第18話

卒業前日、私達は卒業式の準備をしていた


「先輩達は卒業かぁ、なんか一年生の内に凄い経験しちゃたね」


ななちゃんは私と椅子を運びながら話していた


『うん、そうだね、色々と大変だったね』


「鏡花先輩はとてもいい人だったから助かった、けどやっぱ初恋は実らないのかなぁ」


『う〜ん、どうだろうね、たまたまなだけだったかもよ』


「そう言われたらそうかもね」


たまたまかもしれないけどある意味、先輩の恐ろしさを知った、けどそれは特殊だっただけだった


『そういえばななちゃんは部活の先輩とかは?かなり私と一緒に帰っていたけどそもそも部活ちゃんと行ってたの?』


私はふと疑問に思った、ななちゃんと一緒に帰っていた事が多かった


「ああ、それはね、私途中で辞めたの」


『え?それは初耳』


「そりゃね今言ったから初めて」


『なんで辞めちゃったの?』


「私、ついていけなくてだから辞めちゃった」


『もったいない、もう少し頑張ればよかったのに』


「その頃は東堂先輩と付き合い始めた頃だったから先輩に夢中になっちゃった」


ななちゃんは笑って答えた


『ふふ、ななちゃんらしい』


「まぁね」


『親にはなんて言われたの?』


「ちょっぴり怒られたけどなんとかなった」


『私とは違うね、いいなぁそんな親』


「はるちゃんの親はどんな感じなの?」


とななちゃんが聞いてきた瞬間


「とりあえず、大体は終わったから帰ってもいいよー」


先生の声が体育館内に響いてみんな体育館から出始めた


『その話はまたあとでね、帰ろうよ』


私は話題を逸らした


「あ、逸らした、まぁいいや」


そうして私達は帰った


卒業式当日、校長先生の話や、学校内や外での多く関わった偉い人の長話が終わってそこから卒業生と在校生の言葉の掛け合いで大半の人が泣いたりして校歌を歌って無事に卒業式が終わった


そして最後の校舎から正門までの見送りでは2,3年生が2列に並びその間を卒業生が通って見送った


私とななちゃんは部活はまともにやらなかったのでそこまで親しい先輩は居なかった、けど唯一深く関わったのは東堂先輩と鏡花さんだけだった、けど私はあと2人居た


「あ、鏡花先輩だ!せんぱーい!」


ななちゃんが手を振って鏡花さんを呼んだ、鏡花さんは手を振っているななちゃんに気づいて私達のところに来た


『先輩、卒業おめでとうございます』


「おめでとうございます」


私とななちゃんはお辞儀をした


「ありがとう」


鏡花さんは花束を抱えていた


『鏡花さんは高校はどこに行くのですか?』


「う〜ん、私はとりあえず近くの所に行くよ、成績は中ぐらいだからそこまで上にはいけないしね」


『そうなんですか』


「私も同じ高校に行きたいです!」


ななちゃんが言った


「七海さんなら行けるよ、けどやっぱ行くなら先輩と同じ所より違うところの方が楽しいわよ」


「う〜、鏡花先輩が言うなら〜、けど一緒の所に行きたいなぁ」


「行くところが無かったから待ってるわ、けどしっかりと考えるのよ」


「はぁい」


ななちゃんは残念そうに返事をした


「春華さんは私と同じところにくるの?」


『いえ、私はまだ考えてます』


「そう、なのね」


鏡花さんは少し悲しそうな顔をした、私はなぜそんな顔をするのか聞こうとした、しかし


「鏡花ちゃん!」


後ろから同じ卒業生の女子の先輩が鏡花さんに抱きついてきた


「早く行きましょうよ〜」


その先輩は鏡花さんを後ろから肩を掴んでユラユラ揺らしていた


「分かった、分かった、今行く」


鏡花さんは困り果てていた


「じゃあ行くね、それと祥二このあと来るけど無視していいからね」


鏡花さんはそう言って女子の先輩と小走りして門に向かっていった


すぐあとに東堂先輩が通った

私達は目をそらした

私は横目で少し東堂先輩の方を見たが先輩は一切見向きもせずにそのまま歩いていった


東堂先輩は一部の女子から人気だったためか周りには在校生の女子に囲まれていた、噂とゆうより聞いた話では二年生の話を聞いて更に好きになったとか、本当の姿もとい本性は一部の人しか知らない


