恐竜さんの骨と魂
綿麻きぬ
橋
これはとある山の奥深くの不思議な所に不思議な形で架かってる橋のお話。
「ねぇねぇ、おじいちゃん、なんであの橋はあんなところにあんな形なの?」
子供は側にいる祖父に聞いたみたいだ。
「ほう、それに気づくとはさすがわしの孫だ。実はあの橋は恐竜さんの骨なのだよ。どれ、一つ昔話をするか。」
おぉ、なかなか気が利くやつじゃな。さぁ、その昔話を聞いてみるとするか。
「むかしむかし、そのまたむかし、まだわしら人がこの場所に存在しなかった太古の話だ。
ここには恐竜さんが住んでおった。お前も好きじゃろ?恐竜さん。
ここの山はな、ある恐竜さんを長として一つの群れがおったのじゃ。群れって分かるか?今時の言葉でぐるーぷ(?)と言うやつだ。
その群れはこの山からあの山に移りたかったらしい。この理由はご飯がなくなったからだ。
話は少し変わるがその群れには悪い恐竜さんがおった。その恐竜さんは長の恐竜さんを倒して自分が長の恐竜さんになろうとした。
ここまでが話の序盤だ。まだまだ、話は続くぞ。
だがな、この山からあの山まではその恐竜さん達は渡れなかったのだ。」
「じゃ、どうしたの?」
ほうほう、この話に食いつくとは。
「まぁ、待て。話は続くからな。
そして、それにみかねた長が神に願ったのだ。
『どうか、私の体を橋にしてください。』
『分かった、だが、お主の後継はどうする?』
『きっとなるようになります。』
『では、あいつにしなさい。』
『あいつですか?』
『そうだ。』
『分かりました。』
そんな会話をして、翌日、恐竜さんは橋になったのだよ。
あいつってのは悪い恐竜さんなんだよ。
そして、悪い恐竜さんは長になったんだよ。
その神の会話はな、悪い恐竜さんが神様の声真似していたのだよ。だがな、神様は長の願いを聞き届けたのだ。
代価とともにな。」
「代価って?」
「そうだなぁ、ジュースを買うときお金を払うだろ?そのお金が代価じゃ。」
「ふーん。」
「話を続けるぞ。その代価はな、その長の命だ。
ほんとは長の命を引き換えにその群れの命が救われるはずだった。だが結果的に全員、死んでしまったんだよ。」
「神様は他の恐竜さんの命を救おうとは思わなかったの?」
「救うのにも代価が必要だったのだよ。だから、救えたとしても群れの半分以下しか救えないかも知れんかった。
また、死んでしまった理由が、神様にから見たら一人一人の意志だったのだよ。せめてもの慰めに全員の魂を橋に宿らせたのだ。だから、あの橋は恐竜さんの思いと願いが詰まってるのさ。」
なかなかだったな、これで私もまた、少しながらえられる。
「ふーん、結局、なんか後味が悪いね。あっ、あっちの川に行って、魚捕まえよう!」
「おうおう、若い者は元気じゃな。では、行こうか?」
このお話はここで終わり、私がながらえるための話はまだまだ続いて欲しい。
恐竜さんの骨と魂 綿麻きぬ @wataasa_kinu
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