろうとしたようね。証言や報道とも一致するし」
「ワタシもここでにおいが途切れタ。同感でス」
わたしとパフィンちゃんが同意見。
「それじゃここから引き返しつつ、左の林や、右の小川の方に匂いが横にそれていないか、慎重に匂いを追っていくか」
楓ちゃんが提案する。
わたしたちはその提案に賛成して、再び匂いをたぐりながら坂を上っていく。下ってくる時もそうだったけど、何人かの捜索関係の人を見かけた。脇の林や沢を重点的に捜索している。
そして、最初に匂いが二方向に分かれていた地点に着き、
「それじゃ、ここからは家より上を目指して匂いをたぐっていくよ」
「ラジャー!!」
わたしがそういうと、それに従いみんなも付いてくる。匂いは坂の上500メートルほど続き、坂を上っていく。さらに先が曲がり道になっているところで、それは起こった。
少し先のカーブに、突然何かか飛び出してきて、ガードレールに激突したのだ。
キキーッ!!ドンッ!!
突然飛び出してきたそれは、ガードレールにぶつかった直後、真っ赤な炎と真っ黒な煙を上げて燃えだしたのだ。
※※※※※※※※※※
主人公周りの設定ですー。
飛鳥川 鈴(あすかわ りん) 本作の主人公。フォッサ女学院中等部生物部に所属する中学1年生。不思議な本「ティティアンノート」を発見したことから、動物少女に変身できるようになる。
絵が下手なので、ティティアンノートにスケッチを描くのは一苦労。ペットはフクロウのスピックスコノハズク「スピピ」
下連雀 彩(しもれんじゃく あや) 中学2年生、生物部。しっかり者の優しい先輩キャラ。ペットは三毛猫の「マーブル」
燕昇司 楓(えんしょうじ かえで) 中学1年生、生物部。家はネットカフェチェーンを経営している。
昔のマンガなどに詳しい。ペットはウサギのネザーランドドワーフ「キャラメル」
馮 佳佳(フォン チャチャ) 中学1年生、生物部。中国系の女の子。 家は横浜中華街の料理店、「壱弐参菜館」。
料理が得意。お金が好き。ペットはヨツユビハリネズミの「小太郎」
パフィン・アルエット 中学1年生、生物部。外国から来た生徒。飛び級で進学しているため現在10歳。
日本在住5年。好奇心旺盛でツッコミ大好き。ペットはパピヨン犬の「パピ」
飛鳥川 優衣(あすかわ ゆい) 鈴の姉。フォッサ女学院高等部の高校2年生。ちょっと天然の入った性格。
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