34話沈黙

彼女は動揺した。


こんな彼女の姿を見るのは初めてだった。


まあ、同様させた張本人は僕なのだけれども。


彼女は口をもごもご動かしていた。


声にならない言葉ではあったが、その口の形が「私も」と言っているようだった。


たぶん僕の思い過ごしなのかもしれない。



「あ・・・あのさあ・・・今その返事しなきゃなんないのかなあ・・・」


「え」


「その・・・あの・・・心の整理がまだ。だから・・・」


これは要はフラれたということ・・・なのか。


さっきまで質量を感じなかった空気が一層重く感じた。


とても後悔した。


なんていうことを言ってしまったんだろうと思った。


このまま何も言わなければ友達のままでいれたのに。


場の空気に流されて余計なことをしてしまった。


まったくもって僕はどうしてこんなことをしてしまったんだろう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る