第7話

 ふたりは6になるのをいまいまかとかまえていました。

ガタガタガタ!

まどガラスにかぜたっておとがしています。

バタンバタン!

屋根やねなにか、なんだかわからないけど、がかぜれておとてています。

カランカランカラン!

道路どうろほうかんころがっていくようなおとがしました。

のぶくんはぎゅっとにぎって時計とけい見上みあげました。6までもうすこしでした。

バタバタバタ

そとおおきな物音ものおとがしました。

にいや。なにんでいったよ。」

サエちゃんがのぶくんのとなりすわりながらいました。

「うん。」

のぶくんはそのつぎ言葉ことばてきませんでした。なにんでいった? わかりません。

はとばされちゃったのかな?」

サエちゃんがいました。にわにはよくはとていました。サエちゃんは心配しんぱいそうなまどそと見上みあげています。

ドンドンドンドン

突然とつぜん玄関げんかんのドアをだれかがたたきました。

のぶくんははっとしてがると玄関げんかんはしってきました。サエちゃんもいそいでいてきます。でも、だれたわけでもなく、もちろんママがかえってきたわけでもありませんでした。

ドンドンドンドン

にいや。かぜがドアをたたいてる。」

サエちゃんがのぶくんにしがみつくとちいさなこえいました。

「そうだね。」

のぶくんはわざとゆっくりあるくと居間いまのソファにもどりました。

 ボン、ボン、ボン、ボン、ボン、ボン

そのときパパの振り子時計ふりこどけいが6しました。いつもママが、この時計とけいいちいちうるさいよねえ、とってるんですが、今日きょうはのぶくんに元気げんきをあたえてくれました。

「6だ!」

「うん、6晩ご飯ばんごはん!」

サエちゃんはニコニコかおいました。でも、のぶくんはちょっと緊張気味きんちょうぎみです。台風たいふうなかそとかなければならないからです。サエちゃんが怪我けがでもしたら大変たいへんです。

 ふたりは支度したくをはじめました。支度したくってものぶくんはいえ予備よびかぎをキッチンのしからってきただけです。このかぎなに特別とうべつようのあるときだけ、ママからのぶくんにわたされるかぎでした。

「サエちゃん、幼稚園ようちえんのカバンと帽子ぼうしはいらないでしょ。幼稚園ようちえんくんじゃないから。」

支度したく出来できたサエちゃんは、幼稚園ようちえんくいつもの格好かっこう玄関げんかんていました。

「いや。これでく。」

「おじいさんちにごはんべにくだけだから、そんなのいらないってば。」

「いらなくない。おかけはいつもこれ。」

また、サエちゃんのゴネゴネがはじまりました。

台風たいふうばされちゃうから、いてきなさい。」

「やだ。」

んでっちゃったら、明日あした幼稚園ようちえんけないよ。」

「そんなのやだあ。」

「カバンも帽子ぼうしもどっかんでっちゃってもらないからね。」

 サエちゃんは黄色きいろいカバンも帽子ぼうし手放てばなはありません。のぶくんは台風たいふうなか出掛でかけていくのに緊張きんちょうしていました。なのにサエちゃんがうことをかないので、ついついまたボリュームががってしまいました。

にいやは、なんでそんなことうの。サエちゃん、ちゃんとってるから大丈夫だいじょうぶだもん。」

「もう、わかったよ。」

のぶくんはてるようにうと、玄関げんかんのドアをけました。

ぐぁーっ! ご〜〜〜! ぐぁーっ! 

 けた途端とたんいままでいえなかいていたのとは全然ぜんぜんちがかぜおとこえてきました。まるでなにかのさけごえのようなおとです。と同時どうじ玄関げんかんのドアははげしくかぜあおられてのぶくんはあやうくばされそうになりました。

「うわあ。」

こえげながらあしってのぶくんはなんとかドアをおささえました。

「きゃ〜!」

 まだ玄関げんかんなかにいたサエちゃんはいま強風きょうふうかぶっていた黄色きいろ帽子ぼうしばされてしまいました。サエちゃんの黄色きいろ帽子ぼうしはキッチンのほうまでんでってえなくなりました。

「ぼうし、ぼうし!」

「サエちゃん、カバンもいて出掛でかけよう。」

「でも、にいや。帽子ぼうしんじゃった。」

「だいじょうぶだよ、いえなかだから。すぐみつかるよ。」

今度こんどはサエちゃんも素直すなおにカバンを玄関げんかんくとのぶくんにいてきたのでした。

戸締とじまり確認かくにん!」

そうこえしてのぶくんはうと、かぎをバチンとめました。

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