しかし、東堂先輩は周りの女子には優しいようで素っ気ない態度で接していた


「すごいね、二重人格みたい」


『そうね』


「もう卒業するから関係ないけどね」


『そうね』


私はいつの間にか東堂先輩をずっと見ていた、なぜか分からなかったけどずっと見ていた


東堂先輩はそのまま私達には一切見ることはなく門まで行った


「もう少しで終わりかな」


ななちゃんは校舎の方を見てそう言った、しかし最後の辺りに私は一生忘れないであろう女子2人がいた


そう私に暴力を振った3人組の鏡花さんを抜いた2人だった


2人は男子の視線を集めていた、外見は凄い綺麗で清楚だが裏を返したらとてつもない凶暴だってことは私しか知らない


「はるちゃんどうしたの?」


ななちゃんは私を見て言ってきた、そして私が見ている先を見た


「あの2人の先輩綺麗だなぁ、もしかして憧れたの?」


ななちゃんはイタズラな笑顔で言ってきたが私の耳には入らなかった


「はるちゃん?」


私は静かに歩きだした


「ちょっ、はるちゃん!?」


ななちゃんは私の腕を掴んだが振り払った


「待ってどこ行くの?」


私はポケットに手を入れた

そこにはある物がまだ入っていた


そして2人の目の前に行った


「あれ?あなたどうしたのですか?」


1人が私を見て言った、しかしもう1人の先輩が気づいた


「お前、あの時の女か」


周りはザワついていた


『私は一生忘れません』


「あぁ、あれかまだ根に持ってるのか?」

「こっちはもう卒業するからどうでもいいんだよ、それに私達がいなくなるからどうでもいいだろ」


先輩2人はもはやどうでもいいことだったようだ


『私は勘違いされて挙句、未だに消えないアザが残っているんですよ』


私はいつの間にか怒りに満ちていた


「それは悪かったな、けどどうせ女だから肌は見せないだろ」

「そうだよね、んじゃあね、残りの学校生活楽しみな」


先輩2人は私の横を通り過ぎた


『2人にも残らない傷を残してあげますよ』


そう言ってポケットからカッターを取り出して振り向いて切りかかった


しかし、カッターの刃は届かなかった、私の腕を途中で掴んで間一髪、先輩2人には届かなかった

先輩2人は気づかずそのままあるて行った


『誰っ?!』


腕を掴んだ人物を見た、そこには男子生徒が私の腕を掴んでいた


『離して』


私は冷静に言った、しかし離す気配はなかった


「俺は全て見ていた、けどそこで傷つけたら一生終わらなくなる」


どうやらこの人は全て見ていたらしい


『だからどうしたって言うの』


「君は傷つけられたのは確か、しかしそこで復讐をしたら次は彼女達が復讐しにくる、そうしたら終わらない、だからこそケジメは必要」


『へぇ、てことは私がボコボコにされた姿を見た人は東堂先輩以外にもあなたがいたって事ね』


「……」


男子生徒は黙っていた、そこに騒ぎを駆けつけたのか先生達が走ってきた、私はその場に座り込んだ、そしてバレないようにカッターをポケットにしまった


「どうした?」


社会科の先生が聞いた


「いえ、何もただこの子が少し別れ惜しみたかったのか先輩達に近づいてきたので僕が止めただけです」


「そ、そうか、大丈夫か君?」


男子生徒は嘘を言って誤魔化した、先生は私の横に来て心配した


『大丈夫です』


私は立ち上がりななちゃんのところに戻った

その後にさっきの男子生徒が私達の横を通り過ぎた


『あ、』


私はその男子生徒は先輩で卒業生だったことに気づいた、そして先輩は最後に言った


「人は過ちを犯す。しかしその犯した分は償って戻せるものもあればないものもある、気をつけることだ」


そう言って歩いていった


「はるちゃん大丈夫?それにさっきの先輩、どうしたんだろう?」


『ななちゃん、私は大丈夫だから』


私は放心状態だった


「終わったみたい、帰ろうか、はるちゃん」


『そうだね』


そして私達はそのあとの学校生活を過ごした

私は放心状態だったけど考え直してもう忘れることにした、そして2,3年生の学校生活はななちゃんと楽しんだ


~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「と、まぁこんな感じかな」


春華ちゃんは話しきって少し疲れた表情をした


「そのカッターは護身用的なやつってこと?」


俺は聞いた


「そうだね、人を傷つけるものじゃないのにね」


春華ちゃんは困り顔でカッターを取り出し見て答えた


「けど、春華ちゃんなそんな過去があったなんて驚きだよ」


「恥ずかしい話だよ、だってまだ残ってるんだから」


春華ちゃんはそう言って制服の上を捲り上げた


「ちょっ、春華ちゃん!?」


俺は急いで手で顔を隠した、けどちょっとだけ指の隙間から見た


そこには春華ちゃんのお腹周りは小さいものから大きいアザがあった


「まだ残ってる」


春華ちゃんはお腹をさすっていた


「分かったから下ろして」


「ふふ、計都君可愛い」


春華ちゃんは制服を下ろして、俺も手を下げた


「そんなに残るものなの?」


「分からない、けど私は結構傷は残るタイプらしいから今も残ってるのかな」


春華ちゃんは照れながら言った



外はもう夕焼けだった


「結構、長い話だったからもう日が落ち始めてる」


俺は窓の外を見て言った


「そうね、帰ろっか」


そして二人で正門前まで歩いていった


正門前に着くと


「じゃあ、また明日」


「じゃあね」


俺と春華ちゃんは手を振りながら帰り道を歩いて行った



帰り道、俺は思った


「そういえば春華ちゃんを最後に止めた先輩誰だろう、俺の先輩て事だよな、う〜ん聞こうにも春華ちゃんはしらないだろうし、ま、いっか、今日のご飯はなんたろう〜」


ちょっと気になったが別に気にするほどではなかったためすぐに忘れて、今日の晩御飯を楽しみにして帰った

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