3話 学校にて

学校についた。


案の定、校門、そのほかありとあらゆる学校の外には一人もいなかった。

異様な静けさ。それもそのはず。


ふつうは全校生徒は皆各自の教室でホームルームをしているはずなのだから。


ふつうでないのは僕の方で、


本来この場所のこの時間は僕はここ(学校の外)にいるべきではないのであって、


むしろ善良な生徒であれば、いや善良な生徒でなくてもふつうの生徒であれば、僕は本来いるべき教室の


自分に与えられているであろう席に着いて担当となるであろう、



教師に出欠をとらえていなければならないはずなのだから。



それが今そうでないということはどういうことをさすのか。


しかも入学初日に。


そう、愚か者だということだ。


すぐさまチャリ置き場にチャリを置いてかけだす。


玄関入り、自分の下駄箱探すが、気持ちが焦っているせいか、なかなか見つからない。


もういいや。


靴はとりあえず小脇に抱えて持って上がることにした。


にしてもなんでなんで1年の教室が最上階の(屋上をのぞく)3階なんだよ。



最後の最後できつすぎるぞ。



この階段地獄は。



そんなグチを心の中でつぶやきながらもこの最後の難関。



心臓破りの坂ならぬ階段を一段

跳ばしで駆け上がるのであった。



教室の前の廊下に出ると僕は息を整えるため、深呼吸をした。



だが今までさんざん走ってきて、そう簡単に息が整うはずもなく。



教室ではそれこそ、僕が予想していた通り先生が出欠をとっていた。



そっとドアをあける。


出欠の声が止まる。



教室の教壇には40~50歳の中年のおじさんがめがねをかけて、



出席簿に目を通していたが、


言葉を止めたとたん上目使いで僕をにらむ。時間が止まる。


空気が固まる。



皆の視線が僕に集まる。




心拍数もさらに高まる。




血圧も20~30くらい上がっているのではないか。




手のひらがじとっと汗ばんだ。なんていうことなんだ。




一気に緊張感が高まる。




再び担任が出席簿に目を通した。



「ええと。君の名前は確か・・・」



「さ・・・さかのです」



「坂野敬一郎か」



「あ・・・はい」


「今日はなぜ遅れた。しかも入学初っぱなから」


「ね・・・寝坊しました」


「だろうな。鏡をみてきなさい」



その瞬間どっと笑いがおこった。


「へ?」



なにがなんだかよくわからないけれども何かおかしなことが起こっているらしい。



言われたとおり、洗面所の鏡をみてみると、


赤面した。



髪はぼさぼさ、ズボンのチャックは全開。


Yシャツのボタンは一つしか止まっていない。


襟は立ちっぱなし、ブレザーのネクタイはゆるゆる。


まあなんともひどいありさまだった。



まあね。こりゃあ笑われるわけだ。



あーあ。まあなんて日なんだ。まったく。今日は本当に着いていない。


ついてないもなにもその元凶は僕自身の寝坊なのだから。


しかたない。服装や髪の毛を整えて教室に戻る。


足取りが妙に重い。



教室のドアが再びひらく。



再び皆の注目にさらされる。



そして再びざわめきと爆笑の渦に包まれる。



あーあ。やらかしてしまった。



本当に。僕の華(?)の3年間はこれでパアだ。


僕はこのまま3年間この大事な青春時代に伝説を残して笑われて過ごすことになるのだ。



そして僕はいじめられるのだ。全くもって最悪とはこのことだ。



生き地獄コース決定の瞬間だ。



そんなことはもとより、この先どう過ごそうか。


ずっとおとなしくすごすか。



このネタを売りに人気者になるか。



まあそんなことにはならないだろうが。





